508 【共通】恐怖の話し合い
五百八話 【共通】恐怖の話し合い
目を覚ますとすでに夜。
ソファーの上で横になっていたオレがゆっくりと体を起こすと、いつの間にかギャルJK星が来ていたのか「お、起きたねダイキ。 おそよー」と微笑みながら顔を覗かせてきた。
「え、あ……星さん」
「うむっ! ダイキが起きるまでゆーちゃんと待ってたんだよん。 ね、ゆーちゃん」
ギャルJK星が後ろを振り返ったのでオレもそこに視線を向けると、そこにはテーブル席に座った優香の姿。
一瞬オレをチラッと見るも、すぐに視線をそらしてコクリと頷いた。
「じゃあ美咲、ダイキも起きたことだし早速本題に入りたいんだけど……」
優香が申し訳なさそうな表情でギャルJK星を見ると、「とりあえず座って」と優香の隣の椅子をズラす。
「なーにゆーちゃん、そんなかしこまって」
「ーー……いいから。 あとダイキもいつもの席に座って」
「へいへーい」
「あ、はい」
とうとう来てしまった。
寝てたからか余計に時間が早く感じてしまったオレは、どうやってギャルJK星と優香の仲を引き裂かないよう立ち回るかを考えながら立ち上がる。
となれば序盤は余計な発言は控えた方がいいのかもしれない。
そんなことをグルグルと脳内で駆け巡らせながら席へと向かっていると、ギャルJK星がオレの背中をポンと叩いてきた。
「?」
ギャルJK星が振り返りながら優香には見えない角度でオレにウインクをしてくる。
まるで『美咲ちゃんに任せろ』と言わんばかりのアイコンタクトをオレに向けると、「さーて、何の話なのかなー! 3人で旅行でも行くのかなー♪」などとワザとらしくスキップを踏みながら優香の隣の席に座った。
「ほーらダイキ、何ボーッとしてんのー? ゆーちゃんも待ってるよ、早く座りなー」
「え、あ、はい」
ギャルJK星はぶっちゃけオレがメール送ってるから、仮に優香が黙ってたとしてもこれから話す内容は分かっているはずなのだが……。
こうしてオレも少し戸惑いつつではあるがとりあえず着席。
現時刻は大体夜の6時。 夏休みという楽しいイベント中にかなり重めの話し合いが幕を開けたのであった。
「じゃあ早速だけど……」
優香は体を隣に座っているギャルJK星に向けると、開始早々に「まずはその……うちのダイキがごめんなさい!!!」とギャルJK星のパンツを差し出しながら深く頭を下げる。
「おー、そりゃあアタシのオパンツじゃないかー」
「そう……なんだけど、実はダイキがいつの間にか盗んでたっぽくて。 ほんっとうにごめんなさい!! ダイキにはちゃんと言い聞かせるし、もうこれ履きたくないっていうのなら新しいの弁償させてもらうから……だから……!!」
「んにゃー、別にかまわんで。 だってアタシがあげたもん」
「え」
えええええええ!?!??! いきなりぶっちゃけたあああああああああ!??!?!?!?!
