445 【結城編】運命のバカ野郎!!
四百四十五話 【結城編】運命のバカ野郎!!
それはオレが福田ダイキ100パーセントとしての人生を歩み始めて少し経った頃。
忘れていた提出物を職員室にいた担任まで届け教室へと戻っていると、教員用玄関付近……誰かと話をしている高槻さんの姿を見つけた。
結構真剣な表情の割には口調も別に怒ってる様子はない。 一体どうしたんだろうと少し気になり近づいて聞き耳を立ててみたのだが……
「それで桜子、もう福田くんや優香さん……エマさんたちには言ったの?」
ーー……ん?
どうやら高槻さんは今一緒に住んでいる結城と何かを話している様子。
先ほどの高槻さんの質問に対し結城は「ううん、まだ……」と小さく首を横に振っている。
オレや優香、エマたちに言うこと……? なんだ……?
オレの名前が出ていることからオレに関係していることは間違いないっぽい。
もしかしたら結城のやつ、どこか体調が悪くてオレたちのサポートを必要としているのだろうか。 だったら結城から頼まれる前にこっちから行動してあげたほうが結城的にも気持ち楽だよな。
そんなことを考えながらオレは聞き耳をたてることを続行。
しかしこの選択がオレを地獄に叩きつけることになったのだった。
「そっか。 でも桜子、これは桜子から言うのよ?」
「うん、分かってる」
「じゃあママ、今日もなるべく早く仕事終わらせて帰るから……引越しのお片づけ、ちょっとでも進めといてね」
「うん」
「!!!!!!!!!!」
な……ななななな、なんだってええええええええええええええ!?!!?!?
◆◇◆◇
「ちょっとどうしたのよダイキ、そんな……まるで長距離マラソンを走り終えたばかりです的な雰囲気だして」
授業中。 オレが絶望という闇に押しつぶされながら机の上で朽ち果てていると、隣の席のエマが小声でオレにツッコミ……横腹をシャープペンシルの尖ってない方で突いてくる。
「放っておいてくれ……お前も近いうちにこうなるんだ」
「なんでエマまでそうなるの確定なのよ」
「だって……だって……」
「ん? なんで前の席の桜子に視線向けるの? 桜子に何か関係でもしてるわけ?」
「ーー……言えません」
そうだよな、あれは確かにオレの口からではなく結城の口から伝えるべきこと。
オレが出しゃばるわけには……
「なに? もしかしてフラれたの?」
「う……ううううー……」
「なによもう、面倒くさいわねー」
オレはその日、放課後になるまでずっと闇落ち状態に。
結城も言い難いのかオレやエマに一切引越しの話題を話してこないし……このままではお別れの言葉なしにさよならって未来もあるのだろうか。
イヤだ……それだけはイヤだああああああああああああああ!!!!!
オレの脳裏に浮かび上がってきたのは少し前、オレの前世・森本真也時代の妹・森本翠からの最後のメッセージ。
『今度こそ、幸せにね』
そうだ、ここでオレがずっと待ちの姿勢を構えていたら最悪の未来が待っているかもしれない!
それにもしかしたらオレの聞き間違いっていう可能性もあるしな!!!
こうしてオレは結城に言われるより先に聞いてみることを決心。
放課後別の女子と雑談をしていたエマに「じゃあオレ、先帰るわ!」とだけ伝え、駆け足で結城の後を追う。
するとさすがはオレの決断力の速さと走力……結城の後ろ姿を正面玄関を出たあたりで発見し、大声で結城の名前を叫びながら駆け寄ったのだった。
「ん? どうしたの、福田……くん」
オレの声に反応した結城が相変わらずの愛くるしさを纏わせながら振り返ってくる。
よし、聞くぞ……!
オレは結城の顔をまっすぐ見据え、意を決して口を開いた。
「あ、あのさ結城さん」
「なに?」
「その……今日、職員室付近で結城さんが高槻先生と話してるところ見ちゃったんだけど、結城さん……引越しするって聞こえたような気がして」
頼む……聞き間違いであってくれ!!
オレは心の中で手を合わせ祈りながら結城の答えを待つ。
しかし現実とは厳しいもので、オレの耳にした内容はまったく間違ってはいなかったのだった。
「聞いてたんだ……」
結城が少し寂しそうな表情で俯きながら小さく頷く。
「ーー……え、頷いたってことはもしかして結城さん」
「うん、実はそうなの。 ママからも福田……くんやお姉ちゃん、エマに伝えるように言われてたんだけど私……」
うわあああああああああああああああ!!!!!!!! もうお終いだああああああああああああああああ!!!!!
運命のバカやろおおおおおおおおおお!!!!!!!
これ以上聞いているとオレの心がどうにかなってしまう。
すでに目からは大量の涙が溢れていたため、オレは「くっそおおおおおおおお!!!!」と発狂しながらその場を後に。 涙や鼻水を垂れ流しながら家へと全力疾走で帰宅したのだった。
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