473 【三好編】リアル!
四百七十三話 【三好編】リアル!
「まぁその……大丈夫そうでよかったぞ」
昼。 オレの目の前には昨晩教師たちに病院へと連れて行かれ、数日入院することとなった三好の姿。
三好はベッドの上で上体を起こした状態でオレを見上げていた。
「うん、ありがと。 でも福田いいの? 今頃みんなでバス乗って帰る時間じゃない?」
「先生から許可もらったんだよ。 今夜は特別に近くのビジネスホテルに先生と泊まれることになって明日の昼くらいに帰るんだけど……まぁ、お見舞いさせろ」
オレがそう声をかけると三好が「お見舞いって……。 ただの風邪じゃん」と冷静にツッコミを入れる。
「うん、まぁそうなんだけどな」
そうか、先生たちは三好に症状のこと教えてなかったんだな。
それに朝は三好母が様子を見にきてたらしいけど……この感じからして三好のやつ、さっきまで寝てたっぽいぞ。
オレが三好を見ながら呑気なやつめ……などと考えていると、三好が「でもあれだね福田。 そんなに私のこと心配してたんだ」と少し嬉しそうに微笑みながらオレを指差してくる。
「は? なんでそうなる」
「だってそうじゃん。 福田、わざわざ先生から許可もらったんでしょ?」
「そうだな」
「じゃあ私のこと心配してんじゃん。 美波じゃないけど……どんだけ私のこと好きなわけ?」
ぐぬぬ……調子に乗りやがって。
それにしても言えねぇぜ。
今朝ここにくる時に教師から聞いたんだけど、三好のやつ、うなされながら「福田……福田……!」ってオレの名前を口にしてたらしいからな。
そんなこと聞いたら側にいてあげたくなるもんだっての。
オレが「てかそんなこと言わずに、せっかく来てやったんだからもっと歓迎しろよ」とワザとらしく笑うと三好は少し恥ずかしそうにオレから視線を逸らす。
「ん、なんだ?」
「ーー……してるもん」
「え?」
「感謝はその……してるもん」
「お、おお……そうか」
なんだかあれだな。 さっきみたいに調子に乗られたらウザいけど、逆に照れながらでも素直に感謝されるとこっちも多少なりとも照れちまうというか……。
それからしばらく続く無言の時間。
オレも三好もどう話を切り込んだらいいのか分からずお互いの顔をチラチラと確認しあっていると、そんな静寂を切り裂くかのように問診の医師が看護師さんを連れて部屋へと入ってきた。
「はーい、じゃあ今から調子みるからねー。 そこのボクはちょっと後ろに下がってくれるかなー」
「あ、はいすみません」
オレは静かに医師たちの邪魔にならないよう数歩下がって窓の方へ。
それから医師の問診を『無事でありますように』と願いながら見守ることにしたのだが……
「じゃあ三好さん、もうちょっとこっちに寄ってこれるかな」
「は、はい」
「はいじゃあ口開けて」
「あーー」
「ーー……うん、喉の奥……扁桃腺はまだちょっと腫れてるね。 熱多分まだちょっとはあると思うから、後でまた計ろうか」
「はい」
「じゃあ次はモシモシするからお腹だしてー」
「は、はい」
三好は何の躊躇いもなく入院着を上へと捲り上げ、看護師さんが医師の聴診を補佐するべく更に上へと捲りあげて固定する。
「はーい、じゃあ当てるよー。 ゆっくり呼吸してねー」
「すーはー。 すーはー」
ーー……。
オレの目の前では上半身を露わにして聴診器をペトペトされている三好。
それもやはり心臓付近に当てていることから男の夢とも言える魅惑の果樹園も拝めることが出来ているわけで……
「お……おおおお」
何が……とは言わないが、例えるならばこの夏場によく見るあれだ。
そう、比較的小さな蚊に刺された後のあの僅かな膨らみ。
オレも蚊に刺されたのカナ? 下半身付近が妙に痒く……いや、疼くぜ!!!!
オレはそんな疼きを必死に耐えながら目の前の情景を脳内メモリーに直接録画を施していく。
これは分かる人に分かってもらえればいいレベルのことなのだが、聴診器が小さな南半球にペトっと軽く押し付けられ、それが離されると同時に押さえ込まれていた箇所が持ち前の弾力でプルンと押し返す。
その小ちゃいながらも主張しているそれはまさに至高そのもので、それだけでオレのテンションはフルMAXにまで上昇していく。
ふぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!
オレの顔も三好の果樹園もこの光景を取り巻く空気も……まるで褐色のブドウだぜええええええええ!!!!!!!!
オレが心の中でウヘヘとニヤつきながらそん三好の問診を見つめていると、オレのいやらしい視線に気づいたのか補助をしていた看護師さんがオレに視線を向けて「ウフフ」と小さく笑う。
「ん、どうしたのかね」
「いや、先生、この場合後ろの男の子は……お部屋の外で待ってもらうのが正解でしたね」
「なんでだね?」
「だってほら、彼の……」
「ん?」
看護師さんはクスクス笑いながら医師に耳打ち。
そして何を聞いたのか医師もオレに視線を写すと、「アハハハ!」と笑いだした。
「な、なんですか先生」
オレがそう尋ねると医師はくるりと体の向きを変えてオレのもとへ。
肩をポンと叩くと、三好に視線を向けがらこう口にしたのだった。
「男の子だから興奮するのも分かる。 でもね、こういう場面だからこそあえて目を逸らすのが紳士ってもんだよ」
「「!!!!!!!!!」」
こいつ……オレにこっそり伝えればいいものを普通の声量で言いやがってえええええええ!!!
もちろん先ほどの言葉は三好にもハッキリと聞こえていたようで、三好は医師の言葉を聞くや否や我に返り顔を真っ赤にしながら捲っていた上着を勢いよく下へと戻す。
「あ」
「へ、へへへへ変態!!!!」
そしてそんなオレと三好のやりとりを微笑むように眺めながら医師と看護師は「後でまた戻ってくるから、体温計っておいてね」と三好の脇に電子体温計を挟んで部屋を後にしたのだった。
「まぁーその、あれだよ三好」
「な、何さ!」
相変わらずの顔を真っ赤にした三好が胸辺りを腕で隠しながらオレを見つめてくる。
「ほら、元気になったらパンツ見せてくれる約束だったんだしさ、いいじゃねーか。 さっきのはサービスってことで」
そう言い訳するとどうだろう……三好は大きく目を見開いて「え」と小さく声を漏らす。
「ん? どうした三好」
「パンツ見せる約束……あれ、夢じゃなかったんだ」
え?
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