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522 【エマ編】降臨!!


 五百二十二話  【エマ編】降臨!!



 エマの入浴中、オレがこれからどうすればいいのかについて頭を悩ませていると突然インターホンの音が鳴る。

 オレはてっきり優香か機嫌の直ったエルシィちゃんなのかなと考え玄関の扉を開けたのだが……



「ええええ、なんで福田がいんのーー!?!?」


「え」



 誰が予想していただろう。

 そこに立っていたのは私服姿のドSの女王・小畑で、何故か全身がビショビショに濡れている。



「えっと……逆になんで小畑さんがここに?」


「いや、私はあれだよ。 ちょっと今度挑戦するオーディションで不安なことがあったから、エマに相談しようかなって」


「で、なんでビショビショに?」


「それは仕方ないじゃん!! 急に雨が……夕立が来たんだから!!」



 小畑は「ほんと最悪だよ、天気予報では雨降るって言ってなかったのに」とブツブツ愚痴を呟きながら濡れた服をギュッと絞る。



「な、なるほど。 それは大変だったね」


「ほんとだよー。 んでさ福田、エマは?」


「あー、エマなら今お風呂に……」



 そう答えるとどうだろう、小畑の顔が徐々に紅く染まってきて……



「ええええええ、お風呂!? 福田もしかしてエマと……これから何するつもりだったわけ!?」


「ちょ、えええええ!?!? なんでそうなるの!!!」



 小畑は何を勘違いしたのか「ちょっとごめん、入るよ!」とズカズカと中に入り込み、そういや以前エマの家にも来たことあったもんな。 「ちょっとエマ、エマーー!!!」と叫びながらまっすぐお風呂の方へと向かっていったのだった。



 ーー……なぜかオレの腕を引っ張りながら。




「ええええええ!?!? なんでミナミが……ってかどうしてダイキまで連れてきてんのよーーーー!!!!!」



「そんなことよりもエマ!! なんでまだ小学生なのに……早すぎない!!?!?」

「うわあああああ!!!! オレは無理やり連れてこられただけなんですーーーー!!!!!」



 まさに天災……先ほどまで暗雲立ち込め静かだった家の中は一気に大波乱に。


 エマは顔を真っ赤にしながらも隠すべき場所はしっかりと隠して湯船の中へと潜り込み、小畑は同性だからか裸のエマには一切動じず「てかなんで福田!? 付き合ってたの!?」と質問の嵐。 そしてオレは不可抗力とはいえエマのあられもない姿を目にして先ほどのことがありながらもちゃんと興奮していたのだった。



「ていうかダイキ!! なにさっきからエマの身体ジロジロ見てんのよ!! 早くあっち行って……出られないじゃない!!」


「でも小畑さんがオレの手を握ってるからどうしようにも……小畑さん、エマが怒ってるから離して!」


「あ、エマ、私いいこと思いついた!! 私見ての通りずぶ濡れだからさ、今から私も一緒に入っていい!?」



「「ええええええええええええ!??!?!?!?」」



 ◆◇◆◇



 あれから小畑はエマの答えを聞かずにオレを脱衣所から放り出す。

 どうしたものかと立ち尽くしていると、扉の向こう側からは「んじゃ早速ー♪」の声とともに湯船にダイブする音。



「きゃあああああああ!!! ちょっとミナミ!! 勢いを考えなさい勢いを!!!」


「いーじゃんいーじゃん、人ん家のお風呂って変にテンション上がるし! てかあっつ!!!! エマ、お湯の温度何度にしてんの!?」


「41度だけど」


「あっつーー!!! 今夏だよ!?」


「そんなの関係ないわよ。 いい感じに汗かいて血行良くしとかないと肌に悪いのよ?」


「ぐむむ……これがエマの美肌の秘訣。 已むを得なし……」




 あぁ……いいなぁ。



 オレはどっちみちその場にいても2人のキャッキャウフフを見ることは叶わなかったので一人寂しくリビングへ。


 そしてあの後浴室で何があったんだろうな。 しばらく経って小畑とともにお風呂から上がってきたエマはどこか神妙な面持ちで、オレのもとにそっと近づくと「さっきダイキがエマに言ってたアレ……今夜詳しく聞かせてもらえるかしら」と耳打ちをしてきたのだ。



