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520 【エマ編】最終手段


 五百二十話  【エマ編】最終手段


 

 エルシィちゃんがエマが本当のエマではないことを知っていたことを伝えた日の夜。

 それを聞いたエマはかなり焦りながらも「詳しく聞かせなさい!」とオレを尋問。 それは朝方まで続き、2時間くらいなら寝られるかも……ということで眠りについたのだが……



 オレは外から聞こえてくる微かなメロディで目を覚ます。

 この音は……ゴミ収集車か? でもなんでこんな朝早くから動いているのだろう。



「つーか今何時だ?」



 時間を確認するために重たい瞼を開けると、何故か目の前ではエマがこちらに顔を向けてスヤスヤと寝息を立てている。 口が僅かに開かれていて濡れた唇がかなりセクシーだ。


 うわああああ、朝からこんな光景……堪らんぜええええええ。


 オレは当初の目的も忘れてしばらくの間そんなエマの姿を凝視。 しかし途中で「あ、そうだった。 時間時間」と、近くに置いてあったスマートフォンに手を伸ばした。



「え」



 オレは画面に表示されている時間を見て言葉を詰まらせる。



【10:30】



「え……ええええええええええええええ!?!?!??!?!?」



 ◆◇◆◇



「おいエマ!!! 起きろ!!!!」


 

 ことの重大さに少しずつ気づいてきたオレはエマの体をユサユサと激しく揺らす。



「んん……なによダイキ。 お腹空いたの? アラームはまだ鳴ってないわよ」



 エマが目を微かにあけながらオレを見上げる。



「ちげーよ!! 確かにお腹は空いてるけど……それどころじゃねえんだよ!!」


「うるさいわね……。 ていうかなんでエマの寝てる部屋に勝手に入ってきてんのよ。 ノックくらいしなさいよ」


「いやいやここでお前が寝落ちしたんだろうが!!! 」



 オレは「とりあえずこれを見ろ」とスマートフォンに表示されている時計をエマに見せつけた。



「んー? ちゃんと見えないわね。 何時なの?」


「もうすぐ11時だ!!!」


「11時ー? ふふ、だったらエマたち完全な遅刻じゃない。 そんな冗談はいいから本当の時間を……」


「だーかーら!!! ガチでもう11時なんだよ!!!!」


「ーー……え」



 エマもようやくオレの必死さに気づいたのか、ゆっくりと体を起こして大きくあくび。

 その後「ちょっともう一回見せてよ」とオレのスマートフォンを受け取り時間を確認したのだが……



「え、ガチじゃない」



 エマがボソッと呟きながら視線をオレに向けてくる。



「だからそう言ってんだろ」


「どうする?」


「どうするって……何がだ?」


「今からでも行く?」


「いや、出来ればオレはもうこのまま……」


「んじゃあ今日はサボっちゃいましょ、エマ、まだかなり眠いわ」



 そう言うとエマは「てことでダイキ、学校には上手い言い訳よろしくー」とその場で再び横になりはじめる。



「えええ、なんつーか……意外な反応だな。 てっきり急いで支度して学校行くのかと思ったぜ」


「まぁそうね。普段のエマなら確かに急いで支度して出かけてたわね」


「なんで今日は」


「そんなの決まってるでしょ。 エルシィがエマの秘密に気づいていたなんて知って……鉢合わせたときどうすればいいか分からないからじゃない」



 エマは少し恥ずかしそうに「それくらい察しなさいよ」と唇を尖らせながらオレに背を向ける。

 


