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48 JSは見たらダメなやつ!


 四十八話  JSは見たらダメなやつ!!



 今日は来ないと思っていた工藤がようやく合流。

 やっとちゃんとした話し合いが出来るぜと安堵していると、対面に座っていた多田が「裕太兄ちゃん、その本の山なに?」とテーブルに積み上げられていた本に興味を示した。



「よく聞いてくれたね多田ちゃん! これは僕からのプレゼントだよ!!」



 そこに積まれていたのは大量のラブカツ関連の書籍。


 幼稚園から小学生までを対象とした月刊雑誌や、ラブカツのイラストブック、ラブカツ声優の写真集、コミック、などなど……ラブカツが好きな女の子からしたらまるで宝の山だな。

 工藤はそんなラブカツ書籍を何冊か多田の目の前に並べながら「ラブカツ系の本を片っ端から買い集めてきたんだ!! 多田ちゃんにプレゼントする為にね!!」とキャバクラのお姉さんに高額な貢ぎ物をするおじさん並みに堂々と胸を張った。



「えええ!? これ、全部ウチに!?」


「そうだよ!! ダイキから聞いたんだけど、多田ちゃんさっきまでダイキのおすすめした曲聞いてたんでしょ? だったらこの本で選んだ曲に似合う衣装を探そうよ!」



 工藤が適当に一冊雑誌を手に取り、「これなんて見えそうで見えないのが堪らな……ゲフンゲフン、デザインが可愛くない?」と多田に見せるようにペラペラとめくっていく。



「え、嬉しいけどウチ、こんなに本持って帰ったらママに怒られるよ」


「じゃあ僕が毎回持って帰るから安心して! それでいい感じの服があったら僕に教えてよ。 特注でもなんでもして用意するからさ!」



 流石は社会人の経済力。 工藤が多田にビシッと親指を立てると、多田は「うわぁー! すごい!! 本当にウチが選んでいいの!?」と目を輝かせながら工藤を見上げた。



「もちろん! 僕は多田ちゃんを応援してるから当然だよ!! まぁでも今は夏で暑いから、袖のない衣装がいいんじゃないかなー。 例えばこれとか!!」


「そうだねー! じゃあ袖がないやつでぇー、ウチ、ヒラヒラが付いてるのがいいなぁー! 他の本も読んでみていい?」


「もちろん!」



 おいおいさりげなく自分の性癖に刺さる衣装おすすめするじゃないか工藤よ。

 そしてその犯罪者みたいな目つきをやめろ! めちゃめちゃ血走ってるぞ気づけ!?



 それからも多田と工藤は衣装についての話で大盛り上がり。



「あ、このメロンちゃん可愛いー! それにこの天空のぞみちゃんも!」



 希望に満ち溢れた表情で多田がページをめくっていると、オレの隣で工藤が「なぁ森本……いや、ダイキ、僕はこんなに幸せでいいのかな」と多田の姿を愛おしそうに眺めながら小さく呟いた。



「どうしたんだ急に」


「だってさ、想像できたか? こうして大人になった今、自分のストライクゾーンであるJSと仲良く会話出来てるんだよ? もう僕、幸せすぎて色々と爆発してしまいそうだよ」


「ーー……お前、犯罪だけは犯すなよ?」


「も、もちろんだよ! この幸せ……絶対に手放してなるものか!」



 工藤が拳を力強く握りしめる。

 


「そうだな。 もし過ちを犯してしまったら……オレは年齢的にセーフだけどお前はタイーホだもんな」


「そ、そうだね! だから我慢できないときは妄想の中で我慢……トイレに引きこもることにするよ」



 そんなことを話しているとどうだろう、突然多田の手が止まり、「あれ?」と小さく首をかしげる。



「「ん?」」



 多田の視線の先には一冊の本。 多田は「これも……ラブカツ?」と口にしながらそれに手を伸ばした。



「漫画みたいだけど……ウチ、こんな薄くて大きめな本初めてみたかも。 絵の感じもなんか他のと違うよね」


「「え?」」



 オレと工藤が多田の持つ本に視線を向ける。

 すると……なんということだ!! それを見た瞬間、オレの背後に巨大な雷が落下。

 オレは工藤の背中をバシンと叩くと、アイコンタクトで『多田が持っている雑誌をよく見ろ!!』と伝えた。



『え、どうしたのダイキ』


『いいから多田の持ってる本を他のと見比べてみろおおおおおお!!!!!』



 それは確かにラブカツの本。 しかしそれは多田のような子供が……JSが読むような内容ではない!

 そう……本の左下にはあのマークが、丸い円の中に数字の『18』、その上から斜線が引かれているのだから!!!


 もう紳士淑女の諸君なら分かるであろう!!!

 はい正解だ!! 多田の持っているそれは18禁!! エロ同人誌!!!


 しかもよくよくタイトルを見てみたら【ラブカツ】ではない……【ラブ☆ピュッピュ活動】になっているじゃないかあああああ!!!


 アイコンタクトが伝わったのか、工藤もようやくそれに気づいたらしく一気に顔を青ざめさせていく。



「な、なぁ多田、それはラブカツじゃない本みたいだぞ? この裕太兄ちゃんが個人的に買った本らしい。 返してやってくれるか?」



 ここはオレがなんとかするしかない。

 オレは声を震わせながら多田に手を伸ばす。



「え? でもこのキャラって水上たんぽぽちゃんじゃないの?」


 

 そうだよ、でも同人誌だもの!! ただそれは頑張ってアイドルの活動をしてる内容じゃないぞ! 良く分からないがラブ☆ピュッピュする内容らしいからな!!!

 あれかな? いつぞや流行ったマヨネーズをチュッチュするような感じなのかな?

 しかしそんなことを純粋無垢なJSに言えるわけもなく……



「なんか他のアニメでそのキャラに似てるやつがあるらしいんだよ。 だからそれはたんぽぽちゃんではない。 返してあげてくれ」


「なんだそっかぁー。 はい、裕太兄ちゃん」



 多田が純粋な女の子で助かったぜ。

 オレの言葉を見事信じた多田は何も疑うことなくそれを工藤に渡す。



「あ、ありがとうね多田ちゃん。 僕、うっかりしてたよー」


「ううんいいよー。 でもその絵、可愛いねー。 今度ウチも読んでみたいなー」


「えっ!!」



 その後、多田と何冊か本を読んでいるうちに多田の塾の時間に。

「福田、裕太兄ちゃんありがとう! じゃあまた今度ね!」と多田は大きく手を振りながら店を駆け足で出て行ったのであった。



「こんなに本、サンキューな工藤」



 多田がいなくなったことで小学生を演じる必要のなくなったオレは再び前世・森本真也として本をリュックに片付け始めていた工藤に話しかける。



「いいんだ。 森本が死んでからあまりイベントとかにも行けてなかったからな。 金なら余ってたんだ気にしないでくれよ。 それに感謝するなら僕のほうだ」


「ん? なんでだ?」


「だってさっき間違って買っちゃってた同人誌……ダイキが止めてくれなかったら僕は社会的に抹殺されるところだったからね」


「あー、確かにな」



 オレが見せたらまだセーフかもしれないが大人の男がJSにそんな本を見せたら完全にアウトだもんな。

 


 ◆◇◆◇



 時間的にもオレたちもそろそろ解散するかという流れに。

 しかし席を立つ際、オレは少し前から感じていた気持ちを工藤に打ち明けることにした。



「なぁ工藤、実はオレからもお願いがあるんだが……」


「なに?」



「さっき間違えて買ったって言ってた同人誌、よかったら譲ってくれないか?」



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