469 【三好編】ピンチからのピンチ!
四百六十九話 【三好編】ピンチからのピンチ!
一向に人の気配のない謎と、夏だというのにまったく暑さを感じられないこの気温。 そしてそろそろスタート地点に戻ってもいい頃合いなのに永遠と続く一本道。
流石に背負っている相手が女の子とはいえ、結構な時間走ったんだ。 息の上がったオレは途中で三好を下ろして休憩をとることに。
もしかしたらここなら……と思いスマートフォンを起動させてみたのだが、やはり2人のスマートフォンに表示されていた電波信号は【圏外】を主張していた。
◆◇◆◇
「くっそ、どうなってんだよこれ」
オレは息を整わせつつも全く理解の追いつかない現実を前にワシャワシャと髪を掻き乱す。
そしてそんなオレを心配してなのか、三好が「福田……大丈夫?」とゆっくりとオレの顔を覗き込んできた。
「あーまぁうん、まだ正気だ。 すまんな取り乱しそうになっちまって」
「私ら……迷子なんだよね」
「そんな可愛い状況ならありがたいんだけどなぁ。 三好も変だと思わないか? 結構走ったのにずっとこの一本道だ」
「うん。 でも分け道とかなかったね。 本当ならもう戻れててもいい頃なのに」
「本当にな。 とりあえずもうちょっと時間をくれ。 あと少ししたら流石にもう走りはしないけど、ゆっくりまた元来た道を戻るぞ」
「分かった」
まるで別世界に迷い込んだみたいだぜ。
オレは若干体力が回復したのでゆっくりと立ち上がると、目の前でしゃがみ込んだままオレを見上げている三好のおでこに手を当てる。
「ふぇ!? 福田!?」
「ーー……ちょっと熱いな。 まだ頑張れそうか?」
「あ……うん、大丈夫。 ありがと」
それからオレは再び三好を背負おうと三好に背を向ける。
すると一体どうしたのだろう……一向に三好が乗ってくる気配がない。
気分でも悪くなったのか?
振り返ってみると三好はその場で立ちつくしたまま、何やら元来た道の方に顔を向けて目を凝らしている。
「どうした三好」と声をかけたオレだったのだが、三好から返ってきた言葉は衝撃的なものとなっていた。
「ねぇ……福田」
「ん? なんだ? ホテルでも見えたか?」
「あれ……なんだと思う?」
「ーー……あれ?」
三好がその方向をゆっくりと指差す。
オレも視線を合わせて目を凝らしていると、なんだ……? 何やら白い何かがこちらに向かって近づいてきているような。
「あ、福田。 もしかして先生じゃない?」
「いや、それにしては全身の服が白すぎるだろ。 それになんか動きが変じゃね?」
「ーー……確かに」
オレたちのもとへと近づいてきている何か……それはまだ距離がありはっきりとは見えてはいないのだが、全身を覆うほどの着物だろうか……白い衣服を身にまとっている。 肌は茶色で、髪の毛は黒の長髪なのだがちゃんと手入れをしていないのかかなりのボサボサ具合だ。
それでいて腕はカカシのように肩からまっすぐ上げられていて肘から下は力が入っていないのか、まるでUFOキャッチャーのような体勢のまま左右に不気味に揺れているのだ。
「じゃあさ、先生じゃないんだとしたらもしかしてあれ……幽霊とか?」
「ば、ばか三好! 変なこと言ってんじゃねえよ!!」
三好の幽霊ではないかという言葉。 その瞬間オレの脳内ではあのクヒヒ野郎ではないか?という疑惑が浮かび上がったのだが、アイツはあそこまで不気味な体勢をとってはいなかったもんな。 それに髪もあんなに汚くはなかったはずだ。
となればあれは一体なんなんだ……?
謎は深まるばかりだが、このままジッとしていても得体の知れない何かに距離を詰められていくだけ。
オレは「行くぞ」と半ば強引に三好の手を引くと静かに道の隣に生い茂る茂みの方へ。 少し奥へと進んだ先の茂みに身を潜めると、「あれが何者か分からない以上、何があっても声を出すなよ」と三好に耳打ちしたのであった。
「でもさ福田、本当にあれが先生だったらどうする? 私たちを驚かすために歩き回ってるんだとしたら……」
「んなわけあるか。 あんな生徒もいない場所でもガチな先生がいたら確実に子供にトラウマ植え付けて……他の教師や親からも総叩きで辞めさせられるレベルだわ。 とりあえず近づいてきたら何も喋るな」
「ーー……うん」
こうしてオレは三好と隣でうつぶせになりながら茂みの隙間から白い何かを観察。
なんだかんだで三好の『先生かも』という予想に僅かな希望を抱きながら正体を確かめようとしたのだが、それは奴がちょうど目の前を通り過ぎた時だった。
「「!!!!!!」」
クツを……履いていない。
オレたちの視線からは茂みのせいもあって見えるのは奴の脚の部分のみ。
それは薄茶色く不気味なほどに細い足で、地面をズリズリと擦りながら前方へと移動している。
これはもうあれだ……幽霊か人かまでは分からないが、関わっていい相手ではない。
オレは静かに三好に顔を向けると三好もちょうどオレを見ている。 オレたちは静かに頷きあい、目の前をその白い服の何かが通り過ぎるのを待つことに。
しかしやはり人生そう上手くはいかないよな……そいつは突然ピタリと動きを止め、足をジャリジャリと擦りながらクルクルと周囲を見渡し始めたのだ。
そしてオレたちの耳にはもちろん奴の声が入ってくるわけで……
『コノアタ……リ……ンブブブブブブ』
「「!?!?!?」」
突然ガタガタと震え始める何か。
オレと三好の間に一気に緊張感が高まる。
一瞬人の言葉かと思えば謎の奇声。
そしてやはり人ではないからなのだろうか……『コノアタリ』なんて……なんでオレたちの存在をキャッチできるんだろうなぁ。
とはいえオレたちもそう簡単に見つかるわけにはいかないので気配を消すことに神経を集中。
クヒヒ野郎のおかげと言いたくはないのだが、若干ではあるが耐性の出来ているオレは静かに三好の背中に手を回して安心させてあげることに。
その甲斐あってか三好は終始無言……静かに目を瞑っており、奴がどこかへ消えていくまでなんとか無事に耐え切ったのであった。
後ろ姿を見た感じだけど……あれ、約3メートルくらいの身長あるんじゃねーか?
「ーー……もう、いないよな?」
一応こういう場合のお約束として真後ろにいました的なフラグを潰すためにオレは周囲を見渡すことに。
うん……もう誰もいない。
オレは早くこの場から……あの白い服の何かが進んでいった方向とは逆へと逃げるために三好に「よし、行くぞ三好」と声をかけたのだが……
「ーー……」
「ん、どうした三好。 もう大丈夫だぞ」
「ーー……」
返事がない。
しかしながら大きな声で話しかけると先を進んでいったアイツに気づかれる可能性があったため静かに三好の体を揺らすことに。
そこで気づく。
「三好お前……マジか」
三好の体がかなり熱い。
そう……完全に熱がぶり返してしまっていたのだ。
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