「あー、なるほどな。 理解した。 要するに今後エルシィちゃんにどう接したら良いか考えたいと」


「そういうこと。 分かったらさっさと学校連絡しなさいよね」



 普通に今まで通り接してれば良いと思うんだけど……エマからしたらそんな簡単なものではないんだろうな。



「まぁ理由はわかったぞ……でもなエマ」



 オレは目の前で向けられているエマの背中をツンツンつつく。



「なによ」


「今このタイミングでオレとエマが休みますって学校に連絡したとするぞ?」


「うん」


「そうしたらさ、オレとエマが一緒にいるってこと……バレないか?」


「ーー……確かにそうね、エマ、寝起きでまだちゃんと頭が回ってなかったわ。 時間あけてそれぞれ連絡しましょ」



 それからオレとエマは約15分程度の時間をあけてそれぞれ学校へと連絡することに。

 最初に電話をかけたのはエマで、その後オレがエマの声が入らないよう別室に移動して学校に電話をかけたのだが……



『おー、福田か。 どうした寝坊か?』



 出たのはまさかに担任。

 オレは一瞬ビクッと体を反応させながらも演技を続行させる。



「あー、実はちょっと連絡遅れたんですけど風邪っぽくて。 ちょっと熱あるんです」


『そうか。 分かったわざわざありがとう。 でもあれだな』


「なんですか?」


『さっきエマからも似たような内容で連絡があったんだ』


「そうなんですか」


『あぁ。 もしかしてだけど二人仲良くサボってる……とかではないよな?』



 ギックウウウウウウウ!!!!!!! 



 これ以上の変な言い訳は危険だと判断したオレは「アハハハ、冗談やめてくださいよ先生。 アハハハハ」と突っ込み無理やり通話を終了。

 危機一髪だったぜと内心ヒヤヒヤしながらエマのもとへ向かうと、エマはちょうど料理中……お昼ご飯を作っている最中だった。



「あーダイキ。 上手く伝えられた?」



 キッチン台の前。 お立ち台に乗ったエマが何かを茹でながらオレに視線を向けてくる。



「あぁ。 担任が出てエマと一緒なのか疑われそうになったけど、なんとか誤魔化せた」


「そう、よかったわ。 あ、それとお昼だけどパスタでいいわよね」


「お、おう」



 なんというか……これはこれで貴重なシーンだよな。



 オレの視界に映っているのはパジャマ姿でエプロンをつけたエマの姿。

 鍋の中の茹で具合を確かめつつ「あとちょっとで出来るから待ってなさい」と優しい口調でオレに声をかける。



「ーー……」


「ん、どうしたのよダイキ」


「え、あ、いや……」



 この完全オフモードのエマ……かなり可愛すぎる。

 これはもう……新婚さんといっても過言ではないよなアアアアア!?



 オレはそんなエマをより近くで見るためにエマの後ろへ。

 金髪天使の後ろ姿を見つめていると「なに、手伝ってくれるの?」と冗談半分で微笑みながらにオレに尋ねてくる。



「いや……手伝いたい気持ちは山々なんだけど、オレに出来ることないだろ」


「ふふ、そうね。 今のダイキにできることは……うん、エマの料理を美味しく食べることくらいね」



 ズキュウウウウウウン!!!!



 こうしてオレとエマは平日のお昼時に優雅にご飯タイム。

 その後はのんびりとアイドルグループ・ニューシーのライブDVDを観ながら時間を潰していたのだが……



「なぁエマ、ニューシーがかっこいいところ申し訳ないんだけど、ちょっといいか?」


「なに?」


「お前……エルシィちゃんとの今後の接し方を考えたいって言って休んだんじゃ……」


「知ってるわよーー!!! だからこうして、思いつめすぎないように気を紛らわせながら考えてるんじゃないーー!!!!」



 しかしその日エマは結局何も思い浮かばず、翌日からは土日の連休でエマはモデルのレッスンへ。

 このままだとエマの東北撮影にエルシィちゃんを同行させる計画が完全になくなってしまうかもしれない。 焦ったオレは、とある最終手段を使ってみることにしたのだった。



 それはいわば諸刃の剣。 下手したらエマからだけでなく、他の皆からも完全に嫌悪されてしまう可能性もある。

 でもそれしかもうオレの思いつく策がないんだ……一か八かだけど、やってみるしかないだろう。



 日曜日の夕方。 オレは一人深呼吸してエマがレッスンから帰ってくるのを待った。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 気づけば遅刻……。 なんというカップル感。 ダイキの奥の手が気になるぜ。
[一言] ダイキよ。ナニをするのか知らぬが無理矢理はダメだよ?
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