◆◇◆◇
「え、えっと美咲……私の耳がおかしかったのかな。 ごめんだけど、もう一回言ってくれない?」
ギャルJK星のぶっちゃけ発言を聞いた優香が大きく瞬きしながらギャルJK星に顔を近づける。
「んー? だから、それはアタシがダイキにあげたやつだしゆーちゃんは気にせんでいいよって話」
「ええええええええええええ!!?!?!?!」
優香は驚きの声をあげた後に視線をパンツとオレの交互に移動。
「えっと……え、どうして? 話が見えてこないんだけど」と頭を抱えながら机に突っ伏した。
「まぁそういうことだからゆーちゃん、その辺はもう気にしないでもろて」
「いや気にするよっ!!!」
ギャルJK星が優香の肩をポスポス叩きながら笑っていると、優香がすぐに起き上がりその手を払いのける。
「え、なんで? もう解決したべ?」
「余計にこじれちゃったよ!! え、何であげたの!? 私そんなこと聞いてないんだけど!!」
「いやいや普通は言わないべ? なぁダイキ」
ギャルJK星は未だ納得のしていない優香の手からパンツをヒョイっと掴み上げると、それをオレの方へと「ほい、パスっ!」と陽気に投げてくる。
「あ……ありがと」
「ありがとうじゃないでしょダイキ!」
「ハイ!!! スイマセン!!!!」
オレはキャッチしようとしていた手を即座に引っ込め足の上へ。
そしてギャルJK星の投げたパンツが机の上に着地したのとほぼ同時……優香からギャルJK星への怒涛の質問攻めが始まったのだった。
「えええ、てことは何? 美咲からダイキに『これあげる』って提案してきたわけ!?」
「あー、どうだったかなー。 多分そうなのかな」
「何でそんなことするの!?」
「そりゃあそういうのに興味が出てくるお年頃だからねぇ。 欲しそうにしてたらついついあげたくならない?」
「だったらエッチな漫画とかダイキたくさん隠してるんだから……それで間に合ってるでしょ!!」
ーー……優香?
「いやー、でもねゆーちゃん。 流石に数冊をローテーションするだけじゃあ飽きるべな。 だったら実物あった方が使えない?」
「何でか分からないけど増えてるから問題ないから!!」
優香?
「えー! 増えてんだ! どんなジャンル!?」
「それはもう無理やり系から催眠系から……もう色々だよ! なんで言わせるの!?」
優香?
「いやいやでも買っただけで実は自分に合ってないからって読んでない可能性もあるべ?」
「定期的に順番とか場所が入れ変わってるから全部読んでるの!!!」
優香ァアアアアア!!!!!!!
どうしてそこまで把握されているかはこの際どうでもいい!!!
これ以上暴露されてはメンタルが保たないと思ったオレは机の下をショートカットして優香に抱きつく。
「だ、ダイキ!?」
優香は突然のことで驚いてはいたのだが、オレはそんなことなど無視。 優香のお腹に顔を埋めながら全力で謝罪の言葉を叫んだ。
「すみませんオレが悪かったですーー!!! 全部オレが悪いんですーー!!! なのでそれ以上の暴露は勘弁してくださあああああああああい!!!!!」
すると……なんでだろうな。
オレの全力謝罪を受けた優香は「あふ……ん、ちょっとダイ……キ、それダメ、お腹に響く……」などと力なく囁きながら逆にオレを抱きしめるように前方へと倒れ、それが原因で怒りの感情が薄れたのか「と、とりあえずもうこんな時間だから話し合いはまた後で。 今から晩御飯作るから……続きは食べながらでいい?」とギャルJK星に尋ねた。
「オケよー。 なんか手伝おっか?」
「あー、じゃあお願いできるかな。 食材は昼にダイキが買ってきてくれてるから」
「うっし、じゃあ夏休み序盤にゆーちゃんから教わった家庭科力を見せる時がきたぜ」
「ごめんね、ありがと」
「かまわんよ」
こうして2人は共に並びながらキッチンへ。
先ほどまでの険悪な空気は何処へやら……他愛のない話をしながら晩御飯の準備を始めたのであった。
「美咲、明日はバイト?」
「んーにゃ、休みだべ」
「だったら今日泊まっていく? もしかしたら話長引くかもだし」
「お、それはありがたいぜ。 厄介になりやす。 でも遅すぎたらアタシ眠くなっちゃうから勘弁なー」
ーー……あれ、数分前まで言い合いしてたよな?
オレが不思議そうな目でそんな2人を見つめていると、それに気づいた優香がオレに「ダイキ、じゃあ今のうちにお風呂入れてきてくれる?」と声をかけてくる。
「あ、はい。 了解しました」
「ダイキー、ついでにゆーちゃんに見つからない場所にエロ漫画隠しとけー? あとお気に入りの1冊あとで読ませろー?」
「美咲!!!!」
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