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456 【西園寺編】難解なミッション!


 四百五十六話  【西園寺編】難解なミッション!



 江良麻子……通称ウォシュレッター女にメールを送った翌日の朝。

 昨夜はあれから下着姿の西園寺を思い出しながらハッスルしていたので眠い目を擦りながら学校に登校すると、他クラスの下駄箱の方からこちらを覗き込んでいる人物がいる事に気付く。



 ーー……江良だ。

 江良が『フクダ、フクダー』とオレに向けて口パクだが呼びかけている。

 さぁ、ここから反撃のスタートだ。



「あーエマ、先に行っててくれ」



 オレはわざとらしく下半身に手を当てるそぶりをしながらエマに声をかける。



「なに? トイレ?」


「そうそう。 もう漏れそうでな」


「分かったわ。 じゃあお先」


「あいよー」



 こうしてオレは一緒に登校していたエマとの別行動に成功し江良のもとへ。

「ここで立ち話もなんだから……」とオレの懐かしの場へと江良を連れて行くことにした。



 ◆◇◆◇



「ってここ男子トイレじゃね!? なんで私がこんなところ……」


「シー。 誰か来たらバレるぞ……てかお前その時点で変態扱いになるから気をつけろ?」



 オレは自身の唇に指先を当てながら江良に軽く警告する。

 そう、ここは前によく三好たちとワッショイしていた図工室前のトイレ。 先ほどオレが言った懐かしの場所はもちろんこの隣の女子トイレなのだが……やはりあそこはオレにとって聖域。 可愛い女子と行くことしか許されないのだ。


 オレの警告を受けた江良は「最初福田と会った場所もトイレだったし……お前トイレの神様かよ」とかボヤいていたのだがオレはそれに「だったらお前はトイレ機能なんだからオレの管理下だな」と華麗にツッコミ。

 江良はオレのこの高度なツッコミを受けて頭上にはてなマークを浮かばせていたのだが、朝の時間も限られている……早速本題に入る事にした。



「それでだ、昨日送ったメールの件だけど。 西園寺にボコられた女子って何組なんだ?」


「あー、あいつらなら私のクラスの隣……6組だよ」


「6組……」



 ていうと5年の時にオレをイジメようと必死だった男・杉浦のクラスだったよな。

 あいつここ出身のガキ大将っぽい立場のくせに自分のクラスも管理出来てないのかよ。 少しは丸くなったとはいえ……そりゃあ水島に振り向いてもらえないのも仕方ないぜ。


 それからオレは簡単に江良からその2人について話を聞く事に。

 どうやらその2人は……あまりにもモブすぎて名前こそ忘れたのだが、前の小学校でも超陰湿なイジメをしていたとのこと。

 フィールドは主にトイレや人のいなくなった後の教室で、男子相手だと反撃された時に面倒だからと同性の女子ばかりを狙ってイジメを繰り返していたらしい。



「それで……私にまだやらせたいことがあるんだろ?」



 ふふ……さすがはウォシュレッター。 オレの次の行動を予想して聞いてくるとはな。



 オレはその問いかけに「よく察したな」と頷く。

 そして次のミッション……そのイジメられていそうな女子を昼休みにここに連れてくるよう指示したのだった。

 すると何故だろう、江良は「ええ……マジか」と厄介そうに小さく呟く。



「ん、どうした。 イジメられてる女子は誰か大体見当ついてんだろ」


「まぁ……多分あいつかなーって目星はあるんだけど」


「なんだよ」


「いや昼休みだろ? 予想なんだけど基本さっき言ってた子らって同じ相手をずっとイジメるからさ、先約でそいつ連れてってると思うんだよね。 それを横取りするとなると……逆に怪しまれちゃうんじゃないかなって」


「なるほどな……」


「今日だけ他のことに関心持たせてイジメることをやめさせるか、私よりも手出し出来ないような子にそのイジメられてる奴呼び出してもらわないと……」



 江良は続けて「アタシにはどっちも無理だし……なんかそういう事出来そうな人いるか?」とオレに尋ねてくる。



 他の事に関心持たせてイジメっ子の興味を逸らすか、権限強くていじめられてる子を普通に呼び出せる人……



「うーーん」



 オレは腕を組みながら誰か適任のやつがいないかを考えだす。

 一番適任なのはやはり教師の高槻さんなんだけど……迷惑かけるのも気がひけるしな。 でも他のメンバーを考えてみても、そもそも敵が隣町出身校なだけあって接点がないものたちばかり。

 


「いないな」


「そっか」



 しかしこのままでは先に進まないと感じたオレは江良に「どうにか頑張ってくれないか」と頼もうとしたのだが……



「なーにやってんのぉー?」



「「!!!!!!!!」」



 ビクゥウウウ!!!!!



