459 【西園寺編】罠
四百五十九話 【西園寺編】罠
脅しの文章をオレの靴箱に入れた犯人の正体。
オレはその手紙を読みながら「おいおいトイレで話してるの聞かれてたのかよ、どうしよう……」などとブツブツ呟いて考え込んでいたのだが……
ーー……あ、そっか。 逆にこれ利用すればいいんじゃね?
ということでオレは早速行動を開始。
スマートフォンをおもむろに取り出し耳に当てると運動靴には履き替えずに図工室のトイレへ。
通話相手は江良と成瀬。 「あぁ、そうだ。 うん、だから緊急で話し合いが必要になったからいつもの男子トイレに来てくれ」と大きめの声で話しながら向かったのだった。
◆◇◆◇
「ーー……で、一体どうしたんだよ福田」
「何か……あったの?」
あれからしばらくして江良と成瀬が合流。
オレはちょっと小細工をした後にトイレ前で待っていたので3人揃って男子トイレ奥の個室へ。 中に入るとオレはすぐに指先を自身の唇に当てて「昼休みの会話を聞かれてた」と小声で話した。
「えっ!! それマジ!?」
「うるさい江良」
オレはすぐさま江良の口を押さえて顔を近づける。
「で、でもさ……」
「いいから黙れ」
成瀬も驚きを隠せない様子で手足が震えている……オレは早速急遽呼び出した理由を2人の耳元で伝えることにした。
「オレの靴箱にこれが入ってたんだ」
オレは【邪魔するようなら次はお前の番】と書かれた手紙を2人に見せる。
「まじ」
「え」
2人の視線が揃ってオレへと向けられる。
しかしオレは再度口元に指先を当てながら先ほどよりもより小さな声で囁いた。
「おそらくこれを書いた犯人はオレの反応を見るために近くにいたはず。 だからワザとそいつに聞こえるように堂々とここに来たんだ」
「なんで?」
「そりゃあ決まってるだろ、もちろん……」
オレはそこで言葉を止め、静かに扉に手を掛ける。
「福田?」
「福田くん?」
一瞬訪れた静寂の時間。 オレは小さく深呼吸すると、勢いよく扉を開いてそのまま隣の個室へ……扉こそ開いてはいたのだが、その扉と壁のわずかな隙間からスカートがはみ出ているのを発見した。
「はい見つけたあああああああああ!!!!!」
そう、そこにいたのは見た顔ではないことからおそらくは隣町出身の女子。
そしてこいつこそ第3のいじめっ子なのだろう。 だっていじめっ子2人は水島と一緒に保健室にいたわけなんだからな。
隣の個室に入ったオレは突然のことで驚き固まっている隣町女子をここから逃げられないよう、内側から扉を閉めた。
「ええええ!? 福田ぁ!? どうしたの!?」
先ほどまでオレがいた隣の個室から江良が声をかけてくる。
「ククク……あははははははは!!!! さすがオレだ!!! 早速あの手紙の犯人見つけたぜ!!!」
「ええええええええええ!?!?」
オレはそれから江良と成瀬に「とりあえず男子トイレから出て、何か異常事態があった場合にだけオレに知らせてくれ」と伝える。
そして2人の足音が男子トイレから出て行ったことを確認すると、オレは口角をグインと上げながら額から冷や汗を流している女子に改めて視線を向けた。
「な……なに? 私かくれんぼしてただけなんだけど」
そうは言っているものの女子の手にはスマートフォン。
「ちょっと見せろ」と無理やり奪い取るとやはりだ……音声録音モードになっているではないか。
「はい、これはなんだ?」
「え? スマホ……だけど」
「じゃなくて、なんでお前録音モードにしてたんだ?」
「そ……それは……」
オレはすぐに録音モードを停止。
しかし女子が素早い動きでスマートフォンを奪い返しそのまま逃げようとしたので、オレは懐かしの……あの必殺技を披露することにする。
必殺……パンツロック!!!!!!!
オレは扉を開け逃げようとしていた女子のスカートをめくり上げ、黒と白の水玉柄のパンツを勢いよく膝下までずり下げる。
「きゃ……きゃああああああああああああ!!!!!」
目の前には小6女子のプルプルヒップ。
しかしオレはそんなものには目もくれず、その先にある秘境に視線を向けながら足の自由を奪われた女子を力づくで扉とは反対側……便器の方へと無理やり移動し座らせた。
「ちょっ……なにして!!」
「とりあえずそのスマホよこせ」
隣町女子はかなり怯えているらしい。 その震える手からスマートフォンを取るのにはあまりに簡単で、オレはその場で他にも音声データがないかと探していたのだが……オレもスマートフォンに関しては詳しくはない。
なので一番手っ取り早い方法……端末データ初期化ボタンをタップした。
【初期中……】
【スマートフォンが出荷された状態になりました。 初めから設定してください】
イェス!!!
