468 【三好編】怪奇とフラグ回収
四百六十八話 【三好編】怪奇とフラグ回収
山グループ限定のシークレットイベント・【肝試し】に三好とともに参加することになったオレ。
チャレンジは5分おきに出発というルールで道中に教師が隠れて見張っていることから迷う心配等はないとのこと。
順番はくじ引きで代表者の三好が「こういうのは先手を取った方が良い封筒見つけやすそうじゃん!」と意気込みながら1番目を狙っていたのだが……
「おい三好。 数分前の言葉はどうした」
「ごめん」
なんということだろう。
オレと三好の順番はまさかの最終ペア。 もしかすると全ての特別待遇の封筒を取られてしまうという状況に陥っていたのだった。
なのでオレは「こんなの負けレースだしやめるか?」と提案してみることにする。
「やだ!」
「なんで」
「それでも見つかるかもしんないじゃん! それに夜ご飯の時も言ったけど、私まだここで何も楽しめてないもん!」
「うん、それはオレもだけどな」
実際オレも日中ずっと三好の部屋にいたわけだし。
「そんなに行きたいのか」と尋ねると三好はオレを見上げながら大きく頷く。
「行きたい!! 福田はあれじゃん、いたくて私の部屋にいたんでしょ!?」
「まぁそれは確かにそうだ。 多分他のどこ行ったとしても三好と話してた方がオレは楽しいからな」
「ーー……!」
「なんだよ」
「な、なんでもない。 その……気を遣ってくれてありがと」
「おいおい、いきなりしおらしくなるのやめろ」
結果三好の意思は揺らぐことなく参加が決定。
早速イベントスタートとなり各2ペア・3人グループが出発していくのをオレたちは後ろから小声で会話しながら見送っていく。
そして大体30分くらい経ったころだろうか。 ようやくオレたちの番となり満を持して最終ペアのオレたちが出発。
オレはなんだかんだで恐怖心があったので三好にくっつくように歩みを進めていると……なんだろう。 三好が後ろの方を気にしているように振り返っているではないか。
「ど、どうした三好。 後ろに何かいたとか言うなよ? てかまだスタートして10メートルくらいだぞ」
「うん。 いやさ、さっき出発するときに聞こえた先生たちの会話が気になっちゃって」
三好が首を傾げながら「気のせいかな」と小さく呟く。
「おいおいなんだよ気になるじゃねーか。 なんて言ってたんだ?」
「あ、うん。 まぁ本当に私の聞き間違いだとは思うんだけど、参加者リストを見ながら『こんな名前の生徒いましたっけ、誰か知ってます?』って」
ーー……マジ?
「ちなみにどんな名前か言ってたか?」
「うーん、2人くらいの名前を言ってたんだけど……なんだったかな。 私が聞こえたのはナノヤマ……みたいな名前」
知らんな。 もしこれが実在しない参加者だとしたら……ゾワワ。
た、多分あれだ、隣町出身で影が薄い奴らがいるんだよそうだよ!!!
◆◇◆◇
三好から意味深な……というか普通に恐怖する話を聞いたオレはそれからというもの些細な音にも反応するように。
カサカサ……
「ちょああああああああ!!!! 三好!! あっち……あっちの茂みから音したぞ!!!!」
「ちょっと福田ビビりすぎだって。 虫かなんかでしょ」
ササササッ……
「うぉあああああああああ!!! なんか後ろから冷気がああああああああ!!!!」
「ただの風だよ。 てか福田、ちょっとうるさい!」
オレは三好の腕にしがみつくようにしながら周囲を警戒するように見渡す。
「てか三好、ちょっと熱くないか?」
「そ、そう?」
「もしかしてお前……まさか熱がぶり返して……」
「ち、違うし! ただ単に福田がくっついてきてるから暑苦しいだけだし!」
「お、おお……それはすまん。 しかし許せ」
そんなワチャワチャを繰り広げながら歩みを進めるオレたち。
まぁこれも半分は作戦のうちなんだがな。 幽霊視点から考えて、ここまでワザとらしく盛り上がってたら『こいつ怖がってないっぽいし驚かすのやめとくかー』ってなりそうだろ?
