421 朗報モーニング!!
四百二十一話 朗報モーニング!!
結城との楽しいデートのようなイベントからドSの女王・小畑とのデンジャーな夜を越えたオレは精神的にも体力的にも疲れていたこともあり、翌日の日曜日は朝から生きた屍状態。
どうやらお昼頃に小畑の母親が家まで迎えに来てくれるらしく、それまで小畑はウチで待機することに。
優香が朝食を作ってくれているなかオレと小畑がソファーに腰掛けながらテレビを見ていると、突然小畑が手にしていたスマートフォンに視線を向けながら「ええええええ!?」と叫んだ。
「うわあああビックリした! どうしたの小畑さん!!!」
一番近くにいたこともありオレが体を若干浮かせるほどに飛び上がりながら驚くと、小畑が「ちょ、ちょっとこれ……みみみみ見て!!」と手を震わせながらスマートフォンの画面をオレに向けてくる。
何やらメールのようだけど……
オレは『まさか小畑母が来れなくなったとか言わないよな』とか心の中で思いながら書かれている文章に目を通すことにした。
【受信・運営事務局】3次審査通過のお知らせ。 おめでとうございます。 つきましては下記のリンクにアクセスしーー……
「ええええええええええ!?!?!?」
小畑とともに記載されていたURLをタップすると、そこには色々と長ったらしい文章が。
簡単に説明するとこんな感じとなる。
・3次通過おめでとう。 次は4次……メイプルドリーマーとの合同合宿になるよ。
・金曜日の朝から日曜日の夜までやるから、学校とかある人は休んでね。 木曜日の夕方集合だよ。
・それで合宿ってことで泊まりになるから、パパやママの同意が必要になるの。 データがあるからコピーして、それに書いてもらってね。
・必要な持ち物書いてるから、忘れないようにね。
・4次通過したら内定だよ。 頑張ってね。
「お……小畑さん、昨日あれだけ落ちたって言ってて受かってるじゃん」
オレは自分のことでもないのに指をガタガタと震わせながら小畑を指差す。
「だ、だって完全に比較されたって思ったんだもん!」
小畑も少しずつ実感が湧いてきたのか体の震えが先ほどよりも激しくなっていき、最終的にはオレ以上に。
スマートフォンの文字も読めなくなるほどにガタガタと震え出し、「よかった……よかったあああああ!!!!」と女王の威厳等関係なく静かに涙を流し始めたのだった。
こうしちゃいられねええええ!!!!
オレはすぐさま自分のスマートフォンで時間を確認。
時刻はもうすぐ9時を回ろうとしている頃……ケーキ屋さんは確かほとんどがオープン10時とかそこらへんだよな。
丁度いいじゃないか!!!
オレは目にも留まらぬ速さでソファーから降りると自分の部屋へとダッシュ。
外出用の服に衣装チェンジするべくサニーズアイドル顔負けの速着替えを披露すると、財布を片手に玄関へと駆け出した。
「えええ、ダイキ!? そんなに慌ててどうしたの!?」
料理中の優香が「もうすぐ朝ごはん出来るよ!?」と困惑した様子で尋ねてくる。
「うん、朝ごはんは後で食べる……けど、小畑さんが3次審査通ったっぽいんだよ!」
「ええ!? そうなの!?」
「うん! だから今からお祝いのケーキを買いに行ってくる!!!」
オレがそう言いながら慌てて靴を履いていると、優香が「あああ、じゃあちょっと待ってダイキ!」とオレに『まて』を司令。 優香が急いで自室へと向かうと、「だったらこれ、使っていいよ」と少しぶ厚めの封筒をオレに渡してきた。
「ん、なにこれ」
中を覗くと大量の1万円札。
オレがテンパりながら「え、えっと……お姉ちゃん、これは?」と尋ねると、優香は少し照れくさそうに「あはは」と笑う。
「お、お姉ちゃん!?」
「実はね、これ……お姉ちゃんが退院した時にもらったお祝い金なんだよね。 いらないって言ったんだけど、みんな聞かなくて」
「そ、そうなの!?」
「うん。 それでこのお金は何かあった時にしか使わないようにしようって決めて引き出しの奥にしまってたんだけど、今が使いどきの1つかなって思ってね。 ほら、ダイキもあんまりお金ないだろうし」
ゆ、優香国のみなさんーー!!!!! ありがとうございまああああああす!!!!!
オレは「それじゃあ」と国民全員に感謝をしながら1万円札を1枚拝借。
優香に小畑のことをお願いし、全速力で近くにあるケーキ屋へと向かったのだった。
もちろんこれ……メールも欠かさねえぜ?
