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50 色で例えるなら黄金


 五十話  色で例えるなら黄金



 「ーー……よしよし、今日もある。 朝から頑張るねぇ」



 4組の女子2人……堀田と野村だったか? オレはそいつらがオレに宛てた……可愛い内容が書かれた誹謗文の手紙を手に取りながら微笑む。

 さて、内容はなんだろうか。 ぶっちゃけ毎回『しね』の文字ばかりだと流石に飽きてくる。

 ……まぁJSから手紙をもらえるだけ贅沢なことなんだけどな。



 「ーー……お?」



 見てみると今回は今までと違う内容らしい。

 いつもの『しね』の2文字ではなく、今日は文章になっているぞ。

 そこにはこう書かれていた。



 『ラブカツのオーディション出ないで! 出たらみんないじめる!! しね!!』



 ーー……は? オレは出ないんですけど。

 ていうかどこでその情報入手したんだ?


 昼休み、オレは多田を図工室前の男子トイレに呼び出した。



 「うわー、ウチ男子トイレ初めて入ったかも」



 多田が少し顔を赤らめつつも興味津々で周囲を見渡す。



 「ほんとに男子って立ったままするんだね。 でもこれ隣に見られないの? 女子トイレみたいにこういうのも個室にすればいいのにねー」


 「いいからほら、ここじゃ目立つから個室入るぞ」



 オレは今まであまり気にしなかった男子トイレ完全個室化というJSの純粋なアイデアに感心しつつも多田を個室内に入れた。



 「あ、福田座っていいよー。 ウチ、男子が座った便器には座りたくないからさ」


 「そうか? じゃあ遠慮なく」



 オレはフタをした便器の上に座り、多田はその前でしゃがみ込む。



 ーー…ムム?

 この体勢……昨日工藤からもらった同人誌【ラブ☆ピュッピュ活動】の……ゲフンゲフン!!


 オレは心を1人で落ち着かせ、小さく深呼吸をした後に多田に視線を向ける。



 「なぁ、多田はラブカツのオーディションに出ること……誰に話した?」


 「え? んーとね、佳奈と美波とママくらいだよ?」



 多田が人差し指・中指・薬指の3本指を立てながらオレを見上げる。



 「そうか」


 「ん? どうしたの?」


 「いや、あんまり気にすることもないかとは思うんだけどさ。 これ見て」



 オレは今朝引き出しに入れられていた紙を見せる。



 「ーー……え、なにこれ! これ書いてるのって確か4組の子だったよね!?」



 多田の紙を持つ手に力が入る。

 おいおいもうちょっと丁寧に扱ってくれよ? これでも貴重なJSからの手紙なんだから。



 「まぁそうだけど……なんでこいつらが知ってるんだろうな」


 「アレじゃない? ウチがほら、下駄箱近くで佳奈と美波誘ったっしょ? その時近くにいたんじゃないの?」


 「そうなのか?」


 「だってウチがラブカツオーディションの話したのって、その時と昼休みに2人と給食食べてた時くらいだもん」


 「なるほどな」



 だとすると確かに下駄箱で聞かれていたことになるな。

 あの時は小畑の首から鎖骨へと滴る汗と、多田が目の前にしゃがんだことによって見えたパンツしか見てなかったからな。 オレとしたことが……。



 「それで福田、どうするの?」


 「どうするって?」


 「ちょっとこれは流石にウチ、黙ってられないかな」



 多田が今朝のJS手紙をグチャグチャに丸め出す。



 「あああああああ!!! お前なにやってんだよおおお!!!」


 「え? いいじゃんこんな手紙捨てちゃえば。 めっちゃむかつくし!」


 「いやでもそれは……!!」


 「なに? 福田もしかして手紙とっておくタイプだった? だったらゴメンね。 代わりと言ってはアレだけど、ウチが書いてあげるから許してよ」


 「え」



 多田はグチャグチャになった手紙を一度開き、ビリビリに細かく千切って小窓から捨てる。



 「ね。 今日帰るまでに入れといてあげるから」


 「あー、まぁ、うん。 それなら」



 マ、マジかああああああああ!!!!

 JSからの手紙……とうとう誹謗文以外の手紙もらえるの!? それも今日中!? 最高なんですけどおおおお!!!!


 オレは心の中で狂喜乱舞。 力強く多田の手を握る。



 「え、なに?」


 「多田、4組の奴らの脅しになんか負けずにラブカツオーディション、頑張るぞ!」


 「う、うん!」


 「よし。 じゃあそろそろ昼休みも終わるし……隙を見てここから出るか」



 オレはゆっくりと立ち上がりドアに手を掛ける。



 「あ、待って福田」


 「ん?」


 「だったらここでおしっこしていっていいかな。 ちょうど個室だからウチも出来るし」



 多田が便器に視線を向ける。


 ーー……なん、だと?



 「でもちょっと恥ずかしいから福田はドアの方見ててよね」


 「あ、うん。 それはもちろん」



 昼休みももう終わり。 オレの耳に響いていたのは昼休み終了5分前のメロディではなく、まるで和を感じさせる水の音色だった。

 そうだな……その音を色で例えるならば、きらびやかな黄金色だったね。



 そして多田から帰りにもらった手紙……これは帰ってからのお楽しみにしておこうニヤニヤ。


 

お読みいただきありがとうございます!応援していただけて製作熱がバチバチです!笑


下の方に☆マークあるので評価していってくれると嬉しいです!

感想やブックマークもお待ちしております! 

次回もレッツ☆変態!!

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