444 オレは変態脳で人生を謳歌する!【挿絵有】
四百四十四話 オレは変態脳で人生を謳歌する!
あぁ……なんて清々しい朝なんだ。
登校中、オレは澄み渡る春の空気を目一杯吸い込みながら空を見上げた。
◆◇◆◇
「ええーー!?!? 翠……さん、もう帰っちゃったの!?!?」
目覚ましが鳴り目を開け体を起こすと、そこには隣で寝ていたはずの翠の姿がない。
ちょうど朝食を作っていた優香に「翠さんは?」と尋ねると結構早めに起きていたらしく、優香が起きてきたくらいに「じゃあダイきちくんによろしくね」と静かに実家に帰ってしまったのだという。
「そんなああああああ!!!!」
せめて別れ際くらい兄らしい……かっこいい言葉で送り出してやろうと思ってたのに、こんなのってないぜ。
オレが頭を抱えながら布団に顔を突っ伏していると優香が「あ、でも翠さんからさっきのとは別に伝言は預かってるよ」と声をかけてくる。
「え?」
オレは顔をあげ優香を見上げる。
「ちなみに翠さん……なんて?」
そう尋ねると優香は「なんでこんなことダイキに言うのか分からないんだけど……」と前置きした後に、ゆっくりと口を開いたのだった。
『今度こそ、幸せにね』
◆◇◆◇
学校。
「ええーーーー!?!? 小畑さん、アイドル辞退しちゃったのーーー!?!?」
オレとエマの前で驚きの声を上げているのは結城にちょっかいをかけまくっていた元ギャル女子・オツムちゃん。
小畑がアイドルにならない道を選択したことはすでに学校全体での話題となっており、オレはこれがきっかけで再び隣町VS既存生徒との戦いが始まってしまうのではないかと心配していたのだが……
「残念……だけど、それでもいいや! だってアイドルになれる輝きを持ってるってことだもんね!!! だから結城さん、お願い……早く小畑さんを紹介してーー!!!」
「え、えええ……」
意外なことにオレの恐れていた事態には発展せず。
むしろ小畑と仲良くなれる期間が増えたことに生徒一同……特に同学年の6年生は大歓喜。 アイドルデビューをしないというのに小畑のクラス・6年2組の前では相変わらずの人集りが出来ていたのだった。
オレはそんな現状を見て隣の席に座っているエマに「なんか小畑人気全然収まらねぇな」と小声で話しかける。
「まぁそうね。 なんたって美波は最早アイドルになるはずだった伝説の女の子。 そう簡単に人気は落ちないでしょ」
「そういう……もんなのか?」
「そうね。 なんか朝他の子達が話してるのを聞いたんだけど、なんでも美波……学年マドンナにランクインしたんだって」
エマのそんな言葉を受けてオレは一瞬固まる。
「ーー……え、マジ? てことは、これからは4大マドンナってこと?」
「そうなるわね。 確かマドンナが2組のハナエで、候補がノゾミ、エマ……そこにミナミが追加されたって形ね」
エマが「もはや四天王みたいになってきたわね」と冗談交じりに笑う。
「てことはまだ水島が頂点だけど……今後の展開次第では小畑がトップに君臨する可能性もあるってことか」
そう呟くと、エマが「うーん、ミナミには悪いけど、それはないんじゃない?」と小さく否定。
「え」
普通に肯定されると思っていたオレはエマの返事に驚き高速で瞬きを繰り返した。
「えっと……なんで?」
「まぁこれはエマの予想なんだけど、トップに立つのは……うん、不本意だけどエマになるんじゃないかしら」
ーー……。
「え、エマ? なんだどうした急に」
突然意味の分からない発言をしたことに驚きを隠せないオレだったのだが、それは次のエマの言葉により悔しいけど納得してしまうことになる。
「だってエマ、なんだかんだでモデルするじゃない? そしたら雑誌に載ることにだってなるし、普通に目立つようになるでしょ?」
「あ、あー……そうだった、そうでしたね」
「ちなみにまだ先にはなるんだけど、泊りがけでの撮影に行くことも決まってるのよね」
「え……そうなの? レッスンとかは?」
そう尋ねるとエマは「まぁレッスンももちろんあるんだけど……鬼マネもエマの可能性を感じてるのかしらね。 実際に使われた撮影現場で本番を意識して試してみるって言ってるの」と半笑いで少し恥ずかしそうにオレを見てくる。
うわぁ……流石だわ。
「やっぱすげぇな、エマお前……」
「ちなみにダイキ、どこだと思う?」
突然どうしたというのだろう……エマは何かを思い出したのか表情をニヤニヤとさせながらオレに顔を近づけてくるではないか。
「え? どこって……それはお前、あれだろ? 泊りがけって位なんだから海とか山とか……そんな感じか?」
「ううん、東北」