「はい、これ返すわ」
オレは電源を切った状態でそれを隣町女子に返すと隣町女子は再度奪われたりしないよう慌ててポケットに入れる。
スマートフォンも取り返したしこれで後は逃げるだけだと考えたのだろう……隣町女子はパンツを膝まで下げた状態のまま立ち上がると、オレを突き飛ばしてここから出ようと試みたのだが……
「残念ですねぇ、それはもうちょっと後ですねぇ」
オレは自身の胸元で突き飛ばそうとしてきた女子の手首を掴むと、それをオレの体に押し付けたままゆっくりと下へと下げていく。
「え、え?」
行き先はもちろんオレの動物園。
終点エリアへと到着すると、女子は声にもならない声で大きく叫んだ。
うわあああああ何これ……同じ人間の手なのに気持ち……EEEEEEEEEEEEE!!!!!!!
「こ、こらこらうるさいぞガール。 グヘヘへへ」
オレ快感で息を乱しながらももう片方の手で女子の口を塞ぐと耳元で卑しく囁く。
「お前……これが望みだったんだろう?」
「!?」
「書いてたじゃないか、あの手紙に。 邪魔したら今度はオレの番だって」
「な、なにを言って……」
「お前はあのいじめっ子2人の仲間だけど、成瀬はあの2人のことしか言っていない……つまりはお前が関与していることは知らなかった。 ということはあの2人が撮った成瀬の裸写真を別の場所で一緒に見て楽しんでたってことだよなぁ? ほら、オレのも見てくれよ。 こうして邪魔してるんだし」
「!!!!!!!!!!!」
さぁ、ショーの始まりだ。
オレは隣町女子の手で自身のズボンをずらしていき動物園を開園。
驚き恐怖し恥ずかしがる隣町女子に全力でショーを披露していると、とうとう心の折れた隣町女子が「ご……ごめん……なさい」と謝ってきたのだった。
「え、なんて?」
「ごめん……なさい、もう、許して……ください」
「無理だな、オレはまだ満足してない。 これから楽しいナデナデタイムが待ってるんだぞ?」
「そ、そんな……」
「ちなみにお前に拒否権は無い。 お前は気づいてなかったようだから教えてやるけどな、実はトイレに入ってすぐのところに録画モードにしたオレのスマホを忍ばせてあるんだよ。 だからお前がここに入ってきてるのも録画済み……これをみんなが知ったらどうするかなぁ!!!」
「!!!!!」
この作戦を思いついたは今朝の江良との会話のおかげだ。
『ってここ男子トイレじゃね!? なんで私がこんなところ……』
『シー。 誰か来たらバレるぞ……てかお前その時点で変態扱いになるから気をつけろ?』
あのやり取りがあったからこそ閃いた天才的作戦だったのだが、隣町女子は未だ信じきれていない様子。
なのでオレは一旦個室を出て隠していたスマートフォンを回収……その後この女子が入ってきているシーンを見せたのだった。
「あーほら、バッチリ映ってるな」
「そ……そんな」
「さぁ、これをみんなが見たらどう思うかナァ。 変態扱いされてずっとイジメられるかもナァ」
「や、やめて……やめて……ください」
「でもお前の友達2人は同じ方法で西園寺を脅したんだぞ? そりゃあやり返されても文句ないよなぁ」
「やら……やらせないのでお願いします……」
「消させるか?」
「は、はい」
「成瀬の恥ずかしい写真も全部?」
「はい……お母さん同士が仲いいので、2人のスマホから消してもらうよう頼みます」
結果オレの完全勝利。
それからオレはこの隣町女子に翌日の朝、仲間を1人ずつここに連れて来させることを条件に、オレの撮影した動画を誰にも晒さないことを約束したのであった。
「あ、先に言っとくぞ? オレのことを誰かにチクったり大人に言ったりしたら即ネットに公開するからな」
「ーー……わかりました」
「あとはまぁ……もうイジメんなよ」
「はい」
こうしてオレは爽快に男子トイレから立ち去ることに。
やべぇ……今のオレの去り際めっちゃカッコよくなかった? イケてたよな!!
しかしトイレから出てすぐに聞こえてきたのは近くで待機していた成瀬の「ーー……あれ」という声だった。
「え、どうしたの成瀬さん」
「なんか福田くんから金木犀の香りがするんだけど……」
「Oh」
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