470 【三好編】炸裂!?
四百七十話 【三好編】炸裂!?
あれからどのくらい経っただろうか。
オレは全身が熱くなっている三好を背負いながら白い服の何かの侵攻方向とは逆の方向へとひたすらに歩みを進めていると、途中で目を覚ましたのか三好が「あれ……私いつのまに……」と耳元で小さく呟く。
「お、お目覚めか三好。 そのまま寝てろ」
「でも……確か私ら道に迷って……それでなんか白い服のお化けみたいなの見つけて隠れてて……」
熱のせいもあるのだろう。
頭が上手く働いていない三好の呂律はあまり良く回っておらず、所々で体内に溜まった熱を吐き出すように荒い呼吸を繰り返している。
「福田……大丈夫? 疲れて……ない?」
「あんま喋んな」
「でも福田……ずっと私をおんぶして歩いてるんでしょ? 自分で……歩くから、下ろして」
「黙れ却下だ。 オレはそこまで鬼畜じゃねーよ」
あれだな、熱が出て弱っているときほど精神的に弱くなる人多いよな。 それからも三好は「ごめん」やら「福田に迷惑かけたくない」やらブツブツと力なく口にしてはいたがオレはそれを無視。
しかしオレの体力にも限界がある……オレは再び休憩をとるために道を外れて茂みに入ると体を隠すのには十分な大きな太い木を発見。 そこでゆっくりと三好を下ろし、オレは三好の隣で腰掛けることにした。
「ほんとごめん、福田……。 私のわがままでこんな変な状況に巻き込んじゃって」
三好が弱々しく息を吐くようにオレを見上げながらオレの手を握る。
「だから謝んなって言ってんだろ。 それ以上言ったらスカート捲るぞ」
「ーー……いいよそれくらい」
「え、マジ? じゃあ失礼して……ってバカヤロウ!」
流石に体調の優れない……しかも女子にツッコミを入れるわけにもいかないのでオレは三好の頭をワシャワシャと撫でる。
「ふく……だ?」
「その言葉忘れんなよ? お前が元気になったらオレの満足いくまでスカートを捲ってパンツを見せてもらう」
「今は?」
「オレは弱ってる女の子に無理やり強要させるのは漫画だけで間に合ってんだよ。 あとオレは恥ずかしがってる三好のスカートを捲りたい」
「ふふ……変態」
風もなく夏虫も鳴いていない無音の世界。
そしてかなりの時間移動したのにも関わらずあまり変わり映えしない景色。
これは歩き続ける以外の方法も考えないとなーと上を見ながら考えていると、三好がオレに寄りかかりながら「ねぇ……福田?」と囁いてくる。
「ん、次はなんだ?」
「私らさ、ちゃんと帰れるのかな」
「は? 何言ってんだ、当たり前だろ」
「でもさ、全然着かないじゃない? もし……なんだけど、このまま戻れないでここにいなきゃいけなくなったら福田……どうする?」
「いやいや、何縁起でもないことを」
「もしもの話。 どうする? 私ら……ここで死ぬのかな」
三好は真剣な表情でこちらを見ている。
どう返せば三好を安心させられるだろうか。
「ねぇ福田……聞いてる?」
「んー、そうだなー。 流石に死ぬことはないだろ。 もし仮にそうなったとしてもオレは生きるしお前も死なせないぞ? その気になれば火を起こしたりとか出来るだろ。 食べ物も木の実とか探して生活するさ」
「私も……?」
「当たり前だ。 お前が死んだらオレが1人で寂しいだろうが。 もうほとんど夫婦のようになるんだからついてきてもらうぞ」
「夫婦……へへ、いいかも」
「いやそこツッコめよ」
束の間のいつものような平穏な時間。
オレも三好も一瞬ではあるがここが不気味な空間だということを忘れてしばし談笑。
三好も話に花が咲き気が紛れているのか先ほどよりも顔色が幾分かマシになっていたのだが……
「いやいやそこはオレがリードするだろ。 なんで三好に任せないといけないんだよ」
「えー、だって福田ってたまーに抜けてるじゃん? だから、私がお嫁さんとして引っ張っていくの」
「それオレダサすぎないか?」
「いいのダサくて。 その分私のありがたさが分かるでしょー?」
「なんでやねん」
「あははは」
『ミツ……ケタ』
「「!!!!!」」
いつの間に……いや、オレたちが会話に集中していて気がつかなかったのか?
オレたちの目の前には先ほど逆方向へ進んでいたはずの茶色肌で白い服の女の姿。 相変わらず肘下・上半身を左右に不気味に揺らしている。
そのときに顔を見上げてみたのだが……なんだ? こいつ木彫りのお面みたいなのを被っていて奥の素顔が分からない。
まぁそんなことよりも……
「やっべ……! おい三好、逃げるぞ……!」
オレはそう叫びながら三好の腕を引っ張る。
しかしどうしてだろう……三好はその手を振り払うとフラフラと立ち上がりながらオレに視線を向けた。
「ーー……三好?」
「福田……いきなりだけどさ、お願いがあるの」
「お願い……なんだ?」
「佳奈って呼んで」
え。
意味がわからず三好を見つめるも、三好の表情からは冗談っぽさが見受けられない。
「え、なんで急に……そんなことより早く」
「今じゃなきゃダメ」
一体なんだってんだ。
「ーー……か、佳奈」
早くこの場から移動したいオレは三好の要望通り「佳奈」と口にする。
すると三好はどこか満足そうにニコリと微笑んだ。
「うん、ありがと」
「とりあえずじゃあ逃げるぞ」と三好の腕を改めて掴もうとするも三好はそれを拒否。
小さく首を横に振ると白い服の何かからオレを守るかのように……オレに背を向ける形でゆっくりと移動する。
「み、三好?」
「さっき言ったじゃん。 福田は抜けてるからお嫁さんの私が引っ張ってくって」
「え」
「今一番足手まといの私が囮になるから……福田は逃げて」
「は……はあああ?」
オレの答えも待たずに三好はそのままフラフラと白い服の奴の方へ。
もしこれがあまり関わりのない隣町出身のモブ子とかだったら「よし、じゃあすまんが頼んだ!」とか言って一旦退散した後に反撃の策を練っていたと思うのだが……
ーー……うん、三好はダメだよなぁ。
三好を囮にするくらいなら体力気力ともに優れているオレが囮に……いや、防壁になるべきだ。
オレはすぐさま立ち上がると、地面を力強く蹴り飛ばして三好よりも先に白い奴の方へ。
「ふ、福田? なんで……」と呟いている三好を尻目に白い服の奴の腰あたりに飛びかかると、そのまま勢いに任せて一気に押し倒した。
その際に何かフニっとした感触が手に伝わってきたのだが……え、このお化け、男なのだろうか。
なら話は早い!!
触れられるイコール弱点のボール的なものを探し当てられればオレの勝利だ!!
すぐに泣かせてやるから待ってろよ。
オレは素早い動きで白い着物の下に手を突っ込むと、あの慣れ親しんだ最大の秘技をお見舞いすることに。
幽霊が履いてるのかどうなのかは謎なところだが、もし履いていないのだとしたらそのまま握って悶絶させてやる!!!
「くらえ……パンツ・ロック!!!!!!」
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