514 【エマ編】出るか成果!!【挿絵有】
五百十四話 【エマ編】出るか成果!!
学校終わり。 エマとともに買い物から帰宅したオレは「ちょい忘れ物あったから家から取ってくるわ」と一旦1階下の自宅へ。
ガチャリと鍵を開け中に入るとリビングの方から何やら音が聞こえてくる。
「ん、なんの音だ?」
音を立てずに近づいたオレは顔を覗かせてみることに。
すると……なるほどな。 先に家に帰っていたエルシィちゃんがソファーに座っており、熱心にオレの録画していたアニメを観ているではないか。
「エルシィちゃーん」
「おー?」
オレの声に反応したエルシィちゃんが振り返りながらその純度100パーセントの綺麗な瞳をオレに向けてくる。
「おー! ダイキ、どったぁー!! エッチーに、あいに、きたぁー!?」
うわお!! 一瞬でエンジェルスマイル!!! さすがは穢れを知らない天使!!
エルシィちゃんがソファーから飛び降りると、満面の笑みでオレに突っ込み抱きしめてくる。
「うおおお!? エ、エルシィちゃん!?」
「ダイキ、なにして、あしょぶー!?」
ちっくしょおおおおおお!!! そんな目でオレを見上げないでくれええええええ!!!!
オレはただ忘れ物を取りに戻ってきただけなのに……断りづらいじゃないかああああああああ!!!!
それからしばらくオレはエルシィちゃんのエンジェルスマイルという光属性の攻撃をモロに喰らっていたのだが、ここでとある名案を思いつく。
ーー……あ、そうだ。 ここでエマの話題出して反応をみたりとか……今のエマに対する気持ちとかを聞いてみたら参考になるんじゃね?
やべぇ、オレ天才だわ。
ということでオレは「そうだなー、何しようかなー」などと時間を稼ぎながらエマにメールを送信。
エルシィちゃんの心の内面を探ってみることを伝えると、さっそくエルシィちゃんの手を優しく引っ張りソファーへとエスコート。 「久しぶりにゆっくりお話ししたいなー」と、エルシィちゃんとのお話しタイムをスタートさせた。
ーー……のだが。
「ねぇエルシィちゃん」
「なんなー?」
「エマの……エマおねーたんのことどう思う?」
「だいき、エマおねーたんのはなし、やぁー!」
はい、終了ーー!!!
エルシィちゃんは両頬をプクッと膨らませながらその話題を拒絶。 その後プイッとオレから視線を逸らす。
「な、なんで?」
「だって、エマおねーたん……エッチーのこと、しゅき、ちがー」
「えええ、そんなことないと思うけどなぁ。 エマおねーたんはエルシィちゃんのこと好きだと思うぞ?」
「んんー!! しょれは、しってうのーーー!!!」
「えええええ!?!? どういう意味だああああ!?!??!?」
結局それ以降何を聞こうにもエルシィちゃんはブーブー言うだけでちゃんと答えてくれず。
そうしているとエルシィちゃんを心配してなのか優香が早めに帰ってきて「ただいまエルシィちゃん、じゃあ少ししたら私と一緒にお買い物行こっか」と言いながらリビングに顔を覗かせてきた。
「あ、ダイキ」
「お姉ちゃん」
「どうしたの?」
「いやー、何か仲直りの突破口が見つからないものかと話を聞いてみてたんだけど、なんだかダメみたい」
「そっか。 でもまぁエルシィちゃん見ててくれてありがと。 ここからはお姉ちゃんが変わるから、ダイキはエマちゃんのところにいってあげて」
優香がエルシィちゃんの頭を優しく撫でながら、オレにエマのもとへと早く行ってあげるようアイコンタクトを送ってくる。
「わかった。 じゃあお姉ちゃん、後はよろしく」
「うん」
「あ、あともし何かわかったら……」
「うん。 メールして教えるね」
それからオレは忘れ物の下着系を数枚持ってエマ宅へ。
リビングに入るとエマが「あ、ダイキどうだった」と何かに期待した瞳をオレに向けてくる。
や、やめてくれ!! エマまでそんな……光属性の瞳でオレを見つめないでくれええええええ!!!
