463 【共通・特別編】優香と美咲と
四百六十三話 【共通・特別編】優香と美咲と
それはダイキも6年生生活に慣れ始めた初夏。
この日、ダイキの姉・優香は親友でもある星美咲とともにとある遊楽施設へと足を運んでいた。
「いやー今日授業が午前だけとか最高!! 制服テーマパークはJKの特権だよねぇーー!!!」
そう、ここは実の弟ダイキと姉妹の契りを交わした結城桜子、そして隣にいる星美咲とともに以前訪れたことがある遊園地。
美咲が入場ゲート付近で大きく息を吸い込む。
「ちょっと美咲、なんで田舎とか緑の……自然のないとこで深呼吸してるの?」
「そんなの決まってんじゃん、ここに満ち溢れてる楽しい空気を吸い込んでんのよ」
「楽しい空気?」
「そそ、ほら、あっちの方からはジェットコースターの絶叫聞こえるっしょ?」
「うん」
「そういうのを取り込んで、こうして楽しむモードを更に高めてるわけさ!」
「うーん、分かるような分からなような」
そんな中身のない会話のラリーを楽しみながらチケット売り場で入場チケットを購入しゲートに入る優香と美咲。
平日ということもあり以前来た時よりも客の足はまばらで、優香がどういう順でアトラクションを回るかパンフレットを開いて確認しようとしていたところ、突然美咲が手首を掴んできた。
「どうしたの美咲」
「もー、ゆーちゃん今どうやって回ろっかなーとか考えてたでしょ」
「うん」
優香が「そうだけどなんで?」と尋ねると美咲は「はぁ……」と深いため息をつきながら項垂れる。
「ええ!? なに? なんで美咲失望してるの」
「あのねぇゆーちゃん」
「?」
「こういうのは本能のままに行くのが正解なんだよ!」
美咲は優香からパンフレットを取り上げると「ちなみにどこ行きたいの?」と顔を近づけてくる。
「え? だからこそパンフレット見て近場から攻めようかと」
「ノンノン。 そんなの関係ないの! 場所とかは除外したとしたらどこ行きたい?」
「えっと……上に上がって回転するブランコかな」
優香が少し離れたところでクルクルと回っている回転空中ブランコを指差す。
「あーね、じゃあまずそれ行こうぜ!」
「でも遠いよ? 次に行きたいところが真反対の場所だったらどうするの?」
「ちょいちょい、それはちっちゃい子のいるママの考えだべ?」
「え?」
「アタシらJKで体力あるんだから、そんな移動時間とか体力とか考えたらダメなわけ! 一通り遊んで帰りにはクタクタになってるのが青春じゃん!!」
「いや、クタクタになったらそれはそれで明日が大変かなーって」
「ウジウジしてないでほら、行くよゆーちゃんっ!!!」
「ちょ、ちょっと美咲ぃーー」
こうして優香と美咲は美咲リードのもと遊園地満喫タイムをスタート。
しかし優香の心配も虚しく美咲は行きたいところを距離効率関係なく縦横無尽に駆け回り、ものの2時間ほどで2人ともヘトヘトになってしまったのだった。
「ちょ、ちょっとゆーちゃん、休憩しよーよ」
美咲が優香の肩に片手をつきながら「どこか良さげなとこあるかねー」とパンフレットの地図に目を通し始める。
「なに? 休憩できるところだったらあそこにレストランあるよ? ちょっとお茶にする?」
「ううん、次はちょっと落ち着いて楽しめる場所がいいかなーって」
「ーー……あ、そっちね」
「当たり前じゃん、アタシのJKスピリットはまだ枯れてはいない」
「いやいやそんな疲れた声で言われても説得力ないよ」
とは突っ込んでみたものの、優香も少しではあるが疲労を感じ始めていたのも事実。
美咲に「私もちょっと疲れたし、飲み物だけでも買ってあそこのベンチで休憩しない?」と提案し、なんとか承諾を得たのだった。
「おけ。 じゃあ休憩終わったらここ行くべ、ここ」
「ここ……え、お化け屋敷?」
優香が美咲の差した箇所を読み上げると、美咲はニヤリと微笑みながら「そそ!」と頷く。
「えええ、早くない!? それにさっき美咲落ち着いて楽しめる場所探してたんじゃないの!?」
「なーに言ってんのゆーちゃん! お化け屋敷は暗いし静かだから落ち着けるでしょーよ!」
「はぁ……まぁいいけどね」
◆◇◆◇
ベンチでしばらくの休憩をとった後、優香と美咲が向かったのは先ほど決めたお化け屋敷。