【一斉送信・エマ、三好、多田】小畑さんから連絡行ってると思うけど、3次審査通ったらしい!!! だからパーティーだ!!! 来れる場合は1時間後を目安にうちに集合してくれ!!!
◆◇◆◇
大体1時間後。
優香から貰った充分すぎる金額でホールケーキを2つ購入したオレは箱の中身が崩れないよう慎重に運びながら家へと帰宅。
インターホンを鳴らすとすでに到着していた三好や多田・エマにエルシィちゃんがオレを出迎えてくれた。
「おかえり福田。 てかなんで美波が福田ん家いんの?」
「福田おかえりー。 ウチも呼んでくれてありがとね」
「ダイキ、中々の行動力ね」
「だいき、おかりーなちゃーい!!!」
オレはケーキを皆に渡すと肩を回しながらリビングへ。
するとそこにはまさかの小畑母の姿。 優香とお茶を飲みながら楽しそうに談笑しているではないか。
「あ、おかえりダイキ。 美波ちゃんのお母様も一緒に祝ってくれるってさ」
「そっか。 じゃあ2つケーキ買ってきて正解だったね」
オレは結構早く到着したんだなと心の中でツッコミを入れながらも「あ、お久しぶりです」と小畑母に会釈。
軽く挨拶を済ませていると優香が気を利かせたのか他のデリバリーが届き出し、小畑第3次審査合格おめでとうパーティーが開催されたのだった。
パーティー自体は皆ワイワイ楽しく話し、小畑自身も満更でもないのか幸せそうに三好たちと盛り上がっていたのだが……
「ていうか美波、なんで福田ん家にいたの?」
三好がジュースを飲みながら「そういえば」と小畑に尋ねる。
「あ、それウチも思った! 福田も美波のオーディションに付いてってたの?」
「ううん、違う違う。 んなわけないじゃん」
小畑が「偶然駅で福田見つけたから喋ってただけだよ」と笑いながら首を振る。
ーー……うん。 ちょっと違うな。
勝手にオレを見つけて後ろから飛び蹴りを食らわせてきて、メール返信しなかったことに腹立ててたんだよな。
小畑が「だから佳奈、怒んないでよー」と三好の背中をポンと叩くと三好が「はああああ!?」と反応。
「怒ってないし! ていうか喋っただけでなんで福田ん家いんのさ」と再度尋ねると、小畑が少し恥ずかしそうに「あー、それはねー」と話しだした。
「実は帰ろうとしてたら急にお腹痛くなっちゃってさ。 しゃがんでたら福田が生理と勘違いしちゃって慌てて福田ん家まで運んできてくれたんだよね」
この小畑の言葉に三好や多田・エマが「あー、なるほどね」と納得。
その後ろで何故か小畑母が「やんっ!」と嬉しそうな声をあげていた。
ーー……とりあえずその嬉しそうな理由は分からないけど聞かなかったことにしておこう。
「ゆかー、ゆかーも、おんなのこのひ、なるんなー?」
皆が盛り上がっている中、エルシィちゃんが優香の腕を引っ張りながら尋ねる。
「うん? エルシィちゃん、なんで?」
「エッチーも、おんなのこのひ、なるうー?」
「うん、大きくなったらなると思うよ」
「そーなぁ。 なったら、どーなるー?」
「んーとね、大人になるんだよー」
「おとななぁー? エッチーも、おとな、なれるんなー?」
「そうだね、なれるよー」
「そうなぁ!!!」
優香の回答を聞いたエルシィちゃんの表情が一気に明るくなる。
そして何を思ったのか「エマおねーたん、カニャちゃ、マユちゃ、おばちゃーん!」とエンジェルボイスを発しながら、可愛らしい歩幅でエマたちのもとへと駆けていく。
「どうしたのエルシィ」
エマたちの視線がエルシィちゃんへと集合。
もちろんそこにオレや優香、小畑母も視線を向け、エルシィちゃんの発する次の言葉に耳を傾けたのだが……
「みんなは、おんなのこのひ、なったんなぁー?」
「「「「!!!!!!!」」」」
ここで何故か全員の視線がオレの方へ。
これはオレがいてはいけない状況……それを察したオレは速やかにその場から退散し、リビング内の声がギリギリ届くような距離で聞き耳をたてることにしたのだった。
中では男のオレがいなくなったからなのか、よりディープな女の子の日についてのトークが繰り広げられていっている。
この男子禁制的な内容……なんかいけないことをしている気分になっちまうぜ。
そこからオレは女子限定トークに若干興奮しながらも、なるほどな……というような女の子の日情報や役に立つアイテム等の知識を頭に入れていったのだった。
ーー……ていうかあれ? オレ、主催者だよね何でハブられてんだろ。
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