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51 福田優香の憂鬱


 五十一話  福田優香の憂鬱



 夕方。 三好たち3人とラブカツオーディションの話を終えたオレは家の玄関の扉を開ける。



 「ーー……あ、おかえり」



 明らかに元気のない優香が制服姿のまま、ソファーに顔を埋めながら僅かにこちらに視線を向けていた。



 「ただいま……どうしたの?」


 「ううん、なんでもないんだけどさ……」


 「お姉ちゃん風邪でもひいた?」



 心配になったオレは優香に近づきおでこに手を当てる。

 ーー……うん、まったく熱くない。 平熱だ。



 「ダイキ、優しいね。 心配してくれただけでもお姉ちゃん嬉しいよ……じゃあ晩御飯の支度でもしようかな」



 優香はオレの頭を優しく撫でるとゆっくり立ち上がりキッチンへ。 冷蔵庫を開け必要な材料を台の上に乗せていく。

 そこで優香はポツリとため息混じりに呟いた。



 「はぁ、学校行きたくないなぁ……」



 な、なんだってえええええぇええ!!!???



 ◆◇◆◇



 【送信・星美咲】あの、お姉ちゃんの元気がないんですが、イジメられたりしてるんですか!?



 直接聞けるわけもないのでオレはすぐに優香の友達……ギャルJKの星美咲にメールを送る。

 学校行きたくないって……なにがあったんだ?


 考えているとすぐに返信がくる。



 【受信・星美咲】やほー弟くんっ! いんや、ゆーちゃんはイジメられるようなタイプじゃないよー。 どしたー? ゆーちゃん元気ないのかー?



 どういうことだ?



 【送信・星美咲】なんか学校行きたくないって呟いてたんで…


 

 返事を送るとすぐにスマートフォンの画面が光り震えだす。

 ーー……え、電話!?


 もちろんかけてきているのは星美咲。

 オレは急いで自分の部屋に入り、通話ボタンを押した。



 「あ、はい。 ダイキです」


 『もしもしー! アタシ!! ちょっとよくわかんないけど心配だから今からそっち行くわ』


 「え?」



 ッツーー……ツーー……ツーー



 なっ! 用件だけ伝えて切りやがったあああ!!!!

 ていうか今から家に来るの!?



 ◆◇◆◇


 

 ピンポンピンポンピンポーーン!!



 一回でいいチャイムが三連続で鳴る。



 「え、誰だろう」



 優香が不審がりながらも玄関へ。

 そう……その訪問者はもちろんあの人だろうよ。



 「やほーーい、ゆーちゃん! 来たよーん」


 「み、美咲!?」



 ギャルJK星が軽いノリで参上。 優香の背中を後ろから押しながらリビングへと入ってきた。



 「お! 弟くんもいるね! 初めまーして」



 おお、ちゃんと初対面のフリをしてくれてるじゃないか!!

 オレは感動しつつもギャルJK星に軽く頭を下げる。



 「ちょっと美咲、どうしたの突然」


 「風の噂でね、ゆーちゃんが暗い雰囲気だったって聞いたのさ。 ほら、アタシってフッ軽じゃん? だから心配して見にきたってわけー」


 

 【フッ軽】って何!?!?


 オレはスマートフォンを取り出して先ほどの謎ワードを調べる。


 ーー……あぁ、なるほどね。

 どうやら【フッ軽】とは【フットワークが軽い】の略語で、何事も深く考えずにすぐに行動できる人のことをいうらしい。


 いやいやどこまで略すんだよ若者言葉!

 オレが心の中で突っ込んでいるとギャルJK星がオレに近づき、いきなり後ろから抱きついてくる。



 「え? ええええええ!!??」



 オレは突然のことで動揺。 

 しかしそれは緊張ではなく感動。


 なにこの香り……優香はあんまり香水とかつけてないイメージあったけど、やっぱりギャルJKにもなると香水とかつけるんだなぁ。

 柑橘系の甘酸っぱい香りがオレの嗅覚を刺激する。



 「もう美咲、ダイキをからかわないでー」


 「ねーぇ、弟くーん。 弟くんも今日のお姉ちゃん様子がおかしいって思うよねー?」



 ーー……!!!!


 ギャルJK星がオレの肩に顎を乗せて耳元で囁く。



 やべー、耳が幸せ!! なにこれめっちゃ好きかもーー!!!



 オレは耳から全身に伝わる快感を噛み締めながらも優香を見上げながら静かに頷く。



 「ほらねー。 やっぱり弟くんも心配してんじゃーん。 何かあったなら聞くよー?」



 ギャルJK星は後ろであぐらをかいて座り、その上にオレを乗せる。



 うおおおおおお!!!! なんだこの包容力はああああああ!!!!



 この全身を包み込む柔らかさと柑橘系の香りにやられたオレは一瞬でギャルJK星専用のぬいぐるみと化す。


 うん、なにをしてくれても構いません。

 だって全ての行為がご褒美なのですから。



 「そっか。 ダイキもやっぱり今日のお姉ちゃん……変だと思う?」



 優香が視線を泳がせながらも視線をオレに向ける。



 「うん。 だってお姉ちゃん、さっき学校行きたくないなーって言ってたし」


 「聞こえてたんだ……うん、ゴメンね心配かけて。 実はお姉ちゃんね、その……」



 優香が少し口ごもる。



 「どしたーゆーちゃん。 弟くんに言えないようなことだったらアタシが聞くよー?」



 ギャルJK星の言葉に優香は「ううん」と首を横に振る。



 「大丈夫。 心配させちゃったんだもん……ダイキにも教えるよ」



 優香はキッチンからゆっくりとオレたちの前に移動。

 その後両手を胸の前で組みながらモジモジとお互いの指を絡ませ始める。



 「実は私、私ね……」



 

 ーー……ゴクリ


 あまりの緊張感に生唾を飲む。

 もしかして結構シリアス系なのだろうか……だとしたらオレいない方がいいんじゃないの?


 オレは空気を読んでその場から逃げようとするもギャルJK星がそれを阻止。 後ろからがっちりとロックしているのでまったく身動きが取れない。

 

 あぁ……背中の感触、幸せなんじゃあーー。


 何がとは言わないが、オレがギャルJK星の感触に心を奪われていると優香は何かを決心したかのように頷いた後、口を開いた。



 「私……実は好きだった人に告白して、オーケーしてもらったの」



 「「ええええええ!?!?」」



 「でもすぐに別れちゃったのーーー!!」



 「「うぇえええええええええええ!?!?!?」」



 まさに感情のジェットコースター。

 優香の衝撃発言により、オレとギャルJK星の声が綺麗にシンクロ。 部屋中に響き渡った。



 

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