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479 【小畑編】青春メモリー


 四百七十九話  【小畑編】青春メモリー



 それは夏休みまで後1週間といったところ。

 オレが未だ誰とも恋愛フラグを立てられていない……このままだと夢の小学生恋愛が出来ないじゃないかと絶望しながら家へと帰っていると、その途中で姉・優香からのメールが届いた。



【受信・優香】ごめんダイキ。 もし間に合いそうだったらでいいんだけど、マヨネーズ買ってきてくれないかな。



「ーー……なるほど、もう過ぎちまったよ」



 しかしそんなことは関係ねぇ。

 いつも良くしてもらってるからな。 オレはすぐに『わかった』と送信すると体の向きを変えて進行方向を変更……マヨネーズの売っているここから一番近いスーパーへと向かったのだった。



 ◆◇◆◇




「くっくっく……、お店に入ってすぐにマヨネーズの置いてある棚を見つけるとはオレも家庭力上がってきたじゃねぇか」



 目的の品を速攻で見つけ購入したオレは自身の成長スピードに満足しながらお店を出る。


 あぁ……もう夕方なのになんて晴れやかな気分なんだ。

 こんな時は勝利のジュースに酔いしれてから帰るのも有りかもしれない。


 オレは途中の自販機で炭酸ジュースのペットボトルをリッチに2本購入。 その後ゆっくり座って飲めるよう、ベンチを多く設置してある近くの公園へと足を運んだ……のだが。



「ーー……え」



 公園に到着して視界に入ってきたのはうちの制服を着た女子で、黒髪二つ結びの後ろ姿。


 間違いない……ドSの女王・小畑だ。


 小畑がベンチにスマートフォンを置き、何やら動画を流しながらその通りに踊っている。


 ていうかあの振り付け……見覚えがあるぞ。 確か少し前に開催されていた有名アイドルグループ・メイプルドリーマーの妹グループオーディション最終審査で小畑とそのチームメイトが一緒に踊っていたやつだ。

 でも一体なんで今……?


 しかしながら熱心に踊っている小畑に声をかけることが出来なかったオレはその場で立ち尽くしながら小畑のダンスをただただ傍観することに。


 それから大体3分くらいだろうか。


 暑さに我慢できなくなったオレが手にしていたジュースを口にしていると、ちょうど小畑のダンスがフィニッシュしたようで小畑は綺麗な汗を流しながら休憩なのかスマートフォンを手に取りベンチに腰掛ける。

 そしてこれは偶然なのだろうか……ちょうど休憩を始めたそんな小畑と目が合った。



「あれ、福田?」


「あ」



 ◆◇◆◇



 その後オレは小畑に手招きされ小畑の隣へ。

 ちょうど2つ飲み物を持っていたこともあり、オレは未開封の1本を小畑に差し出した。



「え、いいの?」


「うん。 2つあるし」


「でもなんで2個も?」


「まーその……なんていうか、自分へのご褒美に?」


「んじゃあそれは自分で飲みなよ。 私はこっちもらうわ」


「え」



 そう言うと小畑はオレの開封済みのペットボトルを奪うように取ると、「んじゃ、いっただっきまーす」と美味しそうにペットボトルの底を上に向けながらコクコクと飲み出す。

 ーー……もちろん口をつけて。



「え……ええええええええ!?!? 小畑さん!?!?」



 こういうことに慣れていないオレは分かりやすく動揺。

 小畑の唇を凝視していると、そんなオレの視線に気づいた小畑が「ん、なに?」と首を傾げた。



「い、いや……小畑さん、それ……オレがすでに口付けてたんだけど……」


「んあーそうだね。 あ、もしかして福田、そういうの気にするタイプだった?」


「あああああ、そんなんじゃないですー!!! 大丈夫ですーー!!!」



 い、今の小学生って間接キスとか気にしないもんなの!?

 それか間接キスで恥ずかしいのって、もしかしてオレだけ!?



 しかしこの話題が続けば確実に小畑はオレが間接キスで照れていることに勘付いてしまう。 そうなったら今後そのネタで弄られるのは一目瞭然……なんとか話を逸らさねば。



 オレは赤くなった顔のままコホンとワザとらしく咳をして調子を整えると、一気に話題を変更……小畑がどうしてここで踊っていたのかを尋ねてみることにした。



「あー、福田見てたんだ」


「ごめん、つい。 でもあれって前のオーディションの時に踊ってた振り付けだったよね」


「えー! なんで分かったの!?」



 小畑が驚きながらオレに顔を近づけてくる。


 うーーむ、小畑から伝わってくるほのかなJSの汗の香り……それとさっきまで踊っていたからであろう伝わってくる熱気。 やはり堪らん!!!


