525 【エマ編】再会
五百二十五話 【エマ編】再会
エマに勇気を出して一緒に寝てくれと頼み込んだ翌日。
いやぁ……慈愛の天使というよりは聖母マリアだな。 オレ的にはかなりいやらしい気持ちになって寝られなくなるものだと思っていたのだが、なぜだろう……昨夜だけは夏だというのに隣で眠るエマの温かさがかなり心に染みて安眠できたんだよ。
だからその反動で今も……
「あー、ほらダイキ! 卵焼き落としてるわよ! 早く目ぇ覚ましなさい遅刻するわよ!」
心と脳が夢見ごこちのままのオレは朝食の時間になっても一向にエマの温かさを忘れられず。 なのでこうして時折ボーッと昨夜のことを思い出しては身体がフリーズしてしまっていたのだ。
「ああ、すまん。 ちょっとボーッとして」
「なによそれ。 昨日は結構ぐっすり眠れてたじゃない」
先に朝食を食べ終えたエマが「はぁ……」とため息をつきながらお皿を台所へと戻していく。
「まぁ、おかげさまでな」
「じゃあなんでまだ眠そうなのよ」
「違う、癒されてんだ」
「は?」
「あまりにもエマの隣が居心地良すぎてな。 あそこまで熟睡できたのは久々かもしれない」
「もう……そんな褒めてもなにも出ないわよ? 早く食べて用意しなさい」
「へい」
オレはお皿をせっせと片付けていくエマを見ながら朝食タイムを再開。
こういう女の子が幸せな家庭を築いていくんだろうなーなどと感心しながらエマ手作りの味を楽しんでいたわけなのだが……
ーー……ん? 待てよ?
てかなんでエマはオレがぐっすり眠ってたこと知ってんだ?
もしかして過去のことを少しだけど話したオレのメンタルを気遣って様子を見てくれてたなんてことは……
まぁ、うん。 流石にないか。
◆◇◆◇
その後オレは合間合間にエマに急かされながらも学校へと向かう準備を完了。
しかし急かされすぎたせいもあってか少しだけ時間に余裕が出来ていたのでオレはなんとなく昨日の話題を振ってみることにした。
「なぁエマ」
「なに?」
「エマは昨日のオレの話を聞いて……オレを気持ち悪いって思ったか?」
「え? ダイキがエマに妬いたって話?」
「ちげーよ!! オレがこの体に入る前は大人だったって話だよ! てかなんでそうなる……頼むからあのセリフは忘れてくれ!」
ちくしょう、昨夜のオレがエマに妬いてる発言の記憶はそう簡単には消えないようだ。
オレが再度顔を真っ赤にしながらツッコミを入れるとエマは「冗談よ冗談、ちょっとからかっただけじゃない」と笑いながらオレの肩を叩いてくる。
「大丈夫、別に気持ち悪いとかそういう感情は一切ないわ。 ダイキの前世がどんなであれ、エマにとっては今のダイキがダイキだもの。 それはダイキも同じでしょ? エマの中身……魂が小山楓っていうJKだって知ってても普通に接してくれてるじゃない」
「まぁ……そうだな」
ーー……ぶっちゃけオレの場合はエマの中身って18才過ぎてるし、何しても合法って考えをしていたことはあったが。
しかしなんだな、このエマのなんとも言い難いフォローの言葉。 あぁ……眩しい。
「ん、なに? 何か言いたそうね」
「い、いやいやなんでもねーよ」
それにしてもよかったぜ……これで『いや無理』とか『中身が大人だから今まで変態なことしてたんだ気持ち悪い』とか言われたらどうしたものかと思っていたのだが、なんとかそのデスルートは歩まずに済んだようだ。
「なんつーか、ありがとな」
「なによ改まって。 お互い様じゃない」
「へへ……、だな」
そんな感じで胸を撫で下ろしたオレがエマと微笑みあっていると、エマのスマートフォンのアラームが鳴りいざ家を出る時間に。
なのでオレはエマと「じゃあ行こうか」と家を出たわけだが……
「お?」
「あっ」
玄関を開けたと同時にオレとエマが揃って声を漏らす。
だってそれは仕方のないこと……そう、オレたちの目に飛び込んできたのはエルシィちゃんの姿。
両手を胸のあたりで組みながら心配そうな表情でオレたちを……いや、エマをじっと見上げていたのだから。
◆◇◆◇
「エ、エルシィ……」
「エマおねーたん……」
2人が見つめあっている隣でオレがどうしたものかと見守っていると、優香からメールが届く。
【受信・お姉ちゃん】おはようダイキ。 エルシィちゃん、高槻先生からエマちゃんとダイキが風邪引いて休んだって聞いてからエマちゃんのことかなり心配してたの。 それで「今日は1人で学校行くから大丈夫」ってエマちゃんの様子見に行っちゃった。 もしかしたらどこかから隠れて覗いてるかもしれないから見つけてあげて。 エルシィちゃんのことよろしくね。
ーー……なるほど、そういうことな。
オレはすぐに優香に『了解』の返信。
その後周囲を見渡したのだが、この周辺には誰もいない……オレとエマ、エルシィちゃんだけのようだ。
そのことを確認したオレは順序こそ変わるがこれをチャンスと受け取り行動に出ることに。
エマを見上げて黙り込んでいるエルシィちゃんの隣に中腰になるように座り込むと、エマにも聞こえるような声量でこう口にしたのであった。
「ねぇエルシィちゃん」
「?」
「ごめんね、エルシィちゃんが今のエマおねーたんが本当のエマおねーたんじゃないって知ってること、エマおねーたんに喋っちゃった」
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