「え、エマなんで……」


「それも詳しくは今夜。 とりあえず今夜はミナミも晩御飯食べて帰ることになったから、ダイキはエマがご飯作り終わるまでミナミと遊んでなさい」


「あ、うん……わかった」



 こうしてオレはエマが晩御飯の料理をしている間、小畑と時間を潰すことに。

 しかしまぁ……あれだな、オレもちょっと油断していたよ。 時間を潰す相手が普通の女の子ではない……ドSの女王だということを。



「ねぇ福田、今日って福田はエマん家泊まんの?」



 小畑がドS臭漂う笑みを浮かべながら「ねぇねぇ」と尋ねてくる。



「え、な……なんで?」


「だってさぁ、おかしいじゃん。 エマには問い詰めないでいてあげたけどさ、なんで脱衣所に福田のパンツがたたんであったわけ? おかしいよね、そんなの定期的に泊まってるかしないとあり得ない状況だし。 てかなんなの? エマは『そんなことない』って言ってたけど、実際は付き合ってんの?」



 うおおお、さすが鋭いぜ女王様。

 そしてこのさりげなく逃げ道をなくしていく追い詰め方……天下一品だ。



「いや、昨日ちょっと用があって泊まってただけで」


「あれ、ちょっと待って? そういや一昨日桜子が言ってたんだけどさ、エマと福田、同じ日に風邪ひいて休んだんだよね? アレももしかして2人で……」



 うおおおおおおお!!!! オレの脳内処理能力では女王様に勝てねえええええええ!!!! このままでは確実に墓穴を掘ってしまううううう!!!!!


 

 脳内スペックの差をまざまざと見せつけられたオレは正攻法を破棄。 小畑の興味を別のものへと移行させる方法について考え始める。

 そしてそれは一瞬で見つかり……



「ーー……小畑さん」


「なに? どうしたの福田。 内緒にしてほしい……とかそういうのだったらそれなりの態度で……」



「最近発売されたらしいニューシーのライブDVDあるんだけど……一緒に観ない?」



「!!!!!」



 なんという素早い反応。

 オレがそれを指差すと小畑はすぐにそこへと視線を向ける。

 


「ほら、アレがニューシーの……」


「あああ!!!!! あれ先週発売されたニューシーの【WORLDISASTER -ワールディザスター-】じゃん!!! しかも予約開始時点から速攻売り切れた初回盤……全公演MCのダイジェストついてるやつだし!!」


 

 小畑は目をキラキラと輝かせながらすぐにDVDのもとへと這い寄っていく。



「うわああああ!! いいなあああああ!!!!」



 そしてその声はキッチンで料理していたエマにも聞こえていたらしく、エマは嬉しそうにキッチンから顔を出して「まだ時間かかるし観ててもいいわよー」と声をかけてきた。



「いいのエマ!!」


「えぇ、ディスクはもうDVDプレイヤーの中に入ってるから、再生ボタン押したら再生されるはずよ」


「やったあああああ!!! 私、このライブ抽選全部落ちて行けなかったからめっちゃ観たかったんだよね!!」



 おおお、さすがはニューシー。 

 小畑は完全にオレのことなど忘れてアイドルに夢中……作戦通りだ。



 それから小畑は恋する乙女のような瞳をテレビ画面に向けながら……途中から料理を終えたエマも合流し、エマや小畑がキャーキャー盛り上がったなんとも賑やかな食事の時間となったのだった。



 そして夜。



「んじゃ帰るわ。 エマ、服貸してくれてありがとね。 福田もバイバイー」



 満足そうな顔をした小畑が満面の笑みで手を振りながら「また明日ー」玄関を出ていく。



「夜道気をつけなさいよ? もし怖かったら途中までエマがついていこっか?」


「ううん大丈夫。 お母さんが下まで迎えに来てくれてるから」


「そっか。 それでミナミ、結局今日は何の用だったの?」


「あー、そうだ忘れてた。 ちょっとオーディションのことでアドバイス貰いたかったんだけど……またメールか電話していい?」


「いいわよ」


「ありがと! んじゃねー!」



 こうして嵐のように訪れてきた女王様は帰宅。

 その後オレはエマがお皿洗いをしている間にお風呂に入り、これからまたあの話をしなければならないのか……と気を集中させながらエマと小畑成分の入ったお湯を数口飲んだのであった。



 ーー……うん、Yummy。



お読みいただきましてありがとうございます!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 自称残り湯ソムリエ(美女・美少女・美幼女に限る)の俺もテイスティングしたいZE! これを機会にダイキにも残り湯ソムリエ協会に入会して欲しい。 よすぃさんは強制入会Death!w
[良い点] 突然の小畑ちゃん。 かまえ? かまえ? っていってた頃が懐かしい。 ニューシーに感謝だぜ。 ちゃっかり出汁を飲むダイキ。 ぬかりないなぁ。
[一言] シリアスになりきれないのが、ここの良いところ。
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