423 ネクストステップ!
四百二十三話 ネクストステップ!!
以前こいつ……ウォシュレッター女にトイレ音のことを誰にも言わないということを交換条件として提案したとある要求。
その内容とは……
「えっとさ、あれだよな。 私が元からここの生徒だった子に積極的に話かけて……仲良くなるって話だったよな」
ウォシュレッター女が「その話だよな?」と緊張気味にオレに尋ねてくる。
「そうそう、よく覚えてたな」
「お前さぁ、どんだけ私のことバカだと思ってんだよ。 確かにテストの点数は1桁だったけどよぉ……そこまでやばくねーぞ」
「うん、そういうツッコミはいいから早く」
オレがウォシュレッター女の反論を華麗にスルーしながら本題を求めると、ウォシュレッター女は「分かったよ……」と小さくため息をつきながら、今の進捗……進み具合について話しだした。
「えっと……とりあえず私のクラス……5組の女子とは結構仲良くなったぞ?」
ウォシュレッター女はこれが証拠と言わんばかりにスマートフォンを取り出し、連絡先を交換した子たちの名前をオレに「ほら」と見せていく。
「ふむ……なるほどな」
ぶっちゃけ名前を見せられたところでオレはそいつらの名前を誰1人知らないわけだが……こいつはそんなオレの事情なんて知らないからな。 おそらくこの名前は本当に元々うちの生徒なのだろう。
オレが「ご苦労、その調子でな」と成果を労うと、ウォシュレッター女が「ていうかさぁ……」とオレに視線を向けてきた。
「ん、なんだ?」
「なんで私、こんなことさせられてるわけ? まぁ私的にはそこまで苦手なことじゃないしいいんだけどさ、私がこいつらと仲良くなったところでアンタにはメリットはあるようには見えないんだけど」
そりゃあごもっとも。
確かにこいつからしてみればオレには何の得もないと思っているだろう。
しかし……しかしな、オレの狙いはそんな小さな平和じゃないんだ。
「メリット……あるんだよ」
オレは若干口角を上げながら先のウォシュレッター女の問いかけに答える。
「え? あんの?」
そうだな、こいつもちゃんと言いつけを守っているようだし……次の段階に進んでもいいかもしれない。
オレは「あぁ。 実はな……」と頷くと、ウォシュレット女にこう切り出した。
「もしお前の仲良くなった子が前のお前の出身校のやつに虐められてたら、お前はどうする?」
オレが人差し指を立てながら尋ねると、ウォシュレッター女は「え?」と考え出す。
「んそりゃあそれなりに仲良くなったんだからそのままってわけにはならないけどよ……確かにそれ、今後あり得るよな」
「だろ? その場合もしお前が何もしなければ新しくできたお友達は誰にも救われずに不幸になるけどよ……でももし助けた場合はお前が前いた学校の子たちに裏切り者扱いされて、今度はお前がその対象になることだってあり得るからな」
「ーー……マジだ。 これ私ヤバくね?」
ウォシュレッター女もそれがあり得る未来だと確信したのか、若干顔を青ざめながらオレの腕を掴んでくる。
そして「もしかして……そうやって私を追い詰めんのが目的だったのか!?」と半ギレ状態へと移行……オレの体を押し倒し、仰向けになった体の上に跨がるようにして胸ぐらを掴んできた。
「この……卑怯者!!!」
「まぁ落ち着けウォシュレッター」
「ウォシュレッター言うな!! お前……最低な男だな!! トイレのことを言わなくても私を苦しめようとするなんて!!」
ウォシュレッター女はかなり興奮しているのだろう。
こいつ……ちょうどオレの下半身上で前のめりになって座っていることから、禁断の聖域が動物さんを上から圧迫していることに全く気づいていない。
何とも魅惑の感触……どうせならもうちょっとこの独特の感覚を楽しみたいところなのだが……
「とりあえず聞けウォシュレッター。 それを回避するいい方法があるんだ」
オレは下半身の気持ちよさにこの上ない幸せを感じながらウォシュレッター女に小さく囁く。
「回避する……いい方法!?」
「あぁ。 それはウォシュレッター……お前が虐められた友達に『誰に虐められたか』を聞き出し、オレに報告することだ」
オレがニヤリと微笑むと、ウォシュレッター女は「なんでだよ」と尋ねてくる。
「そいつらを脅してオレの奴隷……いや、味方にしたくてな」
「そいつらって……私と同じ出身だった子らのことだよな?」
「あぁ」
「何で?」
「ちょっとうちのクラス……3組に面倒な女がいるんだよ」
「面倒な女?」
オレはその女……結城の隣の席のウザ女のことをウォシュレッター女に話す。
するとウォシュレッター女はやはり顔なじみだったのか、「あー、村井か」と頷いた。
「さすがは同じ学校出身だな。 知ってたか」
「まぁね。 なんだかんだで村井、私ら女子の中では結構やんちゃな奴だったし」
「そうなのか?」
「うん。 村井に虐められて学校やめたやつも男女問わずいたはずだよ」
「なるほどな。 もうちょい詳しく聞かせてくれ」
ウォシュレッター女曰く、その女の名前は村井。 聞く限りだと1年前のドン西園寺と同じような立場の人間だったらしい。
ただ村井はヤンキーの男子共とも結構ツルんでいて味方が多かった……ここが孤高のクイーンとして君臨していた西園寺とは違うところだな。
となると今がいいタイミングじゃないか。
幸い(?)なことに先週高槻さんに手を出し、マドンナ・水島とその西園寺によって成敗された村井の味方・日焼け男は出席停止扱いになっているし、他の男子たちも水島のファンになったり西園寺組に制圧されたりと、男の勢力は確実に弱まってきている。
あとはその村井チームに属する女子たちを少しずつ削いでいけば……いずれはこっちの勝利じゃないか?
