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502 【陽奈編】いざ戦場へ!!


 五百二話  【陽奈編】いざ戦場へ!!



 それは朝の騒動がひと段落つき、とうとう陽奈とともに学校へと出向こうとしていた時のこと。

 なぜか今の陽奈には愛莉やクヒヒさんの姿は視えていないようで、陽奈は呑気に「んー、陽奈、朝は半分まだ寝てたのかなー」などと呟きながら道案内がてらオレの目の前を歩いていたのだが……



『あの……ちょっといいかな。 弟くん、愛莉ちゃん』



 青空の下、セミのデスボイスが鳴り響く中でクヒヒさんがオレと愛莉に声をかけてくる。



「ん?」

『なに?』



『2人は愛莉ちゃんの妹ちゃん……陽奈ちゃんに、例のソウタくんの身なりについてそれとなく聞いたりしてないの? そうじゃないと見つけられないんじゃないかな』



「『あ』」



 ◆◇◆◇



「え、ダイきちどうしたの急に」



 クヒヒさんに言われてから陽奈に最近の恋愛話を咄嗟に振ってみたのだが、まぁ想定内な反応。

「ダイきち、なんで陽奈の恋バナとか気になるん?」と後ろを振り返りながら首をかしげる。



「んー、なんとなく」


「そーなん?」


「うん」


「なんで?」


「それは……ほら、あれだ。 今から陽奈の学校で遊ぶわけだけど、その時に陽奈のことが好きな男子と鉢合わせてみろ。 オレ初対面なのに彼氏と勘違いされて殴りかかられるかもしれないだろ?」


「あー、なるほどねー。 まったく、ダイきちは相変わらず怖がりやねぇ」



 オレの咄嗟の言い回しに納得したのか、陽奈は「そんなことする子はいないと思うけん、安心していいと思うよー」とオレに微笑みながら再び歩みを始める。



「え、そうなのか?」


「うん! ケンカっ早い子は確かにいるけど、陽奈はそこまで仲良くしてないけんー」


「へぇー。 てか話戻すけど、ラブレターとか貰ったことないの?」


「ラブレター?」



 そう尋ねるとどうだろう……陽奈はピタリと足を止め「あっ」と声を漏らした。



「ーー……ん、陽奈?」



「あああああああ!!! そういや陽奈、終業式の時に男の子にラブレターもらってたんだったああああああ!!! 返事しようって思ってたのに……一晩寝たら忘れてたあああああああああ!!!!!」



「『『なにいいいいいいいいいいいいいいい!?!??!??!?』』」



 ◆◇◆◇



 なんてことだ……まさか陽奈がラブレターをもらったということを忘れてしまっていたなんて。


 それから陽奈はラブレターをもらった時のことを思い出しながら教えてくれることに。

 どうやらそのソウタくん……愛莉の言ってたとおりで陽奈は今まで見たことのない男の子だったとのこと。

 


「へぇー、陽奈お前知らない男の子にも好かれてたとか……すげぇな」


「多分陽奈の学年にはあんな男の子いなかったから、背も小さかったけん年下だとは思うんやけど……でもなんで陽奈なんだろ」


「ちなみにそのラブレターにはなんて書いてあったんだ?」


「んー、忘れた。 ただいつでもいいけん学校で返事待ってるって書いてたと思うよ」


「な、なるほどな……」



 ーー……なんかそのソウタくん、もし本当に陽奈のことを好きになっていたのだとしたら、こんなにもアッサリ忘れられていると少しだけだけど不憫に思えてきたぜ。



 その後陽奈に教えてもらったソウタくんの特徴は、先ほどの背が低い以外には肌が結構白めで髪型はオカッパみたいな感じ。 それで何故か陽奈の学校では私服らしいのだが制服っぽい服を着ていて目の中の黒い部分……瞳孔がちょっと大きめとのことだった。



「なにそれ怖え」



 オレがそう呟くと陽奈が「そうかな」と逆に尋ねてくる。



「いや普通に考えて怖いだろ。 私服登校の学校で制服着てる時点でかなり異質じゃね?」


「んー、でも陽奈はその男の子見たとき別に嫌な感じはしなかったかなー。 普通に優しそうな顔だったよ」



 ーー……あれ、もしかして好印象な感じ?



 陽奈のソウタくんに対する印象を聞いたオレは視線を隣にいた愛莉・クヒヒさんへと向ける。


『今の陽奈の発言ってどういうことだ?』と心の中で尋ねると、愛莉も『えええ、私も分からないよ。 ていうか今初めて知ったし!』と驚きながら答え、逆にクヒヒさんは『いいなぁ。 ソウタくんがどうか悪霊の類ではありませんように』と手を合わせている。



 ふむむ。 これがもし今朝の一件がなければオレは相手が幽霊だろうと、そのソウタくんが無害なら応援してもいいんじゃないかと思っていただろう。

 しかしそう、オレは知ってしまったのだ。



 幽霊とその……ピーピーしたらどうなってしまうかということを。



 男のオレで遺伝子が作られなくなるんだ……となれば逆に女の人の場合で考えると子供を作ることが出来なくなるかもってことだよな。



 このオレの考察にクヒヒさんは『そういうことだね』と頷き、それを聞いた愛莉は『ええええええええ!!!! それはダメ!! ぜっっっっったいにダメ!!!!』と今は何故か視えない陽奈の目の前に飛び、両手をクロスさせてバツ印を作っていた。



「そうだな、それだけは絶対に止めないといけないな」


「ん? ダイきち、今なんか言った?」



 どうやら心の声が口から出ていたようで陽奈が頭上にはてなマークを浮かばせながらオレを見ていることに気づく。



「え、あ……なんでもねーよ。 ていうか陽奈はその告白ってかラブレター貰って嬉しかったのか?」



 いや……この聞き方は良くなかったな。

 ラブレターをもらって嬉しくないやつなんていない。


 オレの先ほどの問いに陽奈は「それは嬉しいよ。 だって陽奈、生まれて初めてラブレター貰ったんやけん」と少し恥ずかしそうにウヘヘと微笑む。



「なるほどな。 じゃあオーケーするのか?」


「んー、それは……どうだろうね!」



 陽奈は一瞬オレを見つめるとクルリと体の向きを反転。

「ていうか早く学校行って遊ぼうよー!!」とオレの手を引っ張りながら走り出したのだった。



 おい愛莉さん、どうなんだ? 心の声聞こえるんだろ? 今の陽奈の気持ちは?



 オレが愛莉に視線を移すと愛莉は苦笑いで首を横に振る。



『ううん』



 マジか!!



『だって今の陽奈ちゃんの脳内……ラブレターの返事なんかよりも、ダイきちくんと何して遊ぶかしか考えてないみたい』



 ーー……え、なにそれ可愛い。



 こうしてオレたちは汗だくになりながらも夏休み中の学校へと到着。

 校門に入ると同時に愛莉は陽奈へ、そしてクヒヒさんはオレの身体に飛び込み周囲に目を光らせたのだった。

 


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― 新着の感想 ―
[良い点] ソウタくんはきっと良いヤツ。 陽菜ちゃんはダイキのことで頭がいっぱいなようだ。 かわいいぜ!
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