「東北……って、ええええええ!?!? マジ!?!?」
「えぇ。 しかもなんの運命なのかしらね。 あのパンフレットに載ってたあの川で撮影練習するんだって」
「ガ……ガガガガチィイイイイ!?!?!!?!???!」
ちなみにこのこと……エマがモデルをするという話はまだエルシィちゃん以外誰にも言っていないらしく、雑誌に載るまでは他言無用とのこと。
オレはそんなエマのポテンシャルに改めて「すげぇ……」と感心したのであった。
◆◇◆◇
オツムちゃんも丸くなったままなおかげで結城の今後にも支障なし。
1組の三好と多田も楽しくやっているみたいだし2組はマドンナ・水島と新マドンナ候補・ドSの女王小畑のダブルマドンナで人気絶頂。 うちの3組も平和になったし、4組の西園寺に至っては……たまたま教室内を覗いたんだが、かつての宿敵であり今は勝手に付きまとわれていた綾小路と一緒にご飯食べてたぞ。
他のクラスもウォシュレッター女こと江良麻子から『平和すぎるからもう報告いらなさそう』って連絡が来るくらいだし、この短期間で一気に平和な学校生活が戻ってきたって感じだぜ。
下校時刻。 オレは「いやー、それにしてもいい日だな」と背伸びをしながら下校しようと学校正面玄関から出ると、エマが「あー、またやっちゃった。 忘れものしたから先に帰ってていいわよ、すぐに追いかけるから」と照れ笑いをしながらオレに背を向ける。
「あれ、そういや結城さんは?」
「あー、桜子ならお母さんのところ直接行くって言ってたわね」
「なるほどな。 じゃあ先行ってるわ」
「はーい」
こうしてオレはエマを待たずにゆっくりと帰路につくことに。
「あ、福田ー!」
そんなオレに後ろから声をかけてきたのは三好。
背中をポンッと叩かれたので振り返ってみると、そこ……三好の後ろには多田や小畑の姿。
「おー三好。 相変わらず仲良いな」
「へへ、まぁね! 今から美波ん家でズッ友会するんだけど、福田もくるー?」
「ーー……ズッ友?」
「え、知らないの福田。 ずっと友達って意味じゃん!」
「へー、そーなんか」
「それでどう!? くる!?」
三好は嬉しそうな表情でオレを見つめてきているが……
「あー、まぁ今回はパスだな」
「え、そうなの?」
「うん、ここはやっぱり1番の仲良し3人組で楽しんだ方が盛り上がるだろ。 オレに百合を邪魔する権利はねぇよ」
「ゆ、百合?」
「え、あ、ああー……! すまん、こっちの話だ。 とにかく仲良し組で楽しんでくれってことだ!!」
「そっか! わかった、じゃあまた誘うね!!!」
その後三好たちは早くパーティをしたいのだろう……オレを追い越してワイワイ状態のまま小畑家へと向かっていったのだった。
「青春だな」
三好たちの後ろ姿を見ながらそう呟くオレ。
そこから視線を右に向ければ西園寺が綾小路と一緒に帰っているし、左に向ければマドンナ・水島がまた別の男子に告白されている。
「みんな……謳歌してんなぁ」
おそらくは今朝、優香から聞いた翠の伝言と昨夜もらった言葉が効いているのだろう。 一気に心の奥底でつっかえていたものが抜け落ちたようなこの開放感……
よーし!! オレもこの福田ダイキとしての人生を謳歌……翠や他の同級生たちに負けないくらい、恋や青春を楽しんでやるぜーーー!! もちろん変態行為もこの持ち前の変態脳で……今のうちにとことんやってやる!!!!!
オレは羽根でも生えたのかと思うほどに軽くなった体で足取り軽く帰っていたのだが、その途中ーー……
ん? あれは……
偶然視線を下に向けたタイミングでオレの視界が地面に落ちているハンカチを補足。 オレはそれを拾うと少し目の前を歩いていた人物に声をかける。
「あ、ちょっと……ハンカチ落ちたよー」
ゆっくりと顔を上げながら声を出していると、そのハンカチを落としたであろう持ち主はスカートを履いていることからどうやら女の子らしい。
そしてオレの声が聞こえたのか女の子の体が一瞬ピクリと反応。 桜舞い散るその道で、ゆっくりとこちらを振り返ったのだった。
お読みいただきましてありがとうございますー!!
『小五に転生したオレは変態脳で人生を謳歌する!』本編終了ですー!!!!
☆次話から個別ルートへと移行☆
テンション等はこれまでとあまり変わらず、特にイチャつかせたりするつもりはないので(そんなことしたら作者が狂います 笑)よろしければ是非お付き合いください♪
ちなみの今回の挿絵は11話『衝撃の落し物』との比較となっておりますので、表情等の違いをお楽しみ頂けたらと思います!
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