オレの心がエマへの申し訳なさからキュウゥ……ッと勢いよく縮んでいく。
「あー……エマ、あのさ」
「その、エルシィ……何か言ってた?」
「すみませんっ!! 先ほどの面会では何の成果も……得られませんでしたアアアアアア!!!!!!!」
オレは深く頭を下げてエマに己の力不足を謝罪。
するとエマは「あああ、そんな別に責めてるわけじゃないんだから、そんなに落ち込んだり謝らないでよーー!!」とオレに駆け寄り無理やり頭を上げさせてくる。
「いや、オレはさっきのエルシィちゃんとの会話で最低でも1つくらいはヒントを聞き出せるかもと思ってたんだ。 でも何も得られてないとかさすがにクソすぎる!!!」
「そんな思いつめないでよ。 今日の放課後も言ったけど、これはエマたちが悪いんだから……ダイキは何にも責任感じなくていいのよ?」
「ぐぅ……エマ、優しいな。 ありがとう」
「ダイキほどじゃないわよ」
加えてエマはオレに「いい? 今後はこの件で何があってもダイキ自身が責任を感じたり、エマに謝ったりしないでね」とお願いし、それにはオレも渋々承諾。
「わかった」と答えるとエマはこの空気を変えるために両手をパンと叩き、「じゃあエマはリクエストのハンバーグを作ってくるから……ダイキはゆっくりして、気が向いたら宿題でもしときなさい」とオレをテーブルに座らせた。
あぁ……エマ、なんてお前は女神級に優しいんだ。
「それもわかった。 ゆっくりしとく」
「うんうん、素直でよろしい」
恥ずかしながらもオレはそんなエマの言葉に甘えてしばし休憩をとることに。
少し経つとキッチンの方からお肉を焼くジューッという音が聞こえてきて、そのおかげかオレの食欲やテンションが少しずつ回復していったのだった。
◆◇◆◇
その日の夜はオレのリクエストでもある絶品ハンバーグに心から満足し、そのせいでオレが夕方に目論んでいた【エマにオレを男として意識させる作戦】は脳から完全に消滅。
普通に別々にお風呂に入り、それから軽く雑談した後にじゃあ寝ようということになったのだが……
「ダイキ、起きてる?」
そろそろ寝ようと部屋の電気を消して横になっていると、エマが部屋をノックし控えめに顔を覗かせてくる。
「ん? どうした?」
「もう寝る感じ?」
「まぁー……そうだな。 特にやることもないしそうしようって思ってたんだけど、なんか用か?」
そう尋ねるとエマは一瞬何かを躊躇うかのように一瞬無言に。
しかしすぐに心に決めたのか、1人小さく頷くとオレをまっすぐ見つめてくる。
「ーー……? エマ?」
「あのさ、エマ……ダイキに前世の……小山楓のことは簡単に話したわよね」
「あーそうだな。 去年の東北旅行でな」
「じゃあさ、エルシィとの話ってしたかしら」
エルシィちゃんとの話……?
「んーどうだろ。 かなり簡潔になら話してもらった気もするが……」
「うん、そうよね。 じゃあ今からちょっとだけ語ってもいいかしら。 エルシィがいかにエマにとって大事な存在なのか」
「ーー……いいのか?」
「うん。 ダイキになら。 それにエマもエルシィの話がしたいのよ」
「あー、なるほどね。 寂しいのか」
「うるさいわね、言わせないで」
「へいへい」
こうしてオレはエマから聞くことになる。
『小山楓』としての人生を終え、国も年齢も姿も違う『エマ・ベルナール』の体に転生し新たな人生を歩むことになってしまった1人の女の子の話を。
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