521 【エマ編】まさかの結果
五百二十一話 【エマ編】まさかの結果
オレがこの1年ちょっと積み上げてきた人間関係やら何やらが全て崩壊してしまうリスクのある最終手段。
これを思いついたのはエマがフランスで第二の人生を語ってくれた後のことで、できればこれは使わずに終わればいいなとは思っていたことなのだが……
「ただいまー」
日曜の夕方。
モデルレッスンを終えたエマが帰宅。 途中で買い物してきたらしく、リビングに入るとすぐに買った食材等を袋の中から冷蔵庫へと移し変えていく。
「おう、おかえりエマ。 てか買い物行くんだったらオレ呼んでくれればよかったのに」
「いいわよついでだし。 それにそこまで大量に買うわけでもなかったしね」
「にしても今日は昨日よりも疲れてる感じするけど大丈夫か?」
「まぁね。 今日は鬼マネがエマの様子を見にきてたから……気が抜けなかったのよ」
「なるほどな」
ーー……ヤベェ、怖え。
当初の計画ではエマが帰ってきてすぐに行動に出ようと思っていたのだが、さすがに最終手段……下手した時のリスクを考えると普段のノリのようにすぐには動けない。
オレが体をモジモジさせながら躊躇していると、それに違和感を感じたのかエマが「ん、ダイキ?」とオレに視線を向けてきた。
「な、なんだエマ」
「いや聞きたいのはこっちよ。 どうしたのよそんなさっきからソワソワして。 トイレでも我慢してるの?」
「あーいや、そういうわけでは」
「じゃあ何なのよ」
エマが少しムスッとした表情で椅子に座っていたオレの目の前にまで歩み寄ってくる。
「まぁ……なんというかちょっと話が」
「話? なに、エルシィのこと?」
「んーー、関係あるかと言われれば半々ってとこかな」
「なにそれ。 重要なこと?」
「オレにとっては重要だけど……エマからしたらどう受け取るか分からん」
オレの発言にエマの頭上にははてなマークが浮かび上がっている。
これは……覚悟を決めるしかないようだな。
オレはエマにとりあえず座るようお願いをすることに。
そしてエマがオレの隣の椅子に座って体を向けたところで、オレは勇気を振り絞って口を開いた。
「なぁエマ、ずっと黙ってたんだけどさ」
「なによ」
「オレ、実はエマと同じなんだ」
「?」
「オレも少し前までは他の人間だったんだけど、とある理由で死んじゃって……それでこの福田ダイキの体に魂だけ入って生まれ変わったんだよね」
パァンッ!!!!!
オレがエマに自身の秘密を打ち明けたと同時……エマが勢いよくオレの頬をはたいて静寂な空間に大きな破裂音が鳴り響く。
ーー……え、なんで?
突然のことで驚きながらエマの顔を見てみると、エマはギリっとオレを睨みつけながら静かに涙を頬に伝わせている。
「残念だわ。 ダイキのこと……信じてたのに」
「え、エマ……?」
「いくら変態で調子に乗るアンタでも、踏み込んではいけないラインはわきまえてる常識人だって思ってたのに……見当違いだったようね」
「いや、違うんだエマ、本当にオレは……」
「人の大変だった過去をネタにされて……エマがどう思うか分かる?」
「ーー……!!!!」
なんてことだ。 オレの想定ではそこは普通に信じてくれて……その後のオレの立ち位置をどうしていくかが課題だったわけなのだが、まさか信じてくれないとは。
ましてやエマを傷つけてしまうなんて。
「ーー……すまん」
「いいわ、さっきエマがレッスンで疲れたって言ってたから、冗談でも言って笑わせてくれようとしてたんでしょ」
エマは涙を手で拭うとスッと立ち上がり、「汗流したいから……お風呂にお湯入れてくる」とオレに背を向ける。
「ーー……すまん」
「だからいいわよ。 でも……そうね、そういう悪い冗談はこれっきりにしてもらいたいわ。 エマだってネタにしてほしくてダイキに話したわけじゃないんだし」
こうしてエマはお風呂を沸かしに浴室へ。
その後自室へと向かったのかリビングには戻ってこないまま時間が経ち、浴室の方から入浴準備完了のメロディが流れてくる。
あああああ、ヤベェ……どうすればいいんだあああああ。
エマとエルシィちゃんの関係を修復できる可能性があったと思って行動したのに、まさかオレとエマの関係に亀裂を走らせてしまうなんて。
オレはあれからどうすることも出来ずにその場で頭を抱えて考え込んでいたのだが、エマがお風呂に入りに行ってしばらくした頃だろうか。
降臨したのだ……この状況を一変させる存在が。
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