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42 脳内ではマーライオン【挿絵有】

2021/02/06挿絵ラフですが書き換えました!


 四十二話  脳内ではマーライオン



 放課後。 西園寺をこっそりと呼び出したオレは、誰もいない4組の教室でオレのスマートフォンに映る2人が一体誰なのかを尋ねることにした。



「あ、この2人は堀田さんと野村さんだよ」



 西園寺が画面に指差しながら答える。



「なるほどな」


「えっと……堀田さんたち、福田くんに何かしてるの?」


「まぁな。 ほら、これ見てみ」


「これ?」



 オレは今朝引き出しに入れられていた紙を見せる。



「ーー……え、これ『しね』って書いてるじゃない」


 

 西園寺が心配そうな顔をしながらオレを見る。

 それもそうか、元々はその2人も西園寺の取り巻きだったんだし、自分が指示したように思われても嫌だもんな。

 なのでオレは前もって「いやあれだぞ西園寺。 別にオレはこれをお前が指示したわけではないってことは知ってるからな」と伝えておく。



「そ、そっか。 よかった……私本当に何も知らなかったから」


「うむ。 まぁだから自分に火の粉が飛んでくる……とかそういうことは考えなくていい」



 このオレの言葉に安心したのか西園寺はホッと胸を撫で下ろしながら改めて視線をオレが見せた紙へ。

「でもこの2人、前に音声録音されて何もしなく……出来なくなったはずじゃ……」と小さく呟いた。



「そうなんだよ。 それがオレも理解できなくてな」


「どうする? 私からやめるように言っとこうか?」


「いや、それはやめてくれ」


 

 オレは西園寺の提案を即座に拒否。 首を左右に振りながら西園寺の腕を掴む。



「え? なんで?」


「別に物理的にやられてるわけじゃないんだ。 今日お前を呼び出したのは単にこいつらの名前が知りたかったから。 あとオレはこのくらいのことじゃ何も思わないからさ。 それよりも……」



 話を一旦落ち着かせたオレは目を細めながら西園寺の足へと視線を落とす。

 なんかさっきからこいつ、下半身を妙にモゾモゾさせてんだよな。

 オレの視線に気づいたのか西園寺は若干顔を赤らめながら「な、なに?」と尋ねてくる。

 


「いやさ、お前何そんな足内股にして動かしてんだ? もしかしてこの後急ぎの用事とかあった?」



 もしそうだとしたら……相手を待たせちゃってるとかそういうのでソワソワしてたのなら申し訳ない。

 そんなことを考えながらとりあえず謝ろうとしていたオレだったのだが……



「う、ううん、別にこの後用事があるとかそんなんじゃないの」



 西園寺は顔を赤らめたままオレの考察を否定。

「だからあまり気にしないで……」と冗談ぽく笑う。



「ん? じゃあなんで?」


「え」


「なんでそんなソワソワしてんだ」


「そ、それは……」



 西園寺は一瞬オレから目を反らすもすぐにまた戻す。

 そして何故か目をキラキラと輝かせながら嬉しそうに口を開いた。



「ん? 西園寺?」


「その……あのね、私今、おしっこを我慢してるの!!」



 ーー……。



「んんん!?!?」



 隠す必要がなくなったからなのか、西園寺は股のあたりを軽く両手で押さえながら恥ずかしそうに唇を尖らせる。



「え、ト、トイレ?」


「うん」



 あーね、なるほどな。

 漏れそうだったからそんなにソワソワしてたわけか。 それは申し訳ねぇ。



 オレは「それはすまなかった。 とりあえず漏れたら大変だし早く行ってこい」とトイレのある方向を指差しながら西園寺に離席を促すも何故だろう……西園寺は一向にトイレへと向かおうとしない。



「え、西園寺。 行かないの?」


「うん」


「なんで。 漏れそうなんだろ」


「うん」


「じゃあ行けよ」


「ち、違うの!」



 突然西園寺が大きな声で否定してくる。



 ーー……は? どういう意味だ?


 

 オレは頭上にはてなマークが数個発生。

 意味がわからない……トイレに行きたいのなら行けばいいじゃないか。 なんだ? そういうの恥ずかしいお年頃のか?


 そんなことを考えながらもオレは西園寺に「いや、トイレを我慢してるって言ったのお前じゃねーか」と尋ねてみたのだが……

 


 

「その……私、これやってたの」


「これ?」



 西園寺がポケットから自身のスマートフォンを取り出し何かを検索……画面に表示させた状態でオレに見せてくる。



「ん? ここに書いてるのか?」


「うん」



 スマートフォンを受け取ったオレはそこに書かれていた文章に目を通していく。



「なになに、尿意を限界まで我慢した後に待っている快感……?」



 なんつー変態的なサイトを読んでいるんだこいつは。

 オレは「おいなんでこんなページオレに読ませるんだよ」とツッコミを入れながらも続きを声に出しながら読んでみることに。

 するとそこには衝撃的な内容が書かれていたのだった。



「ーー……尿意を耐えている時の、いつ漏れるかもしれないという不安。 耐え切ったとして、トイレまで歩いて向かうことができるのか……といったスリル。 もし近くに人がいた場合、その人に漏らしているところを見られてしまったらどうしよう……という尊厳の危機。 その全てをクリアして便器を前にした時、あなたは生まれて一番の快楽を得ることができるでしょう??」



 ◆◇◆◇



「ーー……なんだこれ」



 オレははてなマークを倍に増やしながら西園寺へと視線を戻す。



「凄くない!? 私ね、これ想像するだけですごくドキドキしたの!!」



 西園寺が小刻みにジャンプしながら嬉しそうに答える。

 


 へ、変態だああああああああ!!!!!!



