466 【三好編】お願い!!
四百六十六話 【三好編】お願い!!
山グループのオレたちが到着した場所は以前……5年生の秋頃に宿泊学習で来た山。 あれだ、神様……与田美香と初遭遇したところだ。
そして今回もオレたちは引率の教師から宿泊するホテル部屋の割り当て表を渡され、各自荷物を置きに向かったのだった。
◆◇◆◇
よし、なんとか同じ部屋にヤンキーっぽいやつはいないようだな。
オレはそんなモブ男たちの顔を見て一安心。
その後集合場所であるロビーに向かい引率教師の話を聞くと、「それではこれより夕食の時間までは自由時間となります。 施設内にあるプールや庭園噴水での水遊び、昆虫採集等、迷惑にならない範囲で遊んでくださーい!」とのことで、山グループ生徒たちは一斉に各方面へと散らばっていったのだが……
「ーー……ていうか、三好はどこだ?」
再度ここに集合してから見渡していたんだが三好の姿が見当たらない。
あんな最高のポニーテールの持ち主を見過ごすわけがない……不思議に思ったオレは引率教師に三好のことを尋ねてみることにした。
「あ、あのー先生、ちょっといいですか?」
「どうしました?」
「なんか……気のせいだったら本人に申し訳ないんですけど、三好さんさっきいましたっけ?」
「あー、三好さんね。 三好さんならちょっと体調悪そうだから部屋で休んでますよ」
「え」
やはり今朝のオレの感じた違和感は的中していたらしい。
あれから三好も自分の体に異変を感じたのか教師に相談……とりあえず体温を計ってみようとなり、結果37・3度。 僅かではあるが熱があるとのことだった。
◆◇◆◇
「えーと……ここか」
そこは女子宿泊エリアの序盤の部屋。
部屋の入ると……やはりここも男子宿泊部屋と同じ作りだよな当たり前か。
扉を開けると左右に二段ベッドが置かれており、三好はその左下のベッドで横になっていた。
「あれ、福田? どうして?」
オレの存在に気づいた三好が首だけを上げて声をかけてくる。
「心配したからに決まってんだろ。 てかやっぱり熱あったんじゃねーかよ」
オレは途中自販機で買ったスポーツ飲料を「ほらよ」と渡して向かいのベッドに腰掛ける。 そして三好は「あ、ありがと」と熱なのか照れてるからなのかは分からないが、顔を僅かに赤らめながら上体を起こし、ペットボトルのフタに手をかけた。
「んっ……、あれ? んんーーっ!」
「おいおいキャップ外す力もないのかよ。 てか先に開けておくべきだったな。 すまんそこまで気が回ってなかった」
オレは三好が「なんで福田が謝ってんのさ」という言葉をスルーしながらもペットボトルを受け取りキャップを開けて再び渡す。
「ーー……ありがと」
「先生はなんて言ってた?」
「とりあえず熱以外はないっぽいから安静にしときなさいって」
「なるほどな」
てことはオレもここにいてもいいというわけだ。
最高なことに冷房もいい感じに効いていることだしな。
「福田」
「なに」
「これ……ありがと。 美味しい」
「そりゃーよかったぜ」
それから数分が経っただろうか。
オレは部屋から出ずにボーッと佇んでいると三好が「え、ていうか福田、出ていかないの?」と尋ねてくる。
「なんでだ?」
「だって今日は自由行動なんでしょ? プールとか色々楽しそうなのあるっぽいのに」
はぁ……まったくこいつは。
オレは弄っていたスマートフォンをポケットに入れると、三好にまっすぐ体を向ける。
「三好はオレがここにいたら邪魔か?」
「え、それは別に邪魔とかじゃ……ないけど。 でもせっかく好きな時間過ごせるのにいいの? ここにいても風邪うつるかもくらいだよ?」
「邪魔じゃないならいいだろ。 オレはインドアなんだよ」
「プールは屋内にあるんじゃなかった?」
「あのな三好、いくら屋内にあったとしてもだ。 誰と遊べと」
オレがそう無表情で問いかけると三好は何かを察したのか「あ、そっか」と小さく呟く。
「ん、なんだ?」
「そうだよね、福田……友達少ないもんね」
「うるせー! オレは狭く深くがモットーなんだよ。 それにそのプールで遊ぶのもレンタル水着なんだろ? モブのレンタル水着姿には興味ねぇ」
「モブって……。 んじゃ私は?」
「は? お前がモブなわけないだろ。 三好がモブだったら大半がゴミだぞ」
「ゴミ……ふふふ」
「え、なんで笑ってんだ?」
「なんでもないよもう!!」
三好はオレに向かって枕を投げるとニヒヒと微笑む。
ちなみにオレはそんな三好に投げられた枕を器用にキャッチ。 その際自然を装い枕に鼻を押し付けて一気に息を吸い込んでみることに。
すーーーん。
ウェエエエエイ!!!!! 三好の香りがもうついてるじゃねーか!!!
