510 【エマ編】頑張ってきた少女
五百十話 【エマ編】頑張ってきた少女
それは小学生生活最後の夏休みを終え、2学期を迎えて間もない頃。
いつも通り優香と談笑しながら晩御飯を食べていると、こんな時間に誰だろうか……家のインターホンが1度ピンポンと鳴った。
「ん、誰だろう。 星さんかな?」
「いや、美咲は多分まだバイト中……というよりこんな静かなピンポンを美咲がしたことないでしょ」
「た、確かに」
それからすぐに優香は「ちょっと行ってくるね」と立ち上がり玄関へ。
まぁおそらくが宅配便かなにかだろう……そんなことを考えていたオレだったのだが、優香がリビングへと戻ってきた時には隣にもう1人増えていて……
オレはその人物を見て一瞬言葉を失う。
「え、なんで?」
それもそのはず。
優香の隣にいたのはエマの妹・エルシィちゃんで、涙で目を真っ赤にしながら優香の手をその小さな手で強く握りしめていたのだった。
「お、お姉ちゃん。 なんでエルシィちゃんが?」
オレがそう尋ねると、優香も「どうしたんだろうね。 でもこんな泣いてる状態で聞くわけにもいかないし……一応中に入れたんだけど」と困ったような視線をエルシィちゃんへと向ける。
ーー……マジか。
一体何があったのか分からない状況。
オレと優香はとりあえずゆっくりさせようということでエルシィちゃんをソファーに座らせ、オレンジジュースを飲ませながら何があったのか聞こうとしたのだが……
「だいき……ゆかぁー……」
エルシィちゃんがグスンと目を擦りながらオレたちを見上げる。
「ん、どうしたエルシィちゃん」
「なにか作ってあげようか?」
オレたちが聞き返すもエルシィちゃんはヒックヒックと嗚咽を漏らしながら再び無言に。
しかしそれからしばらく……ようやく口を開いたかと思えば、とんでもない発言が飛び出してきたのであった。
「エッチー……エマおねーたん、きらい!!!!!!!!!!!」
「「ええええええええええええええ!?!???!?」」
エルシィちゃんの衝撃的な発言を聞いた後。
優香にはエルシィちゃんの相手をしてもらい、オレはすぐに上の階……エマの家へと向かった。
ピンポーン
「ーー……」
インターホンを押しても返事がない。
オレは再度インターホンを押しつつエマに電話をかけてみたのだが……
『ーー……もしかして、今のピンポンダイキ?』
スピーカー越しからかなり弱々しいエマの声が聞こえてくる。
「お、おいエマ大丈夫か?」
『ううん。 とりあえずカギは開いてるから……リビング来て』
「んんん??」
オレは意味が分からないながらも中に入ることに。
言われた通りリビングへと直行すると、エマの家は今夜はお鍋だったんだな。 しかしテーブルの上はお茶碗が転がりお箸は下に落ちており……そして当人のエマは肩の力が抜けているのか放心状態のままテーブルの前に座っていた。
「な、なんだこの有り様は。 姉妹喧嘩にしては……派手すぎないか?」
「ーー……そうよね。 まぁこれ全部エルシィがしたことなんだけど」
「えええマジか!」
あの大天使エルシィちゃんがこんな暴挙に出るなんて一体何があったんだ?
まるで泥棒に荒らされたような現場から再びエマに視線を戻すもエマは未だに心ここに在らず。
なのでオレは怪我をしないよう落ちていたお箸やコップを拾い上げてテーブルの上に戻しはじめただが、そんな中エマが机に突っ伏しながら小さく「どうしよ……」と呟いた。
「えーと……エマ、オレはそれについて触れてもいい感じなのか?」
「うん。 ていうかダイキにしか話せないかも」
「おいおいなんだよ信頼してくれてるじゃねぇか嬉しいなぁ。 それじゃあ聞いてやるからほれ、話してみ!」
この現状から見るにオレの予想では姉妹喧嘩の原因は食べ物の好き嫌い。
お鍋の具材にエルシィちゃんの嫌いな食べ物が入っていて、それをエマが無理やり食べさせようとしたところを反抗期でブチギレた……そんなところだろう。
オレは『それにしてもこのお鍋……美味そうだなぁ』などとよそ見しながらもエマの話を聞くことにしたのだが……
「ダイキ……」
エマが突っ伏したままオレの名を呼ぶ。
「なんだ?」
「エマ……この体に生まれ変わってから、結構頑張ってたと思うのよ」
「うんそうだな。 色々頑張ってたな」
「でももう無理かも。 なんかもう全部が……疲れちゃった」
「なにいいいいいいいいいいいいいいい!?!?!??!??」
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エマ編、スタートしました!!!




