427 特別編・JSのアイドル奮闘記⑦【挿絵有】
四百二十七話 特別編・JSのアイドル奮闘記⑦
メイプルドリーマー・妹オーディション最終審査。
指定された集合場所はおそらく貸し切っているのだろう……スポーツ専用の施設のような場所で、そこには宿泊用のホテルやその隣にはマラソン用の大きな競技ドーム、筋トレジム等……色々な施設が集合していて合宿にはもってこいの場所となっていた。
「えっと……あ、あっちか」
周囲をキョロキョロと見渡しながら歩いていると途中、【4次審査参加者はあちら】と矢印の書かれた張り紙を発見する。 どうやら宿泊施設のホテルを指しているようだ。
視線をホテルの方へと向けてみると今回の関係者たちなのだろう……スーツを着た大人が入り口前にたくさん並んでおり、美波は小さく深呼吸。 改めて気を引き締め歩みを進めて行ったのだった。
◆◇◆◇
「はい、では明日の7時からオーディション開始となります。 本日は皆さん各自部屋でゆっくり調子を整えて頂いて、早朝寝坊しないように注意してください」
集合時刻。
宿泊ホテル内ロビーにて集められた美波たち参加者の前で運営スタッフが今後の予定を軽く発表し、配られたプリントに目を通すと流石は最終審査……かなりキツキツなスケジュールとなっていた。
ちなみにその内容がこちらなのだが……
・金曜日
午前:ダンスレッスン・マラソン10km
午後:午前に習ったダンスの披露・ステージ上での立ち振る舞い講座・歌唱レッスン・マラソン10km
【翌日までの課題】配られた歌詞の暗記
・土曜日
午前:前日の課題チェックとその曲に合わせたダンスレッスン・マラソン10km
午後:午前に習ったダンスの披露・模擬ステージ・ボイストレーニング・マラソン10km
【翌日までの課題】メイプルドリーマーの曲・1曲を選択し歌とダンスを暗記
・日曜日
午前:前日の課題曲の復習と質問タイム
午後:課題曲を使った模擬ステージ・内定発表
これはかなり目の回りそうなハードスケジュール。
美波は若干面食らいながらも他の参加者の反応を確かめるべく周囲を見渡してみることに。
するとどうだろう、流石は最終審査まで勝ち残った強者というべきなのだろうか……皆真剣な表情で書かれたプリントに目を通すと、『絶対に通ってやる』という強い意志を込めた眼差しで周囲に睨みを利かせていたのだった。
「ーー……わ、私だって、負けないんだから」
美波も負けじと拳を強く握りしめながら小さく呟く。
幸いなことなのか前回の審査で見かけた意地汚い大学生女はいない様子。
これなら正々堂々戦えることが出来るかもしれない……そう確信した美波はスタッフの「解散」の声を合図に指定された自分の部屋へと向かうことにした。
◆◇◆◇
早く部屋に戻って佳奈や麻由香・エマ・福田と連絡を取って心を落ち着かせようとしていた美波だったのだが、それはロビーからエレベーターで移動して部屋へと向かっている途中での出来事。
曲がり角を曲がると同時に美波の視界が下の方から何かが飛び出してくるのを捉えた。
「!!」
美波が反射的に立ち止まり確認すると、飛び出してきていたものは足……どうやら美波を転ばすことが目的だったらしい。
美波の脳内であの第1次審査開始前に足を引っ掛けられ……地獄を見たあの光景が思い出されていく。
あー。 なんか思い出しただけでイライラしてきた。
さっきまではこの最終審査……皆正々堂々と行われるものだと思っていたけれど、やはり結局は女の世界。 最終審査なだけあって、人目のつくところで危険なことはやらないか。
美波は自分の邪魔をしようとしてきた人物の顔を確認することに。
「ちょっと誰? バレバレだったけど流石にウザいよー?」と言いながら曲がり角を覗くと、そこには高校生らしき女の子が腕組みをしながらこちらを見つめてきていた。
「あ、君でしょ! 私を引っ掛けようとしてきたの!」
そう問い詰めるも高校生は美波の言葉をフル無視。
何も言い返さないままクルリと美波とは反対方向に体を向け、「っち」と静かに舌打ちをした後にスタスタと去って行ってしまったのだった。
「んああああああああ!!!! なんなのもおおおおおおーーーー!!!!」
その後美波は部屋に戻るや否やそのことを佳奈たちに愚痴ることに。
しかし翌日の美波の予定を伝えるとエマに「早く寝なさい!」と怒られたため、美波は仕方なく通話を終えて目覚ましをセット……翌日から始まる鬼のようなスケジュールに備えるべく眠りについたのであった。
そしてこの時の美波はまだ知らない。
先ほど美波を蹴落とそうとしてきた高校生……あの子が明日からの3日間、美波たち参加者に波乱を巻き起こすことを。
お読みいただきましてありがとうございます!!
ちょっと急遽挿絵入れたくなったのでかなりラフですが書かせていただきました!!
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