449 【結城編】これはいい方向!?
四百四十九話 【結城編】これはいい方向!?
開運効果のあるという茜の映った集合写真を結城母の病室に飾りだしてから数日。
結城から「話があるから今日一緒に帰らない?」と誘われ、これは告白かもと思いドキドキしていたオレだったのだが……そこで伝えられたのは結城母の件だった。
「ええーー!?!? ほんとに効果あったんだ!! よかったね!!!」
はじめこそ「ママのことでさ……」と切り出されたので、もしかしてマイナスな話題なのではないかと身構えていたのだが、話を聞いてみると内容はその真逆。
どうやら茜の開運効果は本当だったらしく、結城母の体調がみるみる良くなり元気になっている……というもの。
「ママを担当してくれてる先生もビックリしてたんだって」と、結城母から直接聞いたのであろう内容をオレに教え出した。
「そうなんだ」
「うん。 なんかママの病気って手術しても完璧に治すのが難しいものだったんだけど、その病原菌……?っていうのかな。 それが何でか少しずつ消えていってるんだって」
結城は微笑みつつも、目をキラキラさせながら話してくる。
なんでも結城母の回復のスピードが目まぐるしいらしく、これはもしかしたら年内の退院もあるかもしれないとのことだった。
茜の開運効果……おそるべし。
オレはそれからも結城から結城母の元気エピソードを聞いていたのだが、途中でとある疑問点が浮かび上がる。
そう……どうして写真の効果だけで結城母がここまで回復しているのかについてだ。
茜が前の体で病気と戦っていた時は、美香が直接お見舞いに来ていたのにも関わらず完治することはなかった。 確かに容態が良くなったこともあったけどそれも一時的なものだったはず。
なのに今回はどうして……?
もちろん結城が購入していた不動明王様の身代わりお守りの効果もあるかも……とは思うのだが、他に思いつくことがあるとすれば『言霊』……言葉の力だ。
神様……美香はよく『言霊の力は凄い』って言ってたからな。 もしかしたら効果的な会話の内容があったのかもしれない。
これは今後の参考になるかもしれないな。
気になったオレは早速結城に聞いてみることに。
「病院ではお母さんとどんな話してるの?」と尋ねてみたところ、結城は「そうだなー」と指先を唇に当てながら教えてくれたのだった。
「うーーん、ほとんどが福田……くんの話かな」
「え……そうなの!?」
「うん」
オレの心臓が一瞬キュッと引き締まり、オレの聴覚が結城の声のみに集中し始める。
まさかのオレの話題。 一体どんな内容……別にオレ、結城に対してそこまでオープンな変態行為はしてないよな!?
いや、でももしかしたら……
「た、たたたた例えば!?」
「えっとね、例えば福田……くんが私が困ってる時にしてくれたこととか、こういう時に助けてくれた……とか、側にいてくれたんだー……とかかな。 それでママと、福田くんって優しくてかっこいいよねって」
ーー……!!!
まさに唐突な発言。
オレの背後に特大の雷がバキバキドカーン!!!!と落下する。
い、今……なんて言った?
優しくて、か……かっこ……
「かっこ……いい?」
「あっ」
オレが心臓の鼓動をマックスにしながら結城に尋ねると、どうしたのだろう……結城もやはり恥ずかしかったのか顔を真っ赤にしながらオレから顔を逸らした。
「ゆ、ゆゆゆ結城さん……!?」
「ーー……っ」
う……うわあああああああ!!! なんだこの空気、気まずいよおおおおおおお!!!!!
こんな雰囲気に慣れていない初心者マークの付いたオレは無理やり話題を変えることに。
「と、とりあえず茜の写真が効果あったってことだよね! 後でお礼のメール入れておくよ!」と震える手でスマートフォンを取り出しメールフォルダを開いていると、結城がポツリと呟いた。
「ーー……茜」
「ん? どうしたの結城さん」
「え、ううん、堀江さんと仲いいんだなって思って」
「そうかな」
「うん。 だって前にママの病室で話聞いてる限りだと、福田……くん、堀江さんと会ってたのって1ヶ月もないくらいでしょ?」
「うん、そうだね」
「それなのにお互いを『茜』とか『ダイきちくん』って呼び合うまでになるなんて……凄いなって」
ーー……。
「「え?」」
その後結城は「あれ、どうしたんだろ私」と軽くテンパりながら両手で顔をパタパタと仰ぎ出し、「じゃ、じゃあ私、引越しの準備まだあるから、先に……バイバイ」と駆け足で去っていってしまったのだった。
うわああああああ!!! なにこの勘違いしそうな台詞……期待しちゃっていいんですかああああああ!?!?!?
そして……そうだったあああああああ!!!!! 結城、転校しちゃうんだああああああああああああ!!!!!!
まさに天国に上ったと思ったらの落とし穴。
オレはあまりの温度差……高低差に頭をクラクラさせながら、フラフラと1人で帰路についたのであった。
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