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495 【陽奈編】素晴らしき方法!


 四百九十五話  【陽奈編】素晴らしき方法!



 福田祖父母の家に帰省したその日の夜。

 2階の和室で翌日どうやって陽奈と会うかを考えていると、ちょうどいいタイミングで愛莉が現れる。



「ほんと愛莉さん、いつでもどこでもって感じだな」


『それ褒めてる? バカにしてる?』


 

 どうやら愛莉はオレが1人になる機会を伺っていたらしく、隣の部屋の優香がお風呂に向かったタイミングを見計らってこうしてオレの目の前に出てきたらしい。



「慎重だな。 別にオレにしか見えないのに」


『何言ってるの。 そりゃあ確かにダイきちくんにしか見えないっぽいけど、1人で話してる声聞こえてきたら皆が心配するでしょ? やけん、気を利かせてたんだよ?』


「あー、それはどうもご配慮ありがとうございます」


『うんうん。 流石中身が大人なだけあって礼儀をわきまえてるね』



 すぐに本題って空気でもなかったのでオレと愛莉はしばらくの間世間話をすることに。

 愛莉曰く、元祖ダイキとは今もたまに会って話すほどの仲なんだとよ。 人見知りは未だ健在だけど、前よりは心を開くようになってくれたらしい。



「へぇー、じゃあ元祖ダイキくんは元気してるんだな」


『そうだね。 人付き合いとかないから本当に気が楽なんだって。 だから今その体に入ってるダイきちくんには感謝してるっていつも言ってるよ』


「そりゃー良かった」



 ある程度話したオレたちはようやく本題へ。

 オレはオレたちがここに来るまでの2日間、どうやって愛莉が陽奈の足止めをしていたのか聞いてみたのだが……



「ええええええええ!?!? 陽奈に半分憑依して体力使わせて……それで風邪っぽい症状にしてただってええええええええ!?!?」



 なんという発想。 なんという方法。

 愛莉はなんと陽奈に半分憑依し、無理やり体力を消費させて身体を若干重く感じさせていたとのこと。

 

 オレが驚きながら口をポカンと開けていると、愛莉は『もう……陽奈ちゃん元気すぎるから体力削るさじ加減が大変だったよー』と深くため息をついた。



「そ、そこまでするのか」


『陽奈ちゃんのためだもん。 元気があったらすぐに返事に行っちゃいそうでしょ? そしたら困るもん』


「てか愛莉さんが守ってあげりゃあ良かったんじゃない?」


『無茶言わないでよ……私はまだ見たことないけど、そのソウタくんって子が悪霊だったらどうするの? 私食べられて養分にされちゃうよ……』



 ーー……うん、なんか知ったらいけないような事実を聞いたような気もするが、ここはあえて聞かなかったことにしてあげよう。



 オレはコホンと咳払いをすると再び視線を愛莉の方へ。

 まず愛莉的にオレに何ができそうなのかを尋ねてみた。



『え、ダイきちくんに出来そうなこと?』


「うん」


『そうだなー……陽奈ちゃんの格好して会いに行く……とか?』


「いや無理あるだろどうみても!!」



 愛莉のあまりにも脳内お花畑な考えを聞いたオレはたまらずツッコミを入れる。



『だってそんなの分かんないよそんな経験ないんだからぁー!!』


「じゃあ元祖ダイキにも聞いてくれ」


『むりむりー!! 元祖ダイキくんに言っても怖がられて逃げられるだけだもん! ダイきちくん、何かいい案ないの!?』


「ねぇよ霊能者じゃないんだから。 多分オレには『陽奈はオレと付き合ってるから諦めてくれ』みたいなハッタリ言うことしか出来ねえぞ?」



『ーー……え、あり』



 愛莉が目をパチクリさせながらオレに顔を近づけてくる。



「え?」


『それナイスアイデアだよダイきちくん!! いいね、それで行こうよ!!!』



 ーー……は?



「はああああああああああ!?!?」



 オレはものすごい剣幕で愛莉に詰め寄る。



『きゅ、急にどうしたのさダイきちくん!!』


「いやいや冗談だよわかるだろ!!!」


『なんで? 私はめちゃくちゃ良い案だって思ったけど』


「それでオレが憑かれたらどうするんだよ!!!」


『ーー……あ』


「『あ』じゃねえよ!!!」



 長い話し合いをした結果、結局オレがそのオバケに『陽奈はオレのだから諦めろ』と伝えることに。


 その際、もしそいつがオレに憑きそうになっても愛莉が先に憑依していれば完全な支配はされないのではとのこと……なのでオレは愛莉を予め憑依させた状態でオバケのソウタくんに挑むことになったのだった。

 まぁ一番ありがたいのは、そのソウタくんって子が実は普通の人間で、幽霊ってのは愛莉の思い違いだったってことなのだが……



「はぁ……でも憑依って一回しかされた経験ないけど疲れるんだよな」


『そうだね。 前に一回だけダイきちくんに練習で憑依した以来だね』


「せっかくの夏休みに疲れるのかー」


『だったら先にウォーミングアップしとく?』


「なんの?」


『憑依の』



「ーー……」



 オレはかなり嫌がりつつも、もしもの時にちゃんと憑依されていなかった時のことを考えて渋々了承。

「じゃあやるか」と答えるやいなや、愛莉は勢いよくオレの中に飛び込んでくる。



「えええ、今から!? 明日じゃなくて!?」



 脳内からは『そうだよ。 だって少しでも期間長い方がいいでしょ?』と愛莉の声。

 体が若干重い……てことは今はもう半分憑依な状態になっているってことか。



『うん。 完全に入っちゃったら精神までも支配しちゃうからね。 今出来ることは……そうだな、ダイきちくんの手足を意思とは関係なく動かすくらいかな』



 なるほど。



 ここでオレの変態脳は素晴らしい案を思いつく。

 そしてそれを心の中で呟くよりも早く愛莉に聞いてみることにした。



「なぁ愛莉さん」


『なに?』


「早速なんだけど、ちゃんと憑依出来てるのか確かめたいから……手足動かす練習するか」


『いいけど何するの?』


「実はさっきから尿意あってトイレ行きたくてなぁ。 行ってオレの手足操作してくれるよなぁ?」


『!!!!!!』



 ニヤァ!!!!!



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[良い点] 愛莉ちゃんも心配性だなぁ。 久々の憑依。 トイレでは波乱がありそうだ!
[一言] アホなことしてると、漏らすぞ。
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