414 勘違いしちゃう!!【挿絵有】
四百十四話 勘違いしちゃう!!
思ったよりも楽しめたプラネタリウムを終えたオレの目に飛び込んできたのは、静かに涙を流しながら天井のスクリーンをジッと見上げている結城の姿。
オレはどう声を掛ければいいのか戸惑ったのだが……このままというわけにもいかないよな。
「えっと……結城さん? 大丈夫?」
そう声をかけると結城はゆっくりと視線をオレの方へ。
「えへへ……始まる前は私が泣いてる福田くん心配してたのに、逆になっちゃったね」と涙を指でぬぐいながら笑った。
「結城さんも花粉症……とかじゃないよね」
オレの問いかけに結城は「違うよ」と優しく首を左右に振る。
その後再び天井のスクリーンを見上げながらこう言ったのだった。
「宇宙にはたくさんの星があって、地球みたいに安全な星はまだ見つかってないし、見つけるのも大変って言ってたでしょ?」
「え、うん」
急に何を言ってるんだ……?
「それ、人でも同じだなーって思って」
「ーー……え?」
オレが結城を見ながら首をかしげると、結城はゆっくりと口を開いて続きを喋り出す。
「それを聞いて私、少し前の自分を思い出したの。 前までの私は、家には怖かったママやママの彼氏がいて……学校ではいじめられちゃってて、私が心から安心できるような場所なんてなかった。 でもね、福田くんはそんな私に安心できる場所を作ってくれた」
結城が涙で潤んだ瞳でオレの優しく微笑みかけてくる。
「ーー……!!!」
「それで私は……私にとっての安全な星……見つけられたんだって思ったら、今更なんだけど急に安心しちゃって。 それで嬉しくて思わず泣いちゃってたんだ」
結城が「ごめんね、感情がぐちゃぐちゃになってて……私、何言ってるのか分からないよね」と言いながらゆっくりと席から立ち上がる。
「ゆ、結城さん」
なんなんだ……なんなんだこの無性に抱きしめたくなるような感情は!!!!
これは父性なのか恋心なのか……それはよく分からんが、オレが今結城に言えることはこれしかない!!!
オレは「ほら、じゃあお土産買いに行こう?」と手を差し伸べてくる結城に対し、こう伝えたのだった。
「ゆうぎ……ざん……!! ごぢらごぞ、ありがどおおおおおおおおおおお!!!!!!」
オレは溢れ出る涙や鼻水を解放させながら結城の手を握りしめる。
その後はというと……オレは結城から多くのティッシュをもらい、なぜか結城に背中を摩られるながらあやされる羽目となってしまったのだった。
冷静に考えたら結城が泣いてるのを見つけた時点でオレがそうしてあげるべきだったというのに……どうしてこうなったアアアア!!!!
「ほら、福田……くん、見て」
今、オレの目の前にはオレをあやそうと必死の結城。
先ほど買ったのだろう……水色のクラゲ型宇宙人のぬいぐるみの足を持ちながらオレに話しかけてきた。
「痛いの痛いの、飛んでいけー」
バブバブバブバァーーーーーーーーーーー!!!!!!!
◆◇◆◇
プラネタリウム後に向かった場所はお昼時……ということもあり近くのファーストフード店。
そこで先ほどのプラネタリウムの感想で盛り上がっていると、結城が何かを思い出したように「あ、そうだっ!」とスマートフォンを取り出した。
「どうしたの?」
「あのね福田……くん、ご飯終わってからとかでもいいんだけど、後で写真撮ってほしいの」
「写真? いいよ。 撮ったげるけど、どの方向で撮ろっか」
オレが結城のスマートフォンに手を差し出しながら尋ねると結城が「あ、違う……違うの!」と激しく首を左右に振る。
「え?」
「私、福田……くんと一緒に写真を撮りたいの」
「ーー……え、ええええええええええええええ!?!?!?!?」
ななななな、なんだってえええエエエエエエエエエ!?!??!?
ちょうど咥えようとしていたポテトが勢いよく喉にブスリと突き刺さる。
オレは喉の痛みに焦りながらも何故そんなことを提案してきたのか……まさかこれは脈アリなのではないのかと超テンションを上げながらその理由を聞くことにした。
「ゆ、ゆゆゆゆ結城さん!! それはなんで!?!?」
オレの問いかけに結城は一瞬沈黙。
これはもう勝ち確定イベント決定じゃねえかああああああ!!!!
ここは……オレが男を見せるしかないだろう!!!
人生の勝利を確信したオレは結城が言葉にすることが恥ずかしいのだろうと思い、こちらから切り出してみることに。
そしてオレが大人の余裕を見せつけながらクールに問いかけようとした……その時だった。
「もしかして結城さん、オレのこと好……」
「前にママがね、私と福田……くんが楽しそうに遊んでる写真を見たいって言ってたの」
結城がオレの言葉を遮りスマートフォンを握りしめながらオレを見つめる。
「え」
その後結城から詳しく話を聞いてみると、どうやら結城母は楽しんでいる姿の結城の写真をご所望とのこと。
なんでもそれがあれば病気と闘う気力が湧くんだとか。
そしてこのほぼデートっぽい内容も、結城母がオレと遊びに行ってお土産話を聞かせて欲しいと言っていたかららしい。
それを聞いたオレは「え、ていうかなんでオレなんだろ」と頭上にはてなマークを浮かばせながら尋ねる。
「それは私にも分からないの。 でもママは福田……くんと一緒に遊んで欲しいって言ってて。 私も福田……くんのこと好きだし、イヤじゃないから誘ったんだけど……ごめんね、こんな理由で誘っちゃったりして」
結城が「ごめんなさい」と小さく頭を下げる。
「好っ……!? あーいや、オレは別に!! オレも結城さんと出かけられて楽しいし、誘ってくれて嬉しかったよ!」
「うん、ありがと」
「じゃあこれ食べ終わったら外でいっぱい遊んで……それでお母さん元気付けるようにいっぱい写真撮ってお土産話用意しないとね!」
うわあああああああ!!!! 舞い上がってたオレ、クソだせええええエエエエエエエエエ!!!!
オレは恥ずかしい気持ちを払拭するかのようにより一層明るく振舞いながら結城に提案。
スマートフォンを取り出して周辺施設を検索し、昼食後どこをどう回るかについて結城と楽しく盛り上がったのだった。
「あ、そうだ結城さん」
「なに?」
「あの……そう簡単に好きって言わない方がいいよ