498 【陽奈編】ファーストアタック!!
四百九十八話 【陽奈編】ファーストアタック!!
お守りを買いに行った日の夜。
この日は帰宅が遅かったこともあり陽奈はウチ……福田祖父母の家で泊まることに。
初めは優香の部屋でとお願いしようと思っていたのだが、何やらギャルJK星と楽しそうに通話していたので邪魔をしないようオレと同じ部屋で寝ることになったのだが……
「うわああああ!!! ダイきちとお泊まりだーー!! やったあああああ!!!!」
陽奈が敷布団の上でぴょんぴょん跳ねながら感情を表現している。
「ねーねーダイきち!! 今から何話す!?」
「ーー……」
「あ、そうだ!! 1対1だけど枕投げする!?」
「ーー……」
「あーーー!! 夏休みの宿題で『一番印象的だった日』を絵に描くのがあるんやけど、ダイきち描いていいー!?」
「う……うるせええええええええええええ!!!!!」
かなりの睡魔に襲われていたオレは陽奈の執拗な【かまってちゃんオーラ】にとうとうブチギレ。
「もう夜10時なんだからもう寝るぞ!!」と無理やり部屋の電気を消す。
「えー、でも陽奈、まだ全然眠くないなぁー」
陽奈が頬をプックリ膨らませながら横になっているオレの背中をトントンと叩いてくる。
「いやいやお前疲れてないのか? 今日は結構歩いたし寄り道もたくさんして……それに1番はしゃいでたのって陽奈、お前だぞ」
そう、お守りを買った後もオレたちはいろんなところを回ったのだ。
田舎ということで電車賃もかなり安く、小さな商店街で食べ物を買ったりそこ周辺で一番大きいと言われているおもちゃ屋さんやゲームセンターに立ち寄ったり。
ぶっちゃけ最初の方は早く帰りたいとか思ってたんだが、陽奈のあの楽しそうな笑顔を見せられたらなぁ……。
オレが「はぁ……」と深い息を吐くと、その心を読んだのか隣で愛莉が『分かるよ。 陽奈ちゃんの笑顔って眩しくてついつい許しちゃうんだよね』と何度も頷いていた。
「とりあえずあれだ陽奈。 また明日いっぱい遊んでやるから今日は寝ろ」
こうして陽奈は「ぷぅー。 分かった。 でも約束やけんね? 明日も遊ぶけんね!」とオレの顔を覗き込みながら念を入れると、渋々隣の布団に入っていく。
「あ、ちなみに陽奈、明日は出来れば外じゃなく室内で……」
「すぴーーーーーーーっ」
「ーー……いやマジかよ」
まさに秒速。
オレが心の中で『いや、めちゃめちゃ疲れてたんかい』とツッコミを入れていると愛莉が『あははは、陽奈ちゃん可愛い』と陽奈の頭に沿って優しく手で撫でる。
『こういうところも可愛いんだよねー』
「まぁそれは同意するわ。 それじゃあ……行くか」
『うん』
オレがかなり眠くても今まで頑なに寝なかった理由……それはもちろんこのためだ。
そう……皆の目を盗んで陽奈の通う小学校へ行くため。
真昼間に行ってもいいんだけど、そこの教師に見つかったら色々と面倒だからな。
「とりあえず愛莉さん、玄関までに誰もいないかだけ見てきてくれ」
『おっけー』
月明かりと等間隔に設置されていた街灯で照らされた夜道。
オレは周囲で奏でる夏虫たちのオーケストラに包まれながら、愛莉の案内のもと陽奈の通う小学校へと向かった。
◆◇◆◇
『あ、ダイきちくん、あそこだよ!』
「なるほど」
どのくらい歩いただろう。
愛莉と軽く話しながら歩いているとオレの通っている小学校とは比べものにならないほどに小さな小学校が見えてくる。
そして田舎というのもあるのだろう……校門には柵などは設置されておらず、部屋には明かりも付いていない。
「うわー、こりゃあどこからでも侵入してきてくださいって言ってるようなもんだよな」
『まぁこの辺りで悪いことするような人なんていないからね』
オレは愛莉に視線を向けると愛莉もそれを察したのか『じゃあ行くね』とオレの体にダイブ。
ポケットの中にお守りが入っていることを確認していざ学校の敷地内へと足を踏み入れたのだが……
「な……何にも現れないじゃねえかああああああああああ!!!!!!!!」
あれから大体30分。
さすがに校舎はちゃんと施錠されていて中に入ることは叶わなかったためその周囲をグルっと回ってみたのだが、何とも遭遇しないまま普通に一周を終える。
体育館やその隣にある倉庫……裏庭、やけに広い運動場、プール周辺……所々で『うわぁ……ここ絶対幽霊いるやつやん』的な雰囲気を漂わせているところはあったのだが結局何も起こらず。
オレは憑依している愛莉に「おい、どこにもいねーぞ」と声をかける。
『そうだね……』
「ソウタくんの名前も呼んでみたけど出てこなかったし」
『でもソウタくんなのかは分からないけど……私からしたら、何かしらの幽霊の気配はビンビンだったんだけどなぁ……』
「もしかして普段見ないオレの姿に警戒してるとか?」
『うーーん、そんなことはないはずなんだけど……そうなのかなぁ』
とはいえこのままここにずっと滞在していても時間の無駄なので、オレたちは今日は退散してまた家で対策を練って出直そうとなり静かに帰宅。
無事家に帰り部屋に入ったオレは、疲労の限界から布団の上に寝転ぶようにして倒れるとスマートフォンをポケットから取り出して充電コードをセット。 そして反対側のポケットからお守りを取り出そうとしたのだが……
「ーー……エ」
驚きのあまり思わず口から声が漏れる。
『どうしたのダイきちくん』
「あ、愛莉さん。 これ……見て」
『!!!!!』
なんということだろう。
持って行っていたお守りは3つだったのだが、その中の1つ……中の板がポッキリと割れているではないか。
「ーー……てことはあれか、オレたちが感じてなかっただけで、不動明王様が守ってくれてたってこと?」
『そ、そうなるけど……でも私、全然そんな存在気付かなかったよ?』
「同じ幽霊で気付かないってあんの?」
『まぁ……そうだね。 もしあるとすれば私よりも上の存在……』
愛莉が冷や汗を垂らしながら折れたお守りを見つめる。
「え、それって……神様……とかそういう類?」
『そうだね。 でもそんな平和的な存在じゃないかな』
「ーー……マジ?」
『うん、多分だけど悪霊……』
「『ひぃいいいいいいいいいいい!!!!!!!』」
今回ばかりは仕方ない。
愛莉は恐怖からオレの体内へ再びダイブ。 かくいうオレも隣で健やかな寝息を立てながら幸せそうな表情で眠っている陽奈の布団の中へと潜り込んだのであった。
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