483 【小畑編】嫌な予感!!
四百八十三話 【小畑編】嫌な予感!!
結局オレは小畑に追いつくことが出来ず。
優香にお願いされたマヨネーズのお使いの件もあったので諦めて家に帰ったオレだったのだが、優香から衝撃の一言……
「えっとダイキ……」
オレが手渡したマヨネーズを眺めながら優香が言いづらそうに口を開く。
「ん、なに?」
「その……まぁダイキがこれでいいんだったらお姉ちゃんは大丈夫なんだけど……」
「?」
「これ……辛口って書いてるから、当たり前だけど辛いよ?」
「え」
優香はオレにも見えるようにマヨネーズの包装袋をオレに向けてくる。
そしてオレはそこに書かれていた文字を声に出して読んでみたのだが……
「マヨネーズ……からくち……300グラム」
「ーー……うん」
えええええええ!?!?!? マヨネーズに辛口なんてあったのかよおおおおお!!!
存在していること自体知らなかったわああああああああ!!!!!!!!
「ごめんなさああああい!!!! 急いで買い直してきまあああああす!!!!!!」
オレは「いやいやサラダにかけるだけだし案外いけるかもよ」とフォローを入れてくれていた優香に背を向けると、ハイパーダッシュで玄関へ。
スーパーは流石に距離があるのでコンビニで新しく買おうと勢いよく玄関の扉を開け階段を駆け下りた。
「きゃあっ!」
「おおおおお!?!?」
階段を降りていたところで遭遇したのはエマ……ともう1人。
帽子を深く被っていて一瞬誰なのか判別がつかなかったのだが、髪色を見て気づく。
「あ、あああああああ!! メイプルドリーマーのユウリちゃ……!!!!」
「しぃーーーーーーー!!!!!」
オレが指差しながら声を出している途中で焦ったユウリが周囲を見渡しながらオレの口元を手で押さえてくる。
うおおおおおおおお!!!!! アイドルの手のひらがオレの口にいいいいいい!!!!
オレはユウリに勘付かれないようほんの少しだけ舌を出してひと舐め。
すると何だろう……オレ的には汗とかの少し塩辛い感じをイメージしていたのだが、なんというか少し苦い。 スンスンと匂いを嗅いでみると土臭い……というのだろうか。
でもアイドルが泥遊びをするはずもないし……。
「ん……んん?」
オレがその味・香りの正体を考察していると、エマが「てか一体どうしたのよこんな時間に。 もうすぐ夜よ」と自身のスマートフォンの時間を確認しながらオレに尋ねてくる。
「あー、それはそのあれだ、マヨネーズ間違えて買ってきちゃってな。 買い直しに」
「は? マヨネーズに買い間違いなんてあるの?」
「そう思うよな。 でも実際にやっちまったんだ。 まさか『辛口』なるものがあったなんて思わなかったぜ」
オレが「な、意外だろ?」と同意を求めるとエマが無言でオレを見つめてきている。
「ん、なんだ? エマも驚いた感じか? そうだよな、普通そんな辛口マヨネーズがあってたまるかって……」
「ーー……いや、普通に売ってるし、たこ焼き屋さんで買うときとか辛口マヨネーズにするか聞かれるところもあるでしょ」
え。
結局エマにはオレの辛口マヨネーズの衝撃は理解してもらえず。
しかし「まぁもう遅いしエマの家の貸したげるわよ」と温情をもらいオレはエマ・ユウリとともに福田家の1階上……エマの家へと向かったのだった。
◆◇◆◇
「はい、別にすぐ使うわけでもないから返すのは明日の放課後とかで大丈夫よ」
玄関の外で待っていると先ほどまで冷蔵庫に入れてあったのだろう……キンキンに冷えたマヨネーズを持ったエマが玄関から出てきて「はい」と渡してくる。
「おお、助かったぜサンキュー!!!」
オレはそれを受け取ると「じゃあな」とクルリとエマに背を向けながら家へと戻ろうとしたのだが……
「あ、ちょっと待ったエマ!」
オレはすぐさまクイックターンを決めると玄関の扉を閉めようとしていたエマの手をガシッと掴んだ。
「きゃあっ! な、何よ! ビックリするわね!!」