待ってろよ結城……早くその隣の席に座っている汚物をオレが取り除いてやるからな。
その後ウォシュレッター女はオレに報告する選択を選んだ方が楽しい学校生活を送れると認識したらしくオレの提案を容認。 「何かあればすぐに連絡しろよ」と互いに連絡先を交換したのであった。
オレの連絡先を見ながらウォシュレッター女が「へぇ……アンタ、福田ダイキって言うんだ」と小さく呟く。
なのでオレも一応こいつ……ウォシュレッター女からもらった連絡先情報に目を通したのだが……
【連絡先】ERAちゃん
「ーー……エラちゃんってなに? なんでフルネームじゃないの」
オレがそう尋ねると、ウォシュレッター女が「別にいいだろ自由じゃん」とオレの質問を突っぱねる。
「いや、そうじゃなくてな。 じゃあオレは今後お前を見かけるたびに『エラちゃーん』て呼ぶけどいいのか?」
「なにそれキッショ」
「だろ? だからオレの方で編集しとくからフルネーム教えろ」
こうしてオレはようやくこのウォシュレッター女の名前を知ることに。
ウォシュレッター女が口を開き、オレはその声に耳を集中させたのだが……
「えらまこ」
ーー……ん?
「すまん、もう一回」
「え? だから、えらまこ」
「ーー……え? エロマン……?」
「ーー……!! ち、違う!! スマホ貸せ!!!」
ウォシュレッター女は顔を真っ赤に紅潮させながらオレのスマートフォンをぶんどると、自ら名前を入力していく。
そして打ち込み終えたのか「こうだよ、こう!!!」とオレに荒々しくスマートフォンを返してきたのだった。
【連絡先】江良 麻子
「あーーー!!! えら、まこね!!! オレてっきり何でこいつ急に下ネタ言い出したのかと……!」
「フッざけんなゲス!!! 次言ったらガチでシバくからな!!!」
ウォシュレッター女……もとい、江良麻子は「フンッ」と鼻息を立てながらそっぽを向く。
しかし今のオレにはそんなことどうでもよくて……
「あのさ、とりあえずもう手遅れだから言うんだけどさ、出るわ」
オレの意味深な言葉に江良が再びこちらに視線を戻してくる。
「ハ? なにが?」
「あのな、この状況……分からないか?」
そう、先ほど連絡先等を交換したのだが、それは前の体勢のまま……禁断の聖域に動物が足を踏み入れた状態のまま行われていたのだ。
その間にも江良は細かく動いていたわけで……
動物『ハックショーーーーン!!!!!』
うん、禁断の聖域内では花粉が多く舞っていたのだろう。
動物はこの上ないクシャミをぶちかまし……しかし江良はまだ何が起こったか全く理解していない様子。
「ーー……ん、何でピクピク震えてんだよお前。 ていうか、なんだ? なんか急に下が熱く湿っ……」と言いながらゆっくりと視線を下の方へと移していった。
「ん? なんだこれ、私のパンツに何かついて……」
江良はそれを軽く指先で確認すると、その指先を鼻の方へ。
それがいったい何なのかを調べるため、クンクンと嗅ぎだしたのだが……
「ん? なんだこれクッサ。 これどこから……あれ、何でアンタのここ謎に湿って……あっ」
ーー……あ、気づいたか。
「ああああああああああああ!!!!!!!!」
それに気づいた江良はより顔を真っ赤にさせて保健室から逃走。
オレはと言うと……急いでクシャミを洗い流し、1時間目の授業が終わるまで永遠と置いてあったドライヤーを当てて乾かしていたのだった。
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