だからこそオレは普通に怖いものをオーバーリアクションで反応……逆に周囲の音をかき消すほどの勢いでゴールまで保たせようとしていたのだが……
「てかさ福田」
突然三好が話しかけてくる。
「な、なんだよ」
「私ら結構歩いたよね」
「うんそうだな。 かれこれ30分は……」
「でもなんで途中の見張りの先生も見当たらないし、少し先に出発した他の子たちも見てないんだろ」
「ーー……え」
「そう言われてみれば」とオレは三好の手を握りながら固まる。
「ん、福田?」
「た、確かにそうだよな。 オレたちが進んでた道は普通に一直線。 舗装された道の上をただただ歩いていただけだ、迷うはずがない。 それなのに周りには誰もいないし叫び声も聞こえない」
「そうだね」
「おいおい……なんかイヤな予感がしてきたぞ!!!!」
オレは震える手に鞭を入れながらスマートフォンをポケットから取り出して電源をつける。
そしてすぐさまここの電波状況を確認してみたのだが……
「圏外……だと?」
「えっ?」
すぐさま三好も自身のスマートフォンを確認。
しかしどうだろう……画面を覗き込んでみるも、機種の違う三好のスマートフォンも圏外と表示されているではないか。
まさに圧倒的☆お約束展開……!!!
「どどど、どうする三好!! これやべーぞ!!!」
「でもさ、山って電波があんま届かないもんじゃないの?」
「いやいやいや!! でも先生はさっき中継役の先生とかとスマホで連絡取り合ってたじゃん! だから電波がないってことはないんだって!!」
オレの説明を聞いて三好も「確かに……」と呟く。
「え、ちょっと待って福田。 てことは私ら今どういう状況なわけ?」
「し、ししし知るかよ!! とりあえずあれだ、このまま進んでも危険かもしれないから……一旦戻るぞ!!」
「う、うん!」
事の重大さを少しは理解したのか三好の顔にも僅かながら焦りの色が。
オレは三好の手を引き体の向きを変えると「ほら、乗れ」と地面に足をついて背中を差し出す。
「え?」
「いや早くしろって、おんぶだよ」
「なんで!?」
三好が先ほどよりも頬を赤らませながらオレから1歩距離をとる。
「んなもん決まってんだろ、お前騙せてるとでも思ってたのか? 熱ちょっとぶり返してんだろーが。 無理させられねーわ」
「ーー……気づいてたんだ」
「まぁな。 でもお前も楽しみにしてたようだから気づかないフリしてたんだけど、今は状況が違う。 とりあえずオレの背中に乗れ。 走るぞ!」
「わ、わかった。 ありがと」
「うっし!!!」
こうしてオレは三好を背負いながらもと来た道を全速力で戻ることに。
そしてその途中で気づく……そう、夏休み前というこの暑い時期におんぶしながら全力で走っているのにも関わらず、全然暑くないのだ。
なんというか変にひんやりしているというか……。
それに所々で街灯は立っているのだが、改めて見上げてみると光に虫がたかっていない。 というより虫がいない。
「ふ、福田。 私ら大丈夫……だよね」
「当たり前だろ! もしかしたらオレたち2人が気づいてなかっただけで2手に分かれた道があったのかもしれない。 とりあえずそこを探すぞ!! 三好も見つけたら教えてくれ!!」
「う、うん!」
その後約10分ほど走りに走ったオレ。
しかしオレも三好も迷ったであろう道を見つけるどころか、ただ1本道をひたすら走っているだけ……スタート地点・ホテル裏庭エリアに着いてもいい頃なのにも関わらず、永遠と似たような景色・道が続いていたのだった。
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◆第465『目的地』にて挿絵なんとか描いて入れたのでよろしければ覗いてやってください♪