 オレは心の中で西園寺を完全な変人として認定しつつもここで漏らされてもかなわないので「いや、もう限界なんだろ!? じゃあ早く行けよ!」と焦りながら再びトイレを指差す。



「タイミング見失ったのーー!! もう限界だって思ってお手洗いに行こうって思ってたら福田くんに声かけられたんだもんっ!!」



 西園寺が小さく涙をためながらオレに訴えてくる。



「えええええ!! ま、まじか!! それは流石にすまなかった。 じゃあとりあえず早めにトイレに……!」


「無理。 もう歩けない」



 西園寺は完全な内股になり、両手で下半身を強めに押さえて前のめりになりながら声を震わせる。



 なん……だと……!?!?



「ーー……ということはもう?」


「一歩でも歩いたら決壊しちゃう」



 決☆壊!?



 うわーーーい!!! これはファンタスティックタイムの始まりダァーーーー!!!

 西園寺の発言にガチ感を感じたオレは背中に見えない悪魔の翼をバサリと生やし、その後ニヤリと口角を上げた。



「ーー……で、西園寺。 お前はなんでそんなことをしようとした?」



 そんなオレの質問を受けた西園寺の答えは「だって気持ちいいって書いてたんだもん」という快楽に正直なもの。

 オレは「な、なるほどな」と若干引きつつも我慢をしている西園寺があまりにもエロく感じたため、「とりあえずはい、これ」と先ほど借りていたスマートフォンを西園寺に返す。



「あ……ありがとう」


 

 西園寺は小さく手を伸ばしてそれを受け取ると、ポケットに入れる余裕はなかったのだろう……スマートフォンを持ったまま素早く下半身を押さえる。

 そしてここで何かを発見したのか「ーー……あ、これいいかも」とスマートフォンを下半身に押し付けながら小さく動いた。



「お、動けるのか」


「うん、いい感じに平らで固いスマホが当たって安心する」



 そう言うと希望を持った西園寺は小さく一歩……また一歩と教室の扉へ。 女子トイレを目指して動き始めたのだが……



「手伝ってやろうか?」


「ううん、大丈夫ありがとう。 ちょっとした反動が命取りだから……」


「ーー……そうか。 そういえば西園寺、お前ドMだったよな」


「え?」



 西園寺の動きが止まる。



「そ、そうだけど……なんで?」



 西園寺が恐る恐るオレの方を振り返る。

 その表情はかなり複雑なもので、何かをされるかもという期待感と、今この状況で何かをされたら確実に我慢している何かが決壊してしまうという焦燥感。 オレはどちらの感情が勝っているのかを確かめることにした。



「知ってるか? 人前で漏らす行為って、めちゃめちゃ恥ずかしいらしいぞ。 ドMのお前にちょうどいいんじゃないか?」


「な、何言って……!! 今はそんなこと言ってる場合じゃ……!!!」


「なるほど、焦燥感の方か」



 静かに理解したオレを置いて西園寺が再び教室の扉に向かって動き出す。

 踏ん張り頑張っているところ申し訳ないのだが……



 さぁ、ショータイムの始まりだ!!



 オレはスマートフォンを取り出し、慣れた手つきで電話帳を開く。

 そこから【西園寺 希】と書かれたところをタップ……電話番号を表示させた。


 クックック、さっきスマートフォンを渡してもらった時にさりげなく通信して連絡先ゲットしといたんだよねぇ。

 オレはその電話番号に指を添え、西園寺の後ろ姿を見つめる。


 ーー……西園寺、オレはお前のドM人生を華やかにしてあげたいだけなんだ。 オレは漏らしたことはないのだが、相当気持ちのいいものらしいぞ。


 オレは西園寺の背中に優しく微笑みかけ、そしてゆっくりと添えていた電話番号をタップした。



 グッドラック!!



 ブーーーーーーーッ、ブーーーーーーッ



 オレが画面をタップしたと同時にマナーモード状態の西園寺のスマートフォンが小刻みに振動し出す。



「ーー……!?!?!?!?!?!?」



挿絵(By みてみん)



 それはまさに一瞬。


 西園寺は声にならないような声をあげ、一瞬体を大きく反応させたかと思うとそのまま膝をつくように崩れ落ちていく。

 その後のことは……言うまでもないよな。



 全てを見届けたオレは西園寺に歩み寄り、肩に優しく手を置いた。



「なんか、ここはオレのクラスではないけど掃除したい気分だな」


「ーー……うん」


「いいもの見せてもらったぜ。 ありがとうな」


「う、うん……?」



 それからオレは床の雑巾掛けを開始。 魅惑のものを拭き取っている間、オレの脳では何故か海外にある口から水を吐いている……あの有名なライオンが脳内に浮かんでいたのだった。



 マーライオンだったかな?



「あー、とりあえずオレもスッキリしたいぜ」


「お、お手洗い? だったら私ここやっておくから行ってきていいよ」


「いや……そっちのスッキリじゃねーんだわ」


「??」




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[一言] くっっ。最高です。最高です。ドM J S最高すぎる
[良い点] 携帯電話の振動が!!!! 携帯、そこを代われ! [一言] 恥ずかしそうな表情がいいですね! 最高です! ありがとうございます!
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