 オレはそんな小畑の香りを楽しみながらも「まぁなんだかんだで真剣に応援してたもので」とクールに返答。

 それを聞いた小畑は「あ、ありがと」少し恥ずかしそうに微笑みながらオレから顔を離してベンチにもたれかかった。



「ふふ、やっぱ福田って私のこと好きじゃん」


「え」


「普通そこまでちゃんと覚えてるわけないから」


「そ、そうかな」


「そうだよー」



 小畑は「参ったなー」と嬉しそうに呟きながら指先で頬を軽く掻く。

 そして先ほどオレがした質問……『どうしてここで踊っていたのか』に対する答えを教えてくれたのだった。



「福田はさ、あのオーディションを勝ち取った2人の名前覚えてる?」


「2人? えーと……」



 いきなりだな。 ていうか流石に名前までは覚えてないぞ。



「クールっぽいお姉さんとオデコを出した女の子だっけ」


「そうそう。 ちなみにクールなのが橘奈央……橘さんで、オデコ出して可愛いのが五條鈴菜……鈴菜ちゃんね」



 小畑がスマートフォンで最終審査の合宿中に撮ったのであろう写真を見せながらオレに改めて紹介していく。



「あーそうだった、そんな名前だった」



 しかしそれとどう関係があるのだろう……。



 オレは次の小畑の言葉を待つことに。

 すると小畑もそれを察したのか、「とりあえず福田、ダサい……とか言わないでね」とオレに念を押してからゆっくりと口を開いた。



「私さ……まぁ私の意思でみんなといる時間を選んだ訳なんだけど、なんだかんだで最終審査で出会ったあの2人との時間もかなり青春してたっていうか……めっちゃ濃かったんだよね」


「うん」


「それでその……ほら、私ってあの中でもセンターで踊ってたじゃない? だからあの時の曲流しながら踊ってたらさ、あの日を思い出して……3人で踊ってる感覚になれるんだ」



 小畑は「まぁそれも私の勝手な妄想で踊ってるだけだけど……」と付け加えながらハハハ……と笑う。


 なるほどな。 

 オレが今の人生を謳歌しているように、小畑もあの時あの場所で……また違った青春の1ページを謳歌していたのか。

 


「そうなんだ、小畑さんがそこまで言うってことは、かなり居心地のいい2人だったんだね」


「そりゃそうだよ! もちろん福田や佳奈、麻由香たちといる空間が嫌な訳じゃないよ!? でもそう……あの橘さんと鈴菜ちゃんと一緒にいる空間も、また別の良さがあったんだよね。 なんて言うのかな……第2の故郷的な?」



 うわー、そんな青春もいいなぁ。

 


 小畑の話を聞いたオレがそんな小畑の青春を羨ましがっていたのも束の間。

 ここまで聞いていたら、さぞかし小畑は今もその2人と仲がいいと思っちゃうよな? しかしオレはこの後小畑が発する言葉に衝撃を受けたのだった。



「あーあ、2人と会いたいなー」


「連絡して予定合わすことは出来ないの?」


「ムリムリ。 だって私、2人からの連絡返せてないもん。 今更連絡しても迷惑じゃん」



 ーー……え。



「え、返してないの?」


「うん」


「それは……いつから?」


「内定断ってから」



「えええええええええええええええええ!?!?!?」




お読みいただきましてありがとうございます!!


結城・西園寺・三好ルートを進まなかった場合のレアルート小畑編!3人ほど長くはならないかとは思いますが、よろしくお願い致します☆

感想や下の方にある☆マークの評価、ブクマ・レビュー等、お待ちしております!!


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― 新着の感想 ―
[良い点] まさかの小畑ちゃんルート……! 五條ちゃんや橘ちゃんも再登場の兆しあり! 濃密な話になりそう……。 間接キス。よいですな! てか連絡返してないんかい!
[良い点] 小畑ちゃんかぁ 男を尻に敷く魔性の女って印象 むしろ物理的に尻に敷かれたい
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