472 【三好編】ホラー!?
四百七十二話 【三好編】ホラー!?
あれから三好はすぐに教師たちに連れられて山の麓にある病院へ。
流石にオレの同行は拒否されたため残っていた教師とともにホテルのロビーで一報を待っていると、三好を連れて行った教師からメールが来たのだろう。 思ったよりも熱などの症状が酷かったため、数日ではあるが検査も込めた入院が決定したとのこと。 「迅速な判断だった」と医師から褒められたということをオレに教えてくれた。
「そ、そうですかー」
やっと肩の荷が下りたぜとオレが胸を撫で下ろしていると、先ほどの件を教えてくれた教師がポンとオレの背中を軽く叩く。
「え、なんですか先生」
「ありがとな。 先生たちの間ではホテル内に常備してある薬を飲ませて寝かせておけばいいんじゃないかって話も出てたんだけど、福田の『病院へ』を信じてよかったよ」
「あーいや、オレは何も」
「それに肝試しも続行したかっただろうに、三好のことを優先してくれてありがとうな」
こうしてオレは「今夜はゆっくりしろ」とのことでのんびりと部屋へ。
扉を開けて中に入ると、そんなオレとほぼ入れ替わるようにルームメイトのはずのモブ男たちが部屋を出て行く。
「え、どこ行くの?」
「あー……なんだろ。 なんかよく分からないんだけど、他の部屋で寝たいかなって」
「俺もー」
「えーー……」
これは修学旅行の時のような1つの部屋で集まってワイワイしに行っているのか、もしくは別の理由で……
「まぁどっちにしろ1人の方が気楽だしオレ的にはありがたいんだけどな」
オレが深く息を吐きながらベッドに倒れ込むと、いつの間にいたのだろう……窓の方にフと視線を移すと、あぁ……この光景、懐かしいな。
窓ガラスにもたれながらこちらを静かに見つめている美香の姿に気づいた。
「おー、美香。 久しぶりでも案外驚かないもんだな。 今はどっちの喋り方でいくんだ?」
「こっち」
「そっか。 さっきはありがとな」
「いい。 それよりも……」
「そうだな。 じゃああのピンク髪の子はいないっぽいけど……話、聞かせてもらってもいいか?」
「うん」
それからオレは美香から先ほどの謎めいた時間・空間の話を聞くことに。
美香も「じゃあ、話す」と久しぶりの無感情ボイスで話し始めようとしてくれていたのだが……
「あ、でも美香、ちょっといいか」
「なに」
「さっきあの変な空間で見たときも思ったんだけどさ、なんでメガネの色……赤から青に変わってんの?」
「いわゆる、美香・マークツー?」
「ーー……答えになってねえよ」
◆◇◆◇
大体10分も満たないくらいだろうか。
そこまで長くない美香の話を聞いたオレはポカンと口を開けたまま美香を見つめる。
「え、美香……今の話、マジか」
「マジ」
まずオレが驚いた1つ目の内容が三好のデスゾーン。
どうやら三好の体調……というか風邪の症状はかなり重症化するタイプだったらしく、もし仮に『海』を選択していた場合、炎天下だったこともあり途中で溺れて生死を彷徨うことになっていたという。
なので『山』を選択したまでは正解だったらしいのだが……
「あの小さなイベントに参加するくらいは問題なかった。 でもまさか、あのタイミングで冥界に誘われるとは」
そう、美香の話ではオレと三好が足を踏み入れてしまった場所は冥界。
この山が神の世界に最も近いところに存在するだけのこともあり、逆を言えば霊界・冥界ともほぼ隣り合わせ。 普通ならそんな簡単に迷い込むことはないらしいのだが、冥界に住む邪悪な存在は心や体が弱っている者を好物とする……だからこそ標的を三好に絞っていたとのことだった。
「てことはオレたちが冥界に入るのって必然だったの?」
「そう」
「いつから?」
「多分三好佳奈がホテルの部屋で休んでるときから。 不思議に思わなかった? 熱があって結構しんどそうなはずだったのに、肝試し手前で急に体調が戻ったり催し事に参加したがっていたり……」
「た、確かに」
そう言われてみれば三好のやつ、めちゃめちゃ食べてたし、少ししんどそうなタイミングこそあったものの途中から普通に演技できるレベルくらいには元気そうだったもんな。
それに珍しくオレに食い下がってまで肝試しの参加をお願いしてたし……あれも冥界から呼ばれていたということなのか。
そりゃあ神様がいるんだからその逆もいるんじゃないかとは思ってだけど……こんなに怖い感じなんだな。
「あ、ちなみにさ、もしあのままオレと三好が中に閉じ込められてたとしたら?」
「死ぬまで永遠に彷徨うか、途中で餓鬼や邪な存在に見つかってお終いだった。 だからこうして事前に潜り込んで助けてあげた」
うわああああ、この安心感……久しぶりだぜええええ!!!!