中に入り暗い通路を歩いていると、何を思ったのか急に美咲が「そういえばさー」と話しかけてきた。
「なに?」
「前にもさ、アタシらここきたじゃない?」
「そうだね。 私たちの他にダイキと桜子もいたよね」
「でさ、なんか思い出したんだけど、ここ入ってからダイキめちゃめちゃ何かに怯えてなかった?」
「そうだったっけ」
「そうだったよ。 ほら、最後の方とか絶叫して一人で走ってったじゃん」
「あーー、そうだったかも」
美咲の話を聞いて優香も少しずつ当時のことを思い出していく。
「そういえばあれからずっと私にくっついてたもんね」
「てことはさ、ダイキ何か見たんじゃない?」
「何を?」
「幽霊だべ幽霊」
「「ーー……」」
一瞬の沈黙。
その後急に以前ここで体験した不思議な出来事が2人の中で蘇ってくる。
「そういやお化け屋敷っていってもさ、お触りとかは厳禁じゃん? でもアタシ、前ここで太もも誰かに舐められたような感触あったんだよね」
「えええ、そうなの!? でも確かに私もこのあたりで横腹突かれたかも」
2人の顔から血の気が引いていく。
「え、ま……まさかね。 お化け屋敷にモノホンの幽霊いるなんてそんなのドラマとかだけだよね」
「そ、そうだよ美咲。 な、何をそんなに本気にして……」
「うーらーめーしー」
「「きゃあああああああああああああ!!!!!」」
それからの道のりはまさに地獄。
突然飛び出してくるお化け役に優香と美咲は大絶叫で怖がりながら、まだ終わりの見えない道を進んでいく羽目になってしまったのだった。
そしてその終盤……事件は起こる。
「はぁ……はぁ……確かもうすぐ出口だったよね」
絶叫疲れで息を乱した優香が前回のことを思い出しながら美咲に尋ねる。
「そ、そうだったっけ?」
「うん、確かそのはず。 終わったらお手洗い行っていい? 私もう漏れそう」
「いいね。 ちなみにアタシは既にちょっと出ちゃったよ。 まぁ黒パンだから目立たないけど。 ゆーちゃん今日のパンツ何色?」
「水色」
「あー、ちょっとでも出たら染みて目立つね」
「うん」
2人はまるでラブラブカップルのように身を寄せ合いながら少しずつ歩みを進める。
すると少し先に出口なのであろう外の光が漏れていることを発見し、2人は互いに見つめ合い喜び合いながら「やったゴールじゃん!」「そうだね!」と、その光を目指したのだが……
『ーー……クヒヒ』
背後から突然の声。
「「ーー……」」
「美咲……今聞こえた?」
優香が視線だけを美咲に向けて尋ねると、美咲が小さく「うん」と頷く。
「ちなみにどこから聞こえた?」
「ーー……真後ろだべ」
「だよね。 で、でもこの通路って隠れられるところ何もないよね?」
「だ、だだだ、だべ。 それ以上になんで真後ろから……声が?」
ーー……いる。
そう直感で感じた2人は「は、早くここから出ようよ!」「だべ!」と高速で頷きあい、震える足に鞭を入れて出口へ向かって駆けぬけようとしたのだが……
『ユウ……カ……ヒメ。 ミサ……キ。 ヤット会……エ……』
「「!!!!!!!!!!」」
耳に入った声は確実に自分たちの名前。
「み、美咲。 今、私たちの名前……」
「う、うん。 確かに聞こえたべ。 もしかして……ロックオンされた?」
「ーー……どうしよう。 私もちょっと出ちゃったかも」
「アタシはもう止まらん」
「「ーー……」」
その後2人は今日1番の声で大絶叫を発しながら逃走。
お互いにパンツはもう使い物にならないということで近くのトイレ内のゴミ箱に廃棄し、先ほどの幽霊の恐怖を取り払うよう……半ばヤケになりながらノーパンでのアトラクションを楽しんだのであった。
「解放最高!! 幽霊知らねーー!! イェーーーイ!!!!!」
「ちょ、ちょっと美咲!! そんな足広げたら中見えちゃうよ!?」
「そんなの関係ねぇ!! 逆にそっちに気が散った方が怖さ紛れれるべ!! ほら、ゆーちゃんもセイ!? イェーーーーイ!!!」
「いぇ、いぇーーい」
お読みいただきましてありがとうございます!!
今回も個別ルート間の箸休め! やはり優香とギャルJK星のカップリングいいですねぇ!!
次話からの個別ルートは【三好編】を予定しております!
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