表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
430/733

430 特別編・最終審査・2人の絆【挿絵有】


 四百三十話 特別編・最終審査・2人の絆



 最終審査1日目を何とか乗り切った美波。 

 その夜、体力気力ともに疲れ果てた美波が自室のベッドでうつ伏せになりながらスマートフォンを弄っていると突然部屋の扉が数回ノック……誰だろうと扉を開けると、そこには部屋着に着替えた本日できた戦友・五條鈴菜が立っていた。



「え、鈴菜ちゃん? どうしたの?」


「うん、ちょっとお話したいなって思ってさ。 もう寝ちゃう感じ?」


「ううん、もうちょっと起きとこうかなって思ってたよ。 明日の課題……歌詞の暗記まだ微妙だし」



 そう答えると鈴菜は「あ、だったらさ……」と言いながらその手に持っていたペットボトルを美波に渡す。



「ん?」


「私はもう何となくだけど覚えられたから、一緒に教え合いっこしよっか。 たまに休憩挟んでジュースとか飲みながらさ」


「え、いいの!?」


「うん。 暗記系って人に教えながらやる方が効率上がるって言うじゃない? それだったら私ももっと覚えられるし、美波ちゃんも1人でやるよりも効率いいんじゃないかなって」



 雑談のつもりで来てくれたのに、わざわざ自分の課題のお手伝いもしてくれるなんて。

 


 もちろん美波はその鈴菜の提案に「是非是非ー!」と賛同。

 それから約1時間、2人はお互いに歌詞の暗記チェックをしながらほぼ100%間違えないレベルにまで脳に叩き込めたのであった。



 ◆◇◆◇




「「かんぱーい!!」」



 暗記終了後、美波と鈴菜は鈴菜持参のペットボトルジュースをコップに注いで祝福の乾杯。

 美波が達成感に満ち溢れた中での炭酸ジュースの味を楽しんでいると、鈴菜が優しそうな目でこちらを見つめていることに気がついた。



「ん、どうしたの鈴菜ちゃん」



 そう尋ねると鈴菜は「あ、ううん、何でもないよ」と誤魔化すように笑いながら首を左右に振る。



「いやいや、さっき私見てたじゃん」


「あー、まぁそうなんだけど」


「え、なになに!? もしかして私、肌荒れ……ニキビ出来てるとか!?」



 こんな大切なオーディション中に肌荒れとかあり得ない。

 美波が焦って顔の肌をチェックしていると鈴菜はそんな美波の様子を見て「あはは」と笑った。



「えええ、なに鈴菜ちゃん!! 何で笑ったの!?」


「ううん、ちょっと面白くて」


「面白い!?」


「うん、なんか美波ちゃん、変に緊張してなくてやりやすいなーって思って」


「ちょ、それどう言う意味なのさ!」


「あははは、ごめんごめん」



 その後鈴菜が口にしたのは先ほど美波を見つめていた理由。

 鈴菜はコップを目の前の小さなテーブルの上に置くと、「よいしょ」とベッドの上へ……三角座りをしながら改めて視線を美波へと向けた。



挿絵(By みてみん)



「私がさっき美波ちゃん見てて笑ってたのはね、声かけてよかったなーって思って」


「声かけて……何で?」


「ほら、美波ちゃんはこのアイドルになる夢を応援してくれる人がいるって言ってたじゃない? でも私はそんな人誰1人としていなくてさ。 こうして一緒に切磋琢磨できる仲間ができて嬉しいんだ」



 鈴菜は少し恥ずかしそうに「えへへ」と笑うと「それに美波ちゃん、私と一緒で年下組だし」と付け加える。



 そう言えばそうだ。

 確かはじめに鈴菜が話しかけてきて自分が「応援してくれる人がいる」と答えた時、「いいなぁ」と呟いていた気がする。

 美波はそのことを思い出すと一つの疑問点が。

 それを聞かずにはいられなくなった美波は失礼を承知で聞いてみることにした。



「えっと、マ……お母さんやお父さんも応援してくれてないの?」



 そんな美波の問いかけに鈴菜は少し悲しそうに頷く。



「えええ、そうなの!?」


「うん。 私の親は2人とも学校の先生でさ。 私には将来安定した生活をしてほしいらしくて普通に高校・大学に進んで就職してほしいんだって。 アイドルなんてものの数年で終わるし、売れるか売れないかも分からないギャンブルに時間を割くのが勿体ないって」