オレはもしあのまま助けが来なかったらルートを想像して手を震わせながらも美香の手を取り改めて感謝する。
「ほんっとに助かったありがとう美香!」
「お礼の言葉も嬉しいけど、今はいい。 それよりも他にない?」
「ーー……何が?」
「ほら、ダイキなら分かるはず」
美香は一瞬自身の股部分に視線を落とすと、ゆっくりとその視線を再びオレへと戻す。
「あ……ああ、パンツ……とか、そういう系?」
「そう」
こ……こいつ、何も変わってねええええええ!!!!!
だがそれが良い!!!
オレはとりあえず何か探しとくよと約束するのだが、流石に美香もあの同席していたピンク髪の上位神の目があるということで「あいつの目を盗んでこっそりと」とオレにミッションを課してくる。
「ちなみにあの可愛いピンク髪のロリは今どこいってんだ?」
「上位神なら今頃周囲の見回り。 あと、あれは見回りの神」
「えええ……でもこっそりって言われても。 今だと三好の替えの下着系か……寝汗が染み込んだ枕くらいしかないんじゃね」
「下着でいい」
即答かよ。
「おけ、じゃあ……今から取ってくるか?」
「いや、おそらくあの上位神、きっとそろそろ美香の様子を見にくる。 だからパンツは後日美香の神社にお供えとして……茂みの裏にでも置いて欲しい」
「なるほど」
「汚れないように袋に入れてもらえると助かる」
「了解」
その後美香に「なんで制服を着ていたのか」と尋ねたところ、どうやらオレたちが冥界に誘われることは確実だったため、「ほぼ同じタイミングで入り口に足を踏み入れる必要があったから、後ろからこっそりつけていた」とのこと。 それで『どうせなら冥界に迷い込んだところでガチの肝試しを体験させてあげよう』となったそうだ。
「おいおい勘弁してくれよ。 でもさ、なんですぐに驚かさなかったんだ? おかげで結構歩いたじゃねーか」
「それは仕方ない。 あの格好するのにかなりの時間を要した。 それに肩車してもらってたとき、上位神の首にアソコが当たってくすぐったくて、バランスを取るのが大変だった」
だから左右に不気味に揺れてたんかーーーーい!!!!!
「じゃ、じゃあ足が茶色く見えたのは?」
「それはあんな夜道。 茶色く見えるのも仕方ない」
まさに正論。 まさに一刀両断。
あのときガチで恐怖で慄いていた自分がかなりバカらしくなってくる。
「で、でもさ!! オレが三好と一緒に隠れてるとき、『コノアタリ……ンブブブブ!』とか変な奇声あげてたぞ!! あれはなんだ!?」
「あれは上位神が普通に言葉を話し出したから、美香が上から足で口元を押さえただけ」
「しょ……しょうもねえええええええええええ!!!!!」
それからしばらくして美香が「あ、上位神がくる。 ここでお別れ」とオレに小さく手を振り足早に部屋から出て行く。
「え、もうお別れかよ。 じゃあその体はどうすんだ?」
「またたまに目を盗んで遊びに行く」
「で、出来んの?」
「余裕」
こうして美香は珍しく軽く微笑むとオレに背を向け扉の外へ。
オレも何か他に言いたいことなかったかなと考えた結果、1つだけ思いついたので美香に……いや、神様にこう声をかけ見送ったのだった。
「とりあえず神様がJSのパンツを欲しがってたこと……茜に伝えとくな」
「!!!!」
オレは忘れないだろう。
クールな美香の姿をした神様が……動揺のあまり振り向きざまにその青いメガネを落としてしまったことを。
「さて……と、パンツとってくるか」
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