503 【陽奈編】絶対☆許さん
五百三話 【陽奈編】絶対☆許さん
とりあえず目的地……昨夜搜索を断念した陽奈の学校へと到着。 しかし流石に例のソウタくんを早速探す……というわけにもいかない。
そうなれば陽奈が怪しむことは容易に想像できるので、オレは周囲をこまめに見渡しつつも足下に転がっていたソフトボールで陽奈と簡単なキャッチボールを始めたわけなのだが……
あぁ……暑い。 クソ暑い。
炎天下の中やってるもんだから当たり前なのだが、こうも無言でボールの投げ合いをしているだけでは頭がおかしくなりそうだ。
オレはこの暑さを少しでも紛らわせようと、会話を交えながらキャッチボールすることを思いつく。
「そういや陽奈、ラブレター渡された時に告白とかされたのかー?」
オレがボールを緩やかに投げながら問いかけると、陽奈は両手でそれを器用にキャッチ。
「ううん、陽奈はただ『これ、あの……』って言われて渡されただけだよー」とオレが投げた時よりも速い急速で投げ返してくる。
「わわっと!! ちょ、陽奈! さっきから言うか悩んでたんだが……加減しろっつーの!! グローブもしてないんだし突き指したらどうすんだよ!」
「えー? 陽奈、全然力入れてないよー? それにこのくらいじゃ突き指なんかしないけん安心してー」
「いやいやなるんだよ突き指なめんな!」
これは遥か過去……オレの記憶から薄れつつある前世の記憶。
前世でオレがまだ小学生だった頃、友達とテニスボールでキャッチボールして遊んでたら見事に突き指して……その後みんなから笑われたんだよなぁ。
あれは思い出すだけでも腹が立つ。 皆『ダッセー』とか言ってたけどかなり痛かったんだからな!!!
それからも数回ボールの投げ合いは続いたのだが、嫌な記憶を掘り起こされたオレは徐々にボールが怖くなり「ちょっと休憩しようぜ」とリュックに入れていた水筒を取り出しながら正面玄関前にできていた大きな影の下へと移動。
陽奈と隣り合わせに座ると「それにしても外、暑すぎるだろ」と口をこぼしながら雑談を開始したのだった。
「本当に暑いねー! これだったら去年みたいに水着で川で遊んだ方が涼しかったねー」
「ーー……ムムッ! それはありだな水着見たいぞ」
「え?」
「あ、ゲフンゲフン!!! 違う!! 水着見たいじゃなくて、水着で泳ぎたいぞ!」
「そうやねー! 陽奈もスカートの中がムンムンしてるけん、水の中入りたいなー」
そう言うと陽奈はおもむろに脚を伸ばして若干開き、ワンピースのスカート部分を掴んで上下にヒラヒラさせ始める。
「お、おいおい陽奈、何やってんだ」
「えー? スカートの中熱いけん、風送り込んでるー」
「それは分かるけど……家の中だけにしとけよ。 はしたないぞ」
「そうー? あ、ダイきち、自分がズボンだからって羨ましいんでしょー」
陽奈が勝ち誇った顔でオレに体を向ける。
「あのな陽奈、それ以上ヒラヒラさせてたら……」
「ふふーん。 あーあ、陽奈女の子でよかったぁー! 服の中涼しいなぁー!」
これは陽奈のやつ……優越感に浸りまくっているな。
陽奈はかなり気持ち良さそうな顔をしながらスカートヒラヒラを更に激しくさせていき……
「おお……おおお」
褐色の太ももが見え隠れするだけでもかなりエロい。
となればその奥……どんなパンツを履いてんのかなーとか思って視線を向けるのは男としては正しい行動だよな?
オレは生唾をゴクリと飲み込みながらいずれ顔を出すであろうその時を待つ。
そしてついに……
ヒラリ
「!!」
オレの目が捉えたのはまさに無修……ゲフンゲフン、無の世界。
は、履いてないだと……?
そう、そこには本来見えるはずの夢と希望のベールがなぜか見当たらず、その奥にあるべきものが丸出しになっているのだ。
ーー……ハッ!!!
ここでオレは今朝の出来事を思い出す。
そ、そうだ……!!! 陽奈のやつ、今朝の源泉垂れ流し事件で履いてないんだった!!!!
オレの視界に映っているはその周囲のみ日に焼けていない透き通った大地。
可能ならばこの光景を永遠に……
そうオレが心で願ったとほぼ同時……陽奈の背後からヒョコッと顔を出した愛莉が校舎裏へと続く道を指差し、大声で叫ぶ。
『あーーー!!! 制服着てオカッパ頭の白肌男の子いたああああああ!!!!』
「!!」
愛莉の指差した先に視線を向けると……確かにいるな。 陽奈の言ってた特徴通りのガキが建物の影に隠れながらオレたちを見つめているではないか。
ていうかなんというバッドタイミング。
こーーのやろおおおおお!!!! オレの芸術鑑賞タイムを邪魔しやがってえええええええ!!!!
絶対☆許さん!!!!
オレはすぐに心の中で愛莉に合図。
すると愛莉はコクリと頷くとすぐに陽奈の身体の中へと入り込んだ。
「ーー……あ、あれ? ねぇダイきち、陽奈、ちょっとポヤーってするー。 熱中症かなー」
そりゃあちょっと深めに憑依してもらったからな。
オレの目の前では陽奈がコメカミに手を当てながらゆっくりと左右に揺れはじめる。
「なるほど、それは危険だなすぐに帰ろう。 ただオレはトイレして帰りたいから校門の外の影になってるところでちょっと待っててくれ」
「うんー。 ごめんねダイきちー」
「気にするな」
こうして陽奈は「熱中症ってこんなんなんやー、なんか風邪みたいー」などと呟きながら校門の外へ。 もちろんそれは熱中症なんかじゃなく陽奈が憑依している影響だから心配いらないぞ?
「クヒヒさん、どう? あいつ……悪霊っぽい?」
『ううん、見た感じはただの浮遊霊……そこまで害はなさそうだよ』
「わかったありがとう!」
オレは半分憑依してくれているクヒヒさんに「行くぞ!」と声をかけ、未だ建物の陰からこちらを覗いていたガキ……ソウタくんのいる方へ向かって全速力で駆け出したのだった。
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