497 【陽奈編】真夏日でカラカラ!【挿絵有】
四百九十七話 【陽奈編】真夏日でカラカラ!
やはり真夏日……炎天下というせいもあるのだろうか。
階段を上りきると参道の先に本堂が見える。 しかし参拝に来ているのはオレたち以外誰もいないようだ。
「あぁ……喉がカラカラだ。 あとで自販機でジュース買おう」
「あははは!! ダイきち、汗びっしょりだぁーー!!!」
かなり先に上り切っていた陽奈がオレの汗だくな状況を指差しながらアハハと笑う。
「う、うるせーな! 都会っ子には厳しいんだよ!! ていうか陽奈、そもそもお前の体力がおかしいんだからな!?」
「そーかなー? まぁでも陽奈、休み時間とかにはよくみんなで鬼ごっことかしてたけん、体力には自信あるよー!」
まさか都会と田舎で、こうも休み時間の過ごし方に差があるなんて。
オレはここの学校に転校しなくてよかったと心から安心しながらも陽奈とともに先に見える本堂へ。
そこでオレの中に憑いていた愛莉は一旦離れ、昨晩予め立てておいた作戦にうつすことにした。
『じゃあダイきちくん、私先に行って挨拶してくるね!』
愛莉が『お先に』と小さく手を振りながらヒュンと本堂の方へと飛んでいく。
オレは隣に陽奈がいるため、流石にそれに言葉で返すことは出来なかったので心の中で「あぁ、頼んだ」と声を掛けた。
◆◇◆◇
「ねぇダイきち、お守り買わないのー?」
お賽銭箱の前で手を合わそうとしたタイミング。 陽奈が後ろから顔を覗き込むようにオレに尋ねてくる。
「ばかやろー、まずは参拝だろ」
「なんで?」
「お前は友達の家に遊びにいく時、ピンポン鳴らさずに部屋に入るか?」
「ううん、するわけないやんー」
「それと一緒だ。 神様はちゃんと見てんだからな」
オレが軽く説教すると陽奈が「へぇー、ダイきちってそういうの信じるタイプなんやー」と珍しそうな目でオレを見てくる。
「なんでだ?」
「だってダイきち、そういうの怖くて信じてないって思ってた」
「んー、確かにちょっと前まではな」
まぁでも仕方ないだろ。
去年の夏にはあの忌まわしきクヒヒ野郎と遊園地で遭遇し、その後愛莉と……それだけでは収まらずにこっちにやって来た神様とも一緒に過ごしたんだからな。
これで信じないってのはあり得ない。
オレは気をとりなおして陽奈に視線を向けると、「とりあえずお参りするぞ」と付け加える。
「んー、いいけど何言おっかなー」
「んなもん決まってんだろ。 陽奈、お前が入院してた時に渡したお守りはここのお守りなんだぞ。 そのお礼しとけ」
「えー! そうなの!? わかった、それはありがとう言わないとやねっ!」
こうしてオレと陽奈は手を合わせると本堂に向かって小さく頭を下げる。
それからすぐだろうか……オレの耳元で愛莉が静かに囁いた。
『ダイきちくんには見えてないだろうから教えるとね、ちゃんと目の前には不動明王様がいるよ』
そうか。
『うん。 それで軽く聞いてみたんだけど、やっぱり私の予想は当たってたっぽい。 陽奈ちゃんから生気を感じない男の子の気配を感じるって』
え、憑かれてんのか?
『ううん、そうじゃないの。 もし憑いてたら私がすぐに気づくから。 そうじゃなくてこれは不動明王様みたいな高次元の方にしか分からないみたいなんだけど、陽奈ちゃん……その男の子の霊に魅入られちゃったんだって。 だから呼び出されたところに1人で行くのは危険って言ってるよ』
ーー……マジか。
その後オレは御守りを買えばまた力になってくれるのか尋ねたところ、答えは『もちろん』とのこと。
しかしその男の子の霊が弱い霊なら問題ないらしいのだが、強い念を抱いた厄介な存在だったなら御守りに宿された力だけでは難しいらしい。
だったら、その不動明王様をオレの体内に憑依させたりとか……?
『ムリムリ。 そんなことしたらダイきちくんの魂が耐えきれなくなって壊れちゃうよ』
じゃあどうするんだ? 愛莉さんが不動明王様に弟子入りするとか?
『逆に私が高エネルギーに当てられすぎて消えちゃうよ!!!』
結果オレたちは複数個の御守りを購入し効果を強めて様子を見ることに。
そしてこんな会話をした時間はおそらく30秒も経っていないくらい……とりあえず話し合いが終わったオレは数ヶ月前の優香の無事についてのお礼をしていたのだが……
「ーー……それで陽奈、元気になりましたっ! ありがとうございます!」
愛莉との会話に集中しすぎていて今まで耳に入ってきていなかったのだが、陽奈が大きな声で感謝の言葉やお願い事を述べていることに気づく。
ちくしょう……一度耳に入ると集中できねぇ。
「あ、あとー、今年の夏もダイきちに会えました! 来年も元気な姿で会えますように!」
え。
なんだろう。 何気ない……それもオレに対しての言葉ではないのに、感動して涙ぐんでしまっているオレがいる。
オレは思わず陽奈の方を振り向くと、相変わらず陽奈は目を瞑りながら手を合わせていて……
「ひ、陽奈……」
「それと、お姉ちゃんは元気にしてるでしょうか! 困ってたら陽奈のときみたいに、助けてくれると嬉しいですっ!」
『陽奈ちゃあああああああああああああん!!!!!!』
それから愛莉は『絶対陽奈ちゃんは私が守る!』と更に張り切ることに。
『ダイきちくん! そこのお守り、パワー感じるから5つ買って!』と次々と指差していくものを買わされていき、財布の中もオレの喉の渇き動揺……一瞬でカラカラになってしまったのだった。
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