「ついでにちょっと相談乗ってもらえないでしょうか」
「相談?」
エマの後ろからユウリが「なになにどうしたの?」と近づいてきていたが、オレはそれを気にせず話すことに。
もちろんその内容は小畑の一件。 オレが小畑に「元・チームメイト」と言ったことで怒らせて……悲しませてしまったどうしようと解決案を求める。
するとどうだろう……オレが話し終えると目を大きく見開いたエマとユウリが互いに目を見合わせているではないか。
「えっと……エマ? どうしたんだ?」
「いや……ちょうどエマたちも、ついさっきまでミナミの最終オーディションの話してたのよ」
「そうなのか!?」
「うん。 でも……そっか、ミナミ気にしてたのね」
「あぁ。 公園で最終審査のダンス1人で踊ってたんだ。 それ踊ってるとあの時を思い出して3人でいる感覚になれるんだとよ。 なのにオレは……【元・チームメイト】とか頭おかしいこと言っちまってさ……もうどうすりゃいいんだ」
「そうなのね……」
エマは小さく頷くと視線をオレからユウリへと向ける。
そしてそんなユウリはエマと再び目が合うと何故か嬉しそうに……優しく微笑んだ。
「それであのー……何かオレに助言を頂きたく」
「ないわね」
「うんないね」
まさかのシンクロ。
2人はクスッと笑いながらオレにはどうしようも出来ないことを伝える。
「え、それはどういう……」
「だからダイキにはどうすることも出来ないってこと。 それはミナミの問題であって、ダイキは直接的には絡んでないんだから」
エマが「だってダイキはミナミのチームメイトだった子たちのこと何も知らないでしょ? なのにそれをどうにかしようだなんて無理な話でしょ」と付け加えてオレの肩をポンと叩く。
「ぐぬぬ……」
「だよねユリ」
「そうだね。 でもそれじゃあダイキくんも納得出来ないだろうから、唯一出来ることをユ……私が教えるとしたら、ダイキくん、美波ちゃんの話をじっくり聞いてあげることくらいかな」
「?????」
結局はどうすればいいんだ?
エマはオレにはなにも出来ないと言いながら、ユウリはオレに唯一出来ることが話を聞いてあげることだと言う。
その後オレは頭上にかなりのはてなマークを浮かばせながら家へと帰宅。
エマから借りたマヨネーズを優香に渡すと自室へと向かい……スマートフォンで小畑の連絡先を表示させ電話をするべきなのか否かを考えていたのだが……
「うん、ここは現役アイドルのユウリちゃんの助言に従ってみよう」
オレは勇気を出して小畑の電話番号をタップ。
小畑が出てくれることを信じ、通話をかけたのであった。
『ーー……もしもし?』
「え、あ……ごめんね急に。 小畑さん、ちょっといいかな」
『うん、いいけど』
「よかった。 ちなみに今は……自分の部屋?」
『ううん、まだ帰ってない。 言ってもまだ6時だし』
「えええ、どこ?」
『ーー……』
ん? 電波が悪いのかな。 それとも小畑が黙り込んでいるのか……突然小畑の声が聞こえなくなる。
「も、もしもーし、小畑さん」
大体3回くらいだろうか。
こちらから呼びかけているとどうやら小畑が黙っていただけだったようで小畑の大きく息を吸う音が聞こえてくる。
『ーー……福田』
「あ、はい」
『もう私……自分が嫌いだわ』
!?!?!?!?!??
「ちょ、おおおおお小畑さん!?!?」
オレは先ほどの小畑の発言で全身に電流が流れる。
ドSの女王らしからぬ発言。 もしかして今のって……遺言ではなかろうなあああああああああ!!!!!
「小畑さん今どこ!! すぐに行くから早まらないで!!!!」
『ーー……え』
せっかくマヨネーズをエマから借りたおかげでこれ以上汗をかかずに済んでいたのにも関わらず、オレは部屋を飛び出す。
優香に「すぐ戻るから!!」と声をかけるとスマートフォンを耳に当てたまま、再び玄関を飛び出したのだった。
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