458 【西園寺編】作戦会議!!
四百五十八話 【西園寺編】作戦会議!!
1階・図工室前のトイレ。
やはりそこは教室から離れたところにあるのか相変わらず人の気配はまるでなし。
先回りしたオレが一応念のために……と男子トイレ内に誰もいないことを確認して待っていると、少し遅れて江良がいじめられっ子とともにやって来たのだった。
「え……ここ、男子トイレじゃ……?」
いじめられっ子が動揺しながら江良に尋ねる。
「あー、そうだな」
「それに中……男子いるよ?」
「ちなみあれが福田ってやつな」
「福田……くん」
うーむ、姿形は違うけど、その身に纏っているオーラというか雰囲気が約1年前の結城にそっくりだぜ。
オレはそんないじめられっ子に少しでも安心してもらうよう、まるで初期の結城に話しかけるようなテンションで優しく声をかけたのだった。
「大丈夫、オレたちは君の味方だ。 ここに来てもらったのはちょっと色々と話をしたくてさ」
「話……」
こうしてオレは江良・いじめられっ子とともに男子トイレ奥の個室へ。
「てか福田、私と話すときより優しいのなんでだ?」と不満そうな江良を無視して早速本題へと入ったのだった。
◆◇◆◇
「なるほどね、あいつらの標的になっていたのは前の学校から……それで最近ここでもいじめられ出したと」
このいじめられっ子の名前は『成瀬 梅』。
なんというか……なんでそんな荒れた学校に通っていたのかというほどに暗い印象の持ち主だ。
前髪は長く全体的に『陰』の気が強い。
軽く話をまとめて尋ねてみると、成瀬は前の学校でも5年生の頃から度々イジメられていたとのこと。 そして学校が変わり、校長が「イジメは許さん」発言をしてからしばらくは大人しく手を出してこなかったそうなのだが、慣れ・気の緩みも相まってなのか少しずつイジメ行為が復活……とうとう服を脱がされるまでになってしまったらしい。
「うわ、マジか酷いな。 私、あいつらのことそれなりに知ってるつもりだったけど……そこまでのことしてるとは思わなかったわ」
裸にされたと聞いた江良が成瀬に同情しながら肩をポンと叩く。
「まぁその……あれだ、お前も大変だったんだな。 少しは私にも分かるぞ」
「え」
成瀬がキョトンと江良を見つめる。
「なんつーか、いつ声を掛けられるのか分からない嫌なドキドキがずっと付きまとうよな」
「分かる……の?」
成瀬が若干表情を軽くしながら江良に顔を近づける。
「まぁな」
「その……江良さんは誰にイジメられてたの?」
「ん? 私の場合はお前とちょっと違うんだよな。 警戒してたのは私だけで向こうはまさかの忘れてて……私が勝手にビクビクしてただけというかなんというか……」
江良が視線を静かにオレへと向けてくる。
「なんだ江良」
「なんでもねーよ、ベェーだ」
まぁ江良は同情して……成瀬に仲間意識を芽生えさせて話を引き出そうとでもしてくれたのだろう。
その甲斐あってか成瀬も少しリラックスしたような感じになってきたぞ。
「あ、そうそう、そんな成瀬さんにオレからもうちょっと聞きたいことあるんだけどいいかな」
オレが小さく手を上げながら尋ねると成瀬が「何?」とオレに顔を向けてくる。
「その……成瀬さんは西園寺……分かるか?」
「西園寺……さん?」
「あぁ。 ほら、あのー……最近ってか一昨日かな、目尻にホクロのある美少女と言えばいいのか……思い出したくはないと思うけど、成瀬さんがイジメられてる時に助けにきてくれた女の子いなかった?」
「!!!」
その問いかけを受けた成瀬の目が大きく見開く。
「いた……、もしかして……江良さんたちのお友達……だったの?」
「ん? まぁそうだな。 厳密に言うとこいつ……江良はオレのお手伝いで、西園寺と関わりがあるのはオレなんだけど」
「ご、ごめんなさい!!!」
一体どうしたと言うのだろう。 成瀬が突然頭を深く下げてオレたちに謝り始める。
「ええええ、なんで!?」
「だって私……あの子、西園寺さん……に悪いことしたから」
「ーー……え?」
西園寺に悪いことをした?
聞いてみると、成瀬は一昨日の放課後担任に呼び出され、担任に『とある子から聞いたんだけど、成瀬さん……イジメられたって本当?』と尋ねられたとのこと。
しかし成瀬は首を左右に強く振りそれを否定……「そんなことされた覚えはありません」と断言してしまったそうなのだ。
「えーと……それはなんで?」
オレが頭上にはてなマークを浮かばせて首を傾げていると、隣から「いや文面から悟れよ」と江良から静かなツッコミが入る。
「は? 悟れ? 何をだよ」
「いや気づけって。 こいつ……成瀬は服を脱がされるレベルのことされてんだぞ? そりゃあ弱みの1つや2つ握られてるに決まってんだろ」
「弱み……」
「例えば……そう、もし先生とか大人にチクったら、その画像をネットにばら撒く……とかさ。 ほら、実際に西園寺って子もそうやって牽制させられてるからあまり表立っての行動が出来ないわけだろ?」
「なるほどな。 お前にしては頭回るじゃねーか」
「お前にしては……は余計だっつの」
そうか、そうだよな。
西園寺はハンカチの報復とはいえ、ボコボコにしていた最中の音声データで脅されているんだ。
だったら裸にされていたこの成瀬が何も弱みを握られていないはずないよな。
オレは腕を組みながら「なるほどなー」と数回頷き、どうしたものかと考えていたのだが……
「よし、決めた」
そう声を出すと江良と成瀬が揃ってオレに視線を向けてくる。
「えっ」
「何が?」
「早速明日、あいつらを罠にかけて逆に脅す。 だから成瀬さんも手を貸して欲しい」
そうしてオレは成瀬と連絡先を交換し、「詳しいことは放課後メールするから」と一言。
オレはどんな手順であいつらを罠にかけようか午後の授業中もずっと脳をフル回転させていたのだが、その日の放課後……事件が起こった。
オレが下駄箱の前で運動靴に履き替えようと上履きを脱いでいると、オレの運動靴の間に一枚の手紙が挟まっていることに気づく。
「ん、なんだ?」
オレはそれを「もしやラ……ララララブレター!?」と思い、急いで中身を取り出して目を通したのだが、そこにはこう書かれていたのであった。
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邪魔をするようなら次はお前の番。
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ーー……マジか。
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