457 【西園寺編】イレギュラーに対応せよ!!
四百五十七話 【西園寺編】イレギュラーに対応せよ!!
さぁ……とうとうこちらから仕掛ける時だ。 待ってろよ西園寺。
「ダイキ、どこか行くの?」
オレが気合を入れて席から立ち上がったところで、エマが何を思ったのか尋ねてくる。
「え、トイレだけど」
「そう」
「なんで?」
「いや、それにしては妙に顔が真剣な感じだったからさ」
ーー……やべ、顔に出てたか。
それを聞いたオレはすぐに誤魔化しを入れることに。
オレは「え、なに? トイレ介助でもしてくれんの?」とふざけて聞いてみると、「んなわけないでしょ、早く行きなさいよバカ」となんとかスムーズに教室を抜け出した。
◆◇◆◇
自然な空気を装って5組・6組が見える位置へと移動すると、後ろからマドンナ水島が声をかけてくる。
「あー、ご主人さまぁー。 花ちゃんの活躍見学しに来たのぉー?」
「まぁな。 頭の切れるお前の行動……勉強させてもらうわ」
「そんな大層なことしないよー。 でもまぁ見ててねー」
それから水島は5組に顔を出しウォシュレッター女こと江良麻子と合流。 おそらくいじめっ子2人といじめられっ子が誰なのかを確認しているのだろう、6組の教室付近で中に度々視線を向けながら少しの間軽く話していたのだが……
「ーー……あ」
突然江良が6組を見ながら小さく呟く。
一体どうしたのかと思いオレも6組の教室へと視線を向けてみたのだが、なんということだ……もう少し早く行動するべきだったのだろうか。 教室後方の扉からいじめっ子らしき2人と、明らかにイジメられてます的な風貌の女子が3人で出てきているではないか。
おいおいマジかよ、開始早々イレギュラーじゃねえか!!!
このままだとあいつらはいじめられっ子を連れて今日もどこかでイジメタイム。 今、変に話しかけても怪しまれるだけなのは確定のため、今日は諦めて予定を明日に伸ばすこともできるが……それだけ西園寺の無実を証明する時間が遅れてしまう。
ここは何としてでも西園寺のために……あと、ほんの少しではあるが暴君綾小路の恐怖に慄いている4組の子たちのためにもどうにかしなくては。
さぁどうする。
いじめっ子&いじめられっ子の3人はもう水島たちの目の前。
これでは水島たちも手の出しようがない……オレの脳で打開策を考えようにも『もうイジメられてる現場……女子トイレで行われるのだとしたら、そこに侵入して騒ぎを起こすしか方法はない』しか思いつかない。
やるしか……それしかないのか!?!?
数秒間考えた結果オレは全員から変態扱いされるリスクを背負うことに。
ギリギリの距離で後ろをつけて突撃するしかない……そう決心したオレだったのだが、それはいじめっ子たちが水島の隣を通り過ぎようとした……その時だった。
「あーー、花ちゃん、今日は朝から調子悪いからフラフラしてきちゃったぁー、パタリ」
おお……おおおおお!?!?
一体何をしようとしているんだ。 水島がまるで舞台女優かのようにフラフラとしゃがみ込みながらいじめっ子たちの進路を塞ぐ。
「え、えーとマドンナ?」
この水島の即興劇に隣にいた江良もポカーン状態。
もちろん目の前で倒れられたものだから、いじめっ子たちも意味が分からず呆然と立ち尽くしている。
「ど、どうしたの?」
声をかけたのはいじめっ子の1人。
ーー……まぁ目の前で倒れられたらそう声をかけるしかないわなぁ。
「ううんー、花ちゃん、全然大丈夫じゃないー」
水島が目をキュルキュルと潤わせながらいじめっ子2人を見上げる。
「え」
明らかに異様な光景。
いじめっ子2人は小声で「こいつ誰?」やら「あー、ほらあれじゃん、昨日の奴のトップのマドンナじゃなかったっけ」やら話し出す。
「え、マドンナ!?」
「てことはあいつ……チクった?」
エ?
いじめっ子2人のかなり警戒した視線が水島へと向けられる。
うわあああああああ!!!! 何やってんだ水島ああああああああああ!!!!!
完全に作戦失敗。
これはすぐにでも水島を介抱するふりをして回収して……オレがトイレ突撃作戦に出るしかもう方法はない!!!!
そう判断したオレは水島の方に足を一歩踏み出したのだが……
ーー……ん、なんだ?
水島のやつ……あいつらと何かを話して……?
僅かではあるが、水島の口が動いているのが見えたのだ。 少し近づいてみると……やはりだ。 かなり小さな声で2人を見上げながら話しかけている。
その内容は定かではない。 しかしオレの地獄耳にはこう聞こえたのだった。
「今後の学校生活を無事に送りたいんだったら……この学年の頂点・マドンナである私の言う事は聞いた方がいいよ」
それは一瞬。 ほんの一瞬ではあるがその時の水島の周りには最近当たり前になりつつあったゆるふわオーラは存在せず。
そこには以前の真面目モード……宿泊学習の際にオレをハメようとしていた水島の顔があった。
「!!!!!」
「なに……こいつ」
そしてそんな2人も最近まで修羅場の多い学校に通っていたからこそ察したのだろう。 水島の奥に潜む何かを。
2人が声を詰まらせたままその場で立ち尽くしていると、それを見た水島が再びゆるふわオーラを纏い直しながらニコニコと立ち上がり口を開いたのだった。
「じゃあ2人とも、花ちゃんを保健室まで連れていってもらおうかなー♪」
こうして水島はいじめっ子2人に両肩を支えられながら保健室へ。
側で立ち尽くしている江良に小さくウインクをすると、「あーん、足が痛い、おんぶしてぇー」とゆるふわお姫様っぷりを披露しながらいじめっ子2人をこの場から離れさせてくれたのだった。
水島の脳の回転の速さと実行力……やっぱりすげえぜ。
それから江良はいじめられっ子の手を軽く引っ張りながら例の場所……今朝話していたトイレへ。
オレはそこに誰もいないことを確認するため、先回りして待っておくことにしたのだった。
そしてこの時のオレは気づいていなかったんだ。
そんなオレの後ろをつけてきていた人物の存在に。
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