507 【共通】人生最大のピンチ到来
五百七話 【共通】人生最大のピンチ到来
それは大きな事件もなく田舎の福田祖父母の実家から帰ってきた夏休み中盤のこと。
優香は「今日は天気がいいから大掃除しようかな」とのことで、オレが優香の代わりに晩御飯の食材等を買いにお使いへ。
「ちゃんと商品名の見直し確認もした。 いやー、お手伝いをこうも完璧に遂行するとはオレも主夫力上がってんじゃねぇの?」
オレは炎天下の中汗だくになりながらも優香に頼まれていた品を全て買い揃えて帰宅。
クーラーの効いているリビングに入り一息つこうとしていたのだが……優香の姿が見当たらない。
「あれ? どこ行ったんだ?」
掃除機等の音は聞こえてないし、玄関にクツは置いてあった。 外出はしていないはず。
となれば……答えは1つしかないか。
「あーね。 多分トイレかお風呂掃除してるかだな」
オレは買ってきた食材を冷蔵庫にブチ込むと、とりあえず優香が掃除から戻ってくるまでのんびりするかと自室へと向かい扉を開けた。
「ーー……え」
扉を開けた先。 そこには何かを持ってそれを見ているのか、少し顔を俯かせながら立っている優香の後ろ姿。
そしてオレの存在に気づいた優香がゆっくりとこちらを振り返る。
「ダイキ……」
「え、あ、はい。 ただいま」
「これ……なに?」
「これ?」
オレが首を傾げていると優香が手に持っていたものをゆっくりとオレに向けて差し出してくる。
一体なんだろう。 オレはそれを隠していたエロ漫画でもバレたのかな程度にしか考えていなかったのだが……
ーー……え。
な、なんということだ。
優香の手に握られているソレは、オレが引き出しの奥底かつファイルに挟んで厳重保存を施していた……ギャルJK星から頂いた着用済パンツではないかあああああああ!!!
「え、なんでお姉ちゃんが……ソレヲ」
真夏の外を歩いていた時よりも比べ物にならない量の汗が全身の毛穴から噴き出す。
「ダイキがお使いに行く前にお姉ちゃん言ったよね、『引き出しの中とかに入れてある昔のプリントも一緒に捨てていいかな』って」
「あ」
「それでダイキが『いいよ、よろしく』って言ったからお姉ちゃん、ノート以外の引き出しの中に入ってたプリントとか仕分けてたんだけど……」
優香が光の宿っていない瞳をギャルJK星のパンツからオレへとゆっくりと向けてくる。
「ーー……で、なに? これ」
「え……えっとこれはそのえっと……そのあの」
「サイズ的には高校生……私のじゃないってことは必然的に美咲のだよね? なんでここにあるの?」
「ーー……」
「とりあえず……リビングに行こっか」
ギャアアアアアアアアアアアアアア!!!!
◆◇◆◇
元祖ダイキの残したあのいじめノート……予め処分しておいて助かったぜ。 あんなの見られてたら三好や多田・小畑たちなんて一瞬で消されていたぞ。
しかし今はそんなことよりも……
オレは静かに息を吐きながらテーブルを挟んだ向かい側に座っている優香に視線を向ける。
優香は無表情のままオレを見据えていて、そんな優香の前……テーブルの上にはギャルJK星の黒パンツがヒラリと置かれていた。
「あ、あのー……お姉ちゃん、これは……」
「これ、美咲のだよね?」
「これには深い……」
「美咲のだよね」
こ……怖えええええええええええええええ!!!!
かつてここまで感情のないトーンで攻められたことがあっただろうか。
まさにダーク化の一歩手前。 これは選択をミスるとオレだけでなくギャルJK星に飛び火しかねないんじゃねえかああああああ!?!?!?
ーー……最悪の場合ダークVSバーニングという地獄絵図も。
とりあえずここは認める以外に選択肢はないと判断したオレは「はい、星さんのです」と素直に自白。
その後の会話でなんとか光を見出そうと脳を回転させ始めていたオレだったのだが、まさかの優香はそこで会話を中断。 ギャルJK星のパンツを手に取りゆっくりと立ち上がると、オレを見つめながら静かに口を開いた。
「やっぱり美咲のだったんだ。 美咲は確か今バイト中……とりあえず夜に美咲を交えて話そっか」
「え」
「それまではお姉ちゃん、ちょっと1人にしてもらうね」
「ちょっとお姉ちゃ……」
「お姉ちゃん……どう美咲に謝ればいいか考えないとだから」
あー、そっちですかそうですか。 まぁ普通はオレが盗んだと思いますよね。
しかしここで「いや、実は星さんにもらいました」と言っても信じてもらえないに決まっている。
それにもし信じてくれたとしても……オレが自分の親友にパンツをねだった変態弟というレッテルを張られるくらいで済むのならいいのだが、逆に「どうして美咲、そんなこと私に内緒でしたの!?」と、先ほどオレが危惧した戦争に発展するのはなんとしてでも避けなければならない。
そう考えた結果オレは優香の言葉に何も返答できず。
そして優香はスタスタと自身の部屋へと向かい、扉の鍵を閉め完全に引きこもってしまったのだった。
「ね、ねぇお姉ちゃん!!」
オレが扉越しに声をかけるも優香の反応は微塵もない。
ウ……ウソだあああああああああああああ!!!!
どうすればいいんだこれええええええええええええ!!!!!!!
バイト中で申し訳ないのだがオレはすぐにギャルJK星にメールを送信。
パンツがバレて優香がキレてしまったことを伝えたのだが流石にバイト中のためかすぐには連絡は帰って来ず。
気がつけばオレはスマートフォンを抱きしめながら眠りに落ち、目を覚ました頃には夜になっていた。
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