513 【エマ編】青春って感じ!
五百十三話 【エマ編】青春って感じ!
エマと共に学校へと向かい、そこからはいつも通りの学校生活を送ったオレたち。
休み時間には優香から聞いた情報を高槻さん経由で知った結城が「エルシィちゃん……大丈夫?」とエマに尋ねたりとなんとも和やかな時間を過ごしていた。
◆◇◆◇
気づけば放課後。
「ダイキ、一緒に帰りましょ」
帰りのホームルームが終わると隣の席のエマが立ち上がりながらオレに視線を向けてくる。
「お、いいぞ」
「ついでに晩御飯の買い物もしたいんだけど、いいかしら」
そうか……前にエマは『お手伝いさんにたまに来てもらってる』とは言ってたけど、来ないときはこうして自分で買い出しとか行ってるんだよな。 中身がJKとはいえすげぇぜ。
オレは感心しながらも先ほどのエマの問いかけに「もちろん」と返答。
今日はオレが一緒だからな。 荷物持ちは当たり前として、オレの成長したお手伝い力をエマに見せる良いチャンスじゃないか。
その後オレはエマとともに教室を出て階段を降り正面玄関にある下駄箱へ。
そして上履きから靴に履き替えていると、後ろからオレの名を呼ぶ声が聞こえてきた。
「福田くーん!」
ん?
振り向き確認してみるとその声の正体はエルシィちゃんの担任でもある高槻さん。
スーツ姿の高槻さんが大きく手を振りながらこちらに向かって駆け寄ってきていた。
「え、高槻さ……先生?」
「よかったわ間に合って」
「どうしたんですか?」
「これ、お姉さまから今朝預かったんですよ。 『これダイキに……というかダイキとエマちゃんに渡してください』って」
そう言って差し出されたのは1枚の封筒。
まぁなんとなく中身が何なのかは理解できるのだが……
「これを……お姉ちゃんが?」
「うん。 はじめは玄関の郵便受けに入れようとしたらしいんですけど、気づかなかったりもしものことがあったらイヤだからって」
「あー、ありがとうございます」
「じゃあ先生はこれで失礼しますね」
高槻さんはまだやることが残っているのか、用事を終えるとすぐに体を職員室のある方へと向ける。
「あ、あと福田くん」
「はい」
まだなんかあるのか?
高槻さんは思い出したようにオレの方を振り返ると、ニコニコと微笑みながらオレに顔を近づけてきた。
「え、な……なんですか?」
「お姉さんから昨夜簡単に聞いたんですけど、かっこいいですよ」
「!!!!」
高槻さんはウインクしながらそうオレに告げると「エマさんもそれじゃあね」と手を振りながら職員室へと戻っていく。
ちくしょう……いちいち仕草が若いし可愛いんだよなぁ。 あれで30代とは到底信じられねぇぜ。
その後オレはエマと2人で先ほど渡された封筒の中身を覗いてみたのだが……
「「!!!」」
やはり予想していた通りだ。
封筒の中には1枚のメモ用紙と1万円札が数枚。
ちなみにメモ用紙には【エマちゃん、ダイキのことしばらくだけどよろしくね】と書いてある。
「とりあえずエマ、じゃあこれ渡しとくわ」
「えええ、なんでそうなるのよ。 いらないわよ優香さんに返しておいて」
「いやでも実際にオレお世話になるわけだし」
「それはこっちも同じじゃない。 ていうか元はと言えばエマとエルシィが原因で優香さんやダイキに迷惑かけてるんだから」
エマは封筒の受け取りを断固拒否。 「それにフランスの両親からも定期的にお金は振り込まれてるからお金に苦労してるわけじゃないわ」とそれを無理やりオレのランドセルへと入れさせた。
「そう……なのか? でもオレ、エルシィちゃんよりめっちゃ食べるぞ?」
「何言ってんの。 所詮は小学生の胃袋……たかが知れてるわよ」
「わからんぞ? エマの料理はお姉ちゃんの料理と同じくらい美味いからな。 オレの胃は正直だからめっちゃ食うぞ?」