リンスの香りの混ざったJSの香り……最高だねええええええ!!!!
オレは瞬時に後ろにあった未使用の枕を手に取るとそれを三好に渡す。
「ほら。 あんまオテンバすんな、寝とけ」
「はーい」
それからは特にやることもなく無言の時間が過ぎていたのだが……
「あ、いいこと思いついた」
オレがそうポツリと呟くと、三好もまだ起きていたようで「どうしたの?」とオレに顔を向けてくる。
「あのさ、多田たちはみんな海に行ったんだよな」
「うん」
「てことは今頃水着……だよな」
「そうなるね」
「三好、お願いがある」
オレは向かいのベッドから素早い動きで三好の枕元まで移動。
「な、なに!?」と驚いている三好の耳元でこう頼んでみたのだった。
「水着の写真を送ってと頼んでくれ」
「は? なんで?」
三好が目を大きく瞬きしながらオレを見てくる。
「だってさ、オレがそれと同じ内容送っても『変態』とか『きもー』くらいの返信しか来なさそうだろ?」
「うん。 実際キモいし」
「でもな、同性で友達の三好が頼めば何の疑いもなく……もしかしたら最っ高にギリギリの写真とかも送ってくれそうじゃないか?」
そう……これこそまさに天才の発想!!!
女性が異性……男性に写真を送る際はおそらく自分の写りの良い1枚を選ぶだろう……だがしかし!! 同性の女性に送る場合は別だ!! 相手が同性ならば話のネタになるような少しエロめの写真も送るに違いない……いや、絶対に送る!!!
もちろんこのオレの脳内イメージは三好には語らず。
なので三好もはじめこそ「えー」と渋ってはいたものの、「一緒に楽しさ共有しようぜ」と粘りお願いした結果なんとか承諾してくれたのだった。
「とりあえずじゃあ……仕方ないなぁ。 届いたら教えてあげるよ」
「ナイス! それでついでに文章もオレに考えさせてくれ」
「えー」
「お願い!!!」
「ーー……まぁ良いけど」
こうしてオレは三好にオレ監修のメールを送ってもらうことに。
【送信・麻由香】そっちどうー?
「ーー……え、これだけでいいの?」
オレの指示した文章を送った三好が不思議そうにオレに尋ねてくる。
「うむ、これでいい」
「写真ちょうだいとか言ってないよ?」
「構わん。 本当に楽しんでるなら返信で『楽しいよー』だけなわけがないだろ。 絶対に『こんな感じで楽しいよ』ってノリで写真を添付してくるはずだ」
「うわぁ……頭使う変態だ」
「変態上等!」
それから少しして三好はようやく眠りにつき、夕飯の時間くらいだろうか。
体温を測りに来た教師の声で目覚めた三好はどことなく数時間前よりはスッキリしたような表情になっていたのだった。
「うん、熱は37度。 ちょっと下がったね」
「はい、来た時よりだいぶ楽になりました」
「夜ご飯はどう? 食べれそう?」
「はい! お腹空いてます!!」
「そっか。 夕飯は18時半から一階のレストランルームだから、食べれそうなら降りておいで」
うむ、よかったよかった。
ただ先ほど教師が夕食の時間を伝えた際、オレにも視線を向けていたことからオレに三好をサポートしろって意味だよな。
まぁ言われなくてもやるけどよー。
「あ、福田。 麻由香からメール来てるよ」
オレが担任の出て行った扉に視線を向けているとスマートフォンをチェックしていた三好が通知画面を見せながら手招きしている。
「お! なんて!?」
「ちょい待ってね、今開くから」
【受信・麻由香】めっちゃ楽しいよー!!! 宿に戻ったらみんなの写真送るねーー!!
イェス!!! イェス!!!
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