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462 【西園寺編】もうジンジン燃えている少女の心は止まらない【挿絵有】


 四百六十二話 【西園寺編】もうジンジン燃えている少女の心は止まらない



「んん……」



 いつの間にか気を失っていたようだ。

 オレは顔面の激しい痛みで目を覚ましたのだった。



 ◆◇◆◇



 どうやらここは保健室。 そうだ、オレは綾小路に洒落にならない一撃を食らって気を失ったんだっけ。

 とはいえ記憶に残っているのはオレに上段回し蹴りを当てにきている綾小路の姿。 結局あれからオレはあの攻撃を食らったのか……?


 分からないことだらけでムシャクシャしたオレはとりあえず体を起こす。

 廊下の方がやけに静かだと感じたオレは「もしかして授業中か?」と呟きながら壁に掛けられている時計を確かめようとしたのだがーー……



「!!!!!!!!」



 オレは視界に入ったものを見て思わず息を止める。

 その時計までの導線上……そこにはもう1つベッドが設置されているのだが、何がどうなってそうなったんだ……そこには鼻に赤く染まったティッシュを詰めらせたままニヤニヤと笑っている綾小路が横たわっていたのだった。



「ウへ……ウヘヘヘ、西園寺ぃー」



「う……うぉおおおおおおおお!?!?! 綾小路ぃいい!?!?」



 あまりにも狂気、あまりにも先ほどとのギャップ。

  

 オレがそんな綾小路を見て驚いていると、綾小路がオレに気づいたのか「あ、福田起きたんだ」と特に心配している様子もなく話しかけてくる。



「な、なんだよ。 起きたけどまたオレをボコボコにする気じゃないだろうな」


「そんなことしないって。 ただ西園寺から福田が起きたら連絡しろって言われてたからさ」


「西園寺から?」


「うん。 そうしないとアタシが殺されるから、ちょいメール打たせてね」



 それから綾小路は「西園寺、西園寺〜♪」と口ずさみながら何やらメールを送信。

 しばらくすると授業中だというのに廊下を勢いよく走っている足音が聞こえてくる。 その足音は徐々に近づいてきて保健室の前でピタリと停止。 勢いよく扉が開かれたのだった。



「福田くんっ!!!!!」



 ◆◇◆◇



 もちろん先ほど扉を開けた人物は西園寺。

 西園寺はオレの姿を見るなり飛びつき抱きしめながら「ありがとう、ごめんねありがとう」と号泣し始める。


 オレは何がなんだか分からずただただ照れていたのだが、隣からは殺気立った綾小路の視線。 これ以上続けられていては帰り道に確実に殺られると感じたオレは何か話題を振ることに。 

「どうして綾小路にオレが起きたら連絡してって頼んだんだ?」と尋ねることにした。



「そんなの当たり前じゃない! 止めようとしてくれる福田くんにあんな暴力振るって……もう万死に値するよ!!」



 西園寺が綾小路に「次したら本当に殺すからね!」とオレを庇うように抱きしめながらキッと睨みつける。

 そして対する綾小路はというと……うん、睨みつけられているというのに何故か嬉しそうな表情。 「そんなに見られたら照れちゃうよ」と体をクネクネとくねらせていた。



「照れるな! 反省しろ!!!」


「まーまー、そう言うな西園寺。 綾小路は綾小路なりに頑張ってお前を守ろうとしてたんだぞ?」


「でも綾小路は福田くんを……!」


「それも愛故にだろ。 あいつはお前のことが本当に大好きだから、大好きな人がハメられて傷つけられて本当に悲しかったんだろ。 そこらへんは分かってやれよ?」


「ーー……うん」


「よし、分かればいいんだ」



 それからオレはオレが気を失っている間に何が起こったのかを西園寺・綾小路から聞くことに。


 どうやら綾小路の最後の一撃・上段回し蹴りは結城が直前に綾小路の前に立ちはだかったことにより攻撃はストップ。 そしてそれを見計らったようにエマや三好・小畑や多田が綾小路の四肢を押さえ込み、マドンナ水島の号令で花江ちゃん大好き協会のメンバーも補助に回ったことで事なきを得たとの事だった。


 その後しばらくして西園寺が登校……西園寺がオレはボコボコにされ倒れていたり綾小路が抑え込まれている事態に脳が追いつかず。

 綾小路が「西園寺ー!!!」と駆け寄ってきたのだが、その拳にオレの血がついていたことから西園寺は犯人が綾小路だと確信……抱き合うわけもなく、素早いストレートをお見舞いした結果今のような現状になっているという内容だった。



「な、なんだか怒涛の展開だったんだな」



 それにしても結城や三好・多田・小畑・エマ・水島が助けてくれたのか。

 あのブチギレ綾小路の前に立ちはだかるのは普通に怖かったはずなのに……くぅう!!! 嬉しくて泣けてくるぜ!!!