「ギャンブルって……」



 その後も鈴菜の口からは周りから投げられた『やめておいた方がいい』と言う声。

 それは友達や親戚、クラスの担任……その全てから『鈴菜はアイドルの道なんか進まずに普通に生活した方がいい』というものだった。



「うーわ、なにそれ、最悪じゃん!!!」



 美波自身、誰にもそんな事を言われたことはないのだが、鈴菜が受けた言葉を聞いてフツフツと怒りの炎が湧き上がっていく。



「でしょ? でね、今回も無理だったら私……もうアイドルは完全に諦めて勉強に励めって親に言われてる……」



「鈴菜ちゃん!!」



 美波は鈴菜の言葉を遮りながら強く手を握り、まっすぐ鈴菜の顔を見据えた。



「え、なに美波ちゃん」


「受かろう!」


「ーー……え?」



 突然のことで驚いたのか鈴菜は目を大きく瞬きさせながら美波を見つめる。



「鈴菜ちゃん、私そういう人がなにも言えなくなってる時の顔見るの大好きなんだけどさ……やってやろうよ。 とりあえずこの審査の結果がどうであれ、鈴菜ちゃんがアイドルを諦める必要はないと思うけどさ……どうせならここで受かってバカにしてきた奴ら、上から見下してやらない?」



 美波は鈴菜に顔を近づけながらニヤリと微笑む。



「み、美波……チャン?」



 鈴菜の表情を見た感じ、あまり自分に自信があるように見えない。

 それは誰も応援してくれる人がいなかったから……しかし美波は応援が自分の力になることを身を以て知っている。



 ここまで自分に優しく接してくれて気にかけてくれて……暗記力や体力面では流石に鈴菜の方が年上だから叶わないが、精神面でならサポートしてあげられるかもしれない。

 


 美波は改めて自分を応援してくれている佳奈や麻由香・エマ・福田に感謝をしながら次は自分が鈴菜を元気付ける番だと心に決め、ゆっくりと口を開いた。



「鈴菜ちゃん、私は鈴菜ちゃんを応援する。 と言っても何人合格するのか分からないし私も勝ちを譲るつもりはないけどさ、一緒に合格目指そうよ」


「美波ちゃん……!!!」



 本当に応援されたことがなかったのか、美波に励まされた鈴菜の目にはすでに涙が。

 その後2人は互いに頷きあい、明日も一緒に頑張ろうと励ましあったのであった。



「でも美波ちゃん、私不安だな」


「なにが?」


「だって周りはみんな年上だし……今日の午後みたいにめちゃめちゃ睨まれたら私、萎縮しちゃうんだよね」


「ふふふ……鈴菜ちゃん、そう言う時はそんな視線を乗り切るいい方法があるんだよ」


「そうなの!? え、知りたいな!」


「いいよ、教えてあげる。 それはね……」


「それは?」



「パンツを履かないこと!!!!!」



「えええええええええええええええ!?!??!?!!?」




お読みいただきましてありがとうございます!

下の方に星マークがありますので、評価して行ってもらえると励みになります嬉しいです!

感想やブクマ・レビュー等、お待ちしております!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 待て!それが許されるのは小学生までだよ!? 中学生だなんて!そんな!前のめりが増えるじゃないか(歓喜)
[良い点] 応援してくれる人がいないのは寂しいなぁ。 小畑ちゃんの良いところが見れそう。 で、またパンツ……エマちゃんの意志が脈々と……!
[一言] エマ見ているか・・・ノーパンが感染してるぞ・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