 扉越し。 後ろから急に声が聞こえてきたので扉を開け確認すると、そこにはマドンナ・水島の姿。

 中の様子がかなり気になっているらしく、背伸びをしながら覗き込んでくる。



「な、なんだよ水島か」



 オレは「うわああああバレたああああ!!! しかもマドンナとか……私変態確定だあああああ!!!」と喚き出す江良の口を塞ぎながら水島も同じ個室内へ。 水島は高校生以上の頭脳を持ち合わせている……もしかすると何かいいアイデアをくれるかもしれないと思い、事の顛末を簡単に話す事にした。



「へええ、西園寺さんの噂は聞いてたけど、そんなことがあったんだぁ。 花ちゃん知らなかったぁー」



 ゆるふわな雰囲気を漂わせながらも根は真面目……ちゃんと話を聞いてくれていた水島は「それはなんとかしたいねぇー」と唇を尖らせる。



「あぁ、このままじゃ西園寺が完全な悪者にされちまうからな。 西園寺を脅しているやつ……そいつらをどうにかしない限り西園寺の疑いが晴れないんだ」


「だねぇー」


「一番ベストなのはさっき少し説明したけど、まずイジメられてる子を説得して西園寺の無実を証明してもらう事なんだけど……何かいい案とかあるか?」


「あるよぉ」



「「え」」



 まさかの即答。

 それも自信があるのか一切の迷いのない返事にオレも江良も互いに顔を見合わせる。



「えっと……それは本当か水島」


「うん。 まずはそのご主……福田くんの考えた作戦をすればいいってことなんだよねぇ。 そのいじめっ子の関心を逸らすかイジメられてる子を呼び出すっていう」


「そ、そうだな」


「どっちも花ちゃんがやろっか?」



「「え」」



 シンクロ2回目。



 江良が「え、マジ出来んの?」と尋ねると水島は「そんなの簡単だよぉー」とゆるふわマドンナスマイルで頷く。



「え、でもどうやって? 私にはそんな方法見当もつかない……てかアンタにそんなことが出来るとは思えないんだけど」


「そこは……マドンナだからかな♪」


「理由になってねーよ!!!!」



 江良による強烈なツッコミの言葉は水島の周囲を漂うゆるふわオーラによって水島本人に届くことなく消滅。

 水島は「昼休みだよね? とりあえず花ちゃん、君のサポートがないと誰を狙って誰を連れて行けばいいのか分からないから、近くで見ててー」とヒラヒラと手を振りながら個室を出て行ったのだった。



「なぁ福田……本当に大丈夫なのか?」


「うん……オレにもまったく想像つかないんだけど、信じてみるか」


「やっぱり私にはあんなフワフワしたやつにそんな器用な真似出来るとは思えないんだけどな」



 こうしてオレたちは各自自分たちのクラスへ。

 休み時間、スマートフォンが震えていた確認すると、水島からの受信通知が来ていた。



【受信・水島】ていうかご主人様ー、そのいじめっ子たちを最終的に潰すんだったら花ちゃん今日のうちに1人で出来るけど、イジメられてる子から関心逸らすだけでいいの?



 マジか水島。 さすがは頭が切れてるな。

 その1日で潰す方法は是非ともご教授願いたいものなのだが……



【送信・水島】あぁ。 そいつら、本当かは分からないけど西園寺に不利なデータ持ってるらしいんだ。 それをどうにかしない事には解決にならん。 だから後に呼び出して罠を張るか……それ以上の脅しをする。


【受信・水島】そっかぁ。 じゃあとりあえずお昼休みの作戦は任せてね。 関心引かせて、イジメられてる子をあの目つき悪い子と一緒にトイレに連れて行けばいいんだよね?


【送信・水島】あぁ、すまんが頼んだ。


【受信・水島】はいはーい♪



 それからオレがどれだけ考えてもどうやって水島がいじめっ子たちの関心を引くかは想像つかず。

 そしてついにお昼休み……戦いのゴングが鳴り響いたのだった。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさかの水島ちゃん登場! マドンナの力が今ここに示される!!
[一言] 水島ちゃん、相変わらずのご様子で。 西園寺を助けようとしているダイキにちょっとしたジェラシーかな?しかしながら、これからの復讐劇とても楽しみです。
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