「ふふ、嬉しいこと言ってくれるじゃない。 じゃあその食欲、今夜見せてもらおうかしらね」
こうしてオレとエマは仲良く買い出しへ。
ていうかあれだな、同級生の女の子と2人きりでの食料品のお買い物ってなんか同棲してるカップルみたいな……特別な雰囲気があるよな。
「ダイキ、何か好きな食べ物ある?」
買い物かごを持ったエマが野菜コーナー付近でオレに尋ねてくる。
「好きな食べ物……ハンバーグだな」
「えー、それは子供すぎない?」
「仕方ねぇだろ好きなんだから」
「でもそれだといっぱい食べられないわよ?」
「あー……じゃあ小ちゃなハンバーグをたくさん」
「どんだけ好きなのよ」
エマはオレにツッコミを入れながらも今夜の晩御飯のメインはハンバーグに採用。
オレは料理できないのであまり具材等は分からなかったのだが、エマは要領良く野菜コーナーからお肉コーナーへと移動したりと一切の迷いなく食品を買い物カゴの中へと入れていく。
「おお……なんかすげぇな」
「何が?」
「だってさっきから悩んだりしてねーじゃん。 よくそんな早く必要な具材とかパッと出てくるな」
「こんなのは慣れよ」
「そうなのか?」
「ダイキだって変態的な行動とか言い回しはすぐに思いつくでしょ? それと一緒」
「ふむむ……分かるようで分からん例えだな」
そんなやりとりをしながらも買い物を続けていると気づけばレジ前。
そこで列に並ぼうとしていたエマだったのだが「あ、忘れてた」と突然元来た道を引き返し始める。
「ん、なんだ買い忘れか?」
「そうね。 お菓子やジュースを忘れてたわ」
「おおお」
それからすぐに複数人で食べられるようなチップス系や大きめのペットボトルを購入。
流石にそこらへんから買い物カゴが重そうだったのでオレが代わりに持つことにしたのだが……
「じゃあエマ、これで全部だな? レジ並んでいいか?」
「えぇ。 でもダイキ、別にさっきカゴに入れたお菓子とは別に好きなもの入れてもいいのよ?」
「え」
「グミとか風船ガムとか……そういうのはいいの?」
エマが子供用のお菓子コーナーを指差しながら「ほら、そういうのあっちにあるわよ」オレの腕を引っ張ってくる。
「おい……エマ」
「あ、見てダイキ、こういうのはどう? ラブカツのカードが付いてくるチョコレートだって。 ダイキってラブカツ観てたわよね?」
「エマアアアアアア!!! 今朝も言ったけど……オレはそこまでガキじゃねえぞおおおおおおおお!!!!」
「あはは、ごめんごめん。 ついクセで」
まったく、ここまでオレを子供扱いしてくるとは。
てことはエマはガチでオレのことなどただの子供……1人の男として見てはいないようだな。
子供扱いはまぁ少し恥ずかしさもあるけど嬉しいのだが、1ミリも男として見られていないことに関しては流石にショックを隠しきれない。
これは……偶然を装った何かをするしかなさそうだぜ。
買い物帰り。
オレは優香にエルシィちゃんの昨夜の詳しい様子をメールで尋ねつつ、今夜エマに少しでも男として意識させる方法……それもエマに故意だと気づかれないようにする方法を考え始める。
「ん? どうしたのダイキ」
「え?」
「なんか思いつめたような顔してたけど」
「そ、そうか?」
「うん。 荷物重いのならエマが代わるわよ?」
「そこは構わん。 オレは可愛い・美人限定ではあるがレディーファーストなんだよ」
「ふーん。 とりあえず帰ったら……一緒に宿題しながらお菓子でも食べる?」
「イェス!!!!」
あぁ……同級生の女の子と一緒にお菓子食べながら宿題とか。
なんか青春って感じがして最高だぜええええええええ!!!!!!
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