 ちなみにその後いじめっ子AやCは職員室で改めて成瀬と西園寺に一件のことを謝罪。

 成瀬も西園寺も別に大ごとにはする気もないらしく穏便に済ませ、綾小路に溜められていたヘイトも西園寺組や花江ちゃん大好き協会・エマナイツ、そして新たに発足したMINAMI☆ファンクラブの働きかけによりなんとか解消。 ようやく待ちに待った平和な時間が再び戻ってきたのだった。



 ◆◇◆◇



「いやー、平和、最高だぜ」



 昼休み。 オレはすべての肩の荷が降りたことで完全に気を緩ませながら用を足し教室へと戻っていると、途中で綾小路が「あ、福田!!」と満面の笑みでオレに話しかけてくる。



「お、どうした?」


「サンキューな福田!! 福田が西園寺にアタシの功績を教えてくれたおかげで今度の土曜にデートしてくれることになったんだ!!」


「えー、そうなのか。 やったじゃん」


「へへ、これでアタシが一歩先。 負けないからねー!」


「え? あ、うん」



 なんか分からないけど綾小路も楽しそうで何よりだぜ。

 


「あ、そういえば福田、あれ……大丈夫だった?」



 話が終わったかと思い帰ろうとしていると、綾小路が若干視線を落としながら申し訳なさそうに尋ねてくる。



「あれ?」


「ほら、アタシ結構容赦なく蹴っちゃったじゃん? 福田の……ソレ」



 ソレ……あ、あぁ。 あれか。



「あー、まぁなんとかな」


「潰れたりしてなかった?」


「してねーよ。 気になるなら見せてやろうか?」


「イヤに決まってるじゃん気持ちわるい。 とりあえず無事でよかったよ。 んじゃね!」



 こうして綾小路は「そうだ、アタシもトイレトイレ」と女子トイレへ。

 なんか今の綾小路、前よりも少し丸くなったような……恋する乙女は性格もガラリと変えてしまうのか?

 そんなことを考えながら再び教室へと歩みを進めていると、次は後ろから「福田くんっ!」とオレを呼ぶ声が。 振り返ってみると、西園寺が小さく手を振りながら駆け寄ってきていた。



「おー、西園寺もトイレだったのか? さっき綾小路も行ってたぞ?」


「違うよ、図書室に本を返しに行ってただけ。 ていうかなんで綾小路の話だすの?」


「だって西園寺、今週の土曜に綾小路と一緒にデートするんだろ? あいつ喜びながらオレに報告してきたぞ」


「あ、あー……そうなんだ。 うん、行くよ。 私を守ろうとしてくれてたお礼に」


「そうか」


「うん」



 なんだ? 西園寺の様子がおかしい。

 何というか胸のあたりで左右の指を絡ませ合いながらオレを上目遣いで見てきているんですが……


 

 オレが頭上にはてなマークを浮かばせながら首を傾げていると、西園寺が「あの……ちょっといいかな」と話を切り出してきた。



「え、うん。 いいけど……なんだ?」


「そのさ……前に福田くんが私に提案してくれた話って今も有効なのかな」



 ーー……提案?



「そんなことしたっけ?」と呟きながら思い出そうとしていると、西園寺は「ほら、あの時だよ。 私が6組の子に手を出して落ち込んでる時、福田くん……言ってくれたじゃない」と当時オレが言ったであろう言葉を復唱しだす。



「気晴らしにどこか行かないか? 例えば西園寺……私が落ち着くところでも楽しめるところでも。 あ、前行った遊園地なんてどうだ?」



「あー、言ったわ」


「それって有効?」


「んー、まぁ有効っちゃあ有効だけど……なんだ? 行きたいところでも出来たのか?」



 そう尋ねると西園寺は小さく頷く。



「うん、できた。 私が落ち着いて楽しめるところ……」


「ほぉ、それは気になるな。 どこだ? あ、もしかして映画……」




「福田くんの……隣」




 え。



 これは……今何が起こっているというのだろうか。

 西園寺は頬を真っ赤に染め上げオレを見つめながらオレの指先をそっと包み込むように優しく握る。



「え、えーと……すまん西園寺、それはオレがアトラクションってことか?」


「ううん、違う。 私……福田くんの側にいたい。 福田くんの隣が一番落ち着けて、心から笑える。 楽しい。 数日間学校を休んで改めて気づいたの。 もう我慢できない、みんなの私への印象が良くなるまでなんて待ってられない。 私……福田くんといたい」



 な、なななななんなんだぁあああああああああ!?!?!?

 これってつまり……もしかしてそういうことなのかあぁ!?!?!?!?



 オレはテンパりながらも「お、おい西園寺、オレをからかうのも大概にしとけよ」と西園寺に視線を向けるも、西園寺の目はまっすぐオレを見ている。

 


「ーー……え、西園寺、マジ?」


「うん」


「それはつまり今のは……告白」


「ーー……うん」



 ブシュウウウウウウ!!!!!!!!!!!!



 か、かかか可愛すぎるんですけどおおおおおおおおおおお!!!!!!!!



 大事な場面だというのにオレの鼻からは大量の鼻血。

 オレは「ちょ、ちょっと待っててくれ!!!!」とポケットティッシュを鼻にねじ込み、何とか止血をした後で改めて窓の外を眺めていた西園寺に尋ねた。



「も、もう1度言うぞ、西園寺、今のは……」


「うん。 私……福田くんが好き」



 オレの目の前には夏の日差しに照らされながらもそれに負けないくらいに輝いている少女・西園寺の姿。

 こんなこと言われて恋に落ちない奴なんてどこにもいない。

 


 その日からオレの熱い青春……恋愛チキンなオレ努力の日々が幕を開けたのだった。



挿絵(By みてみん)



 (西園寺編・完)


お読みいただきましてありがとうございます!!

下の方に星マークがありますので評価していってもらえると励みになります嬉しいです!!

感想やブクマ・レビュー等、お待ちしております!!!


西園寺編終了ですーー!!!!

西園寺ルートもいい感じに幸せな未来になりましたね!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全部持っていったね……西園寺ちゃん。 さすがだぜ!! M属性の萌芽をみながら、純粋に落ち着くとはこれいかに!! 結城ちゃんも……がんばれ!! [気になる点] 乾坤一擲を受けたダイキのダメ…
[一言] …あぁ、素晴らしすぎる
[一言] これは罪ですねぇ……
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