484 【小畑編】夏は怖い!
四百八十四話 【小畑編】夏は怖い!
夜の6時を過ぎたとはいえ夏真っ盛りなこの時期。 外はまだかなり明るく蒸し暑い。
オレはそんな地獄のような環境の中、汗を滝のように流しながら小畑のいるらしき公園へと全力ダッシュで向かったわけだが……
「うーわ、福田どうしたの。 汗かきすぎきっしょー」
いざ駆けつけてみると小畑は普通に遊具……子供サイズの滑り台にもたれかかりながらスマートフォンを弄っているではないか。
「え、小畑さん……?」
「なに」
小畑がキョトンと首を傾げながらオレを見てくる。
「その……あれ? 落ち込んでないね」
「なんで」
「だってほら、オレ小畑さんのこと『元・チームメイト』なんて言っちゃってさ。 小畑さんのこと傷つけちゃったから」
「あーね。 確かにショックだったけど事実だし……ていうか、え? 福田なに焦ってんの?」
「そりゃあ電話で小畑さんが『もう自分のこと嫌い』って……。 それでオレはてっきり……」
「電話といえばさ、福田電話長すぎね。 待っててって言われたから待ってたけどさ、電池ももうあんまないし……それに暑いところで電話してたからスマホめっちゃ熱いじゃん」
な……ななな、なんだってえええええええええ!?!?
なんかオレ別の方向で悪者にされてるんですけど!!!!
実際小畑が最悪な方向に進まなかったことに関しては幸いだったのだが、目に前で平然と佇んでいる小畑の姿にオレは納得がいかず。
じゃああの弱気な発言はなんだったんだ?
先ほどユウリが助言をくれた『話をじっくり聞いてあげること』などすっかり忘れ、オレは息を切らしながらも小畑に歩み寄り肩に手を掛けた。
「ちょ、ちょっとなんなの福田。 てか汗ほんとやっばいね。 汗拭きシートあげるから一旦それで拭きな」
「勘弁してよ小畑さん。 オレ、小畑さんが危険だと思ってここまで必死に来たのに」
「私が危険? なんで?」
オレは小畑からもらった汗拭きシートで体の汗を拭きながら「とりあえず座らせて」と小畑とともにベンチへと移動。
どうしてわざわざ『もう私、自分が嫌いだわ』とオレに言った理由について尋ねてみたのだった。
「あーそれ? そのまんまの意味じゃん。 私、どんだけ自分勝手なんだろって」
「でもそんなことなんで電話中に急に?」
「んー、なんとなく……心の声的な? ぶっちゃけ福田からの電話、適当に話しながら別のこと考えてたからさ」
「そんなああああああああああああああああ!!!!!!!」
それじゃあオレの今に至る前の行動は全て無駄だったということじゃないか!!
オレの脳内では人生で一度も触れたことのないラップというものがいきなり流れ出す。
ぶんぶんちゃっちゃ、ぶんぶんちゃっちゃ! 君が言った『私が嫌い』、でもその電話中脳内は別世界? オレの気遣い無駄遣い! YO、YO!
おそらくは暑さのせいもあるのだろう。
あまりの徒労とそれとのダブルコンボでオレの脳は完全崩壊。 オレはもう知らねーぞと隣に座っている小畑の太ももめがけて一気に倒れこむ。
「ちょ、うわわ!! 福田!?」
ドSの女王&学年マドンナ四天王でもある小畑の少しひんやりした太もも。
オレはその両太ももの間に顔をねじ込ませると、その柔らかさを堪能するために全力で自身の頬を擦りまくる。
もちろん焦った小畑がオレを引き離そうとしているがオレは力づくでそれを拒否。
「ちょっとふ、福田!! いきなり何してんの気持ち悪い!!! それに余計に熱いし……ちょっと離れて!」
「やだ!!!!」
「なんで急にそうなるわけ!? マジでキモいから離れろ……!」
「うるせー!!! オレも悪かったって思ってるけど……人をめちゃめちゃ心配させやがって!!! 今までは小畑さん綺麗だし才能あったしで全てにおいて許してたけど……もう我慢ならん!!! これはオレを心配させた罰じゃあああああああ!!!!」
こうしてオレは小畑の両太ももに挟まれながら小畑との戦争を開始。
必死にオレの頭をそこから引き剥がそうとする小畑と、それとは対照に全力でそこに留まろうともがくオレ。 その攻防は激しさを増し、オレの頭の位置が徐々に上へと上っていく。
「ま、ままま待って福田!! そこから先はダメっ……! もうスカートの中にまで頭入ってるから!!!!」
「知るかーー!!!! もうこうなればゴールまで行ったるわああああああ!!!!」
「ゴールって……ええええええええええ!?!?」
わずかに顔の角度を変えて視線を上げると目の前には魅惑の布地。
なるほど……とりあえずは行き止まりエリアに顔をフィットさせてあの布地の少し縦に窪んだところに鼻を突っ込みスリスリしたらさぞ素晴らしい感覚に浸れるのだろうなぁ!!!
小畑……お前はオレを、少し前の結城並みにかなり心配させた。
この落とし前、ここでつけさせてもらうぜ!!!!
オレはどことは詳しくは言わないが、小畑のスカートの中に隠れし裏ダンジョン・凹にオレの顔面・凸を素早くセット。
鼻先が湿っていたのは湿度のせいなのか暑さのせいなのか。 しかしオレはそんなの御構い無しに行き止まり箇所に鼻を押し付けると、まるでどこかに抜け道がないかを探すように凸を上下左右に動かし始めた。
「ちょ、福田やめ……! 謝るから……勝手に心配させたこと謝るからああああああ!!!!!」
小畑が叫んで謝罪をするも両太ももに耳を塞がれ熱中しているオレには全く聞こえず。
オレはそれからも全力で顔面運動に精を出していたのだが、それは数分後のこと……
「ーー……あれ」
オレは行き止まり先の布地に顔を埋めながら小さく呟く。
「んんっ!? な、なに福田どうしたの!?」
「頭が……痛い」
「え」
「それになんか……吐き気もする」
「えええええ!!??」
「ちょっと待って……出そう」
「うわわわわわ!!! そこで吐くのはやめてえええええええ!!!!」
そう、今はもう夜とはいえ真夏日の気温。
滝のような汗を流しながら必死に走った後にスカートの中という湿度ムンムンなフィールドで全力熱中していたオレは、知らない間に正真正銘の熱中症となり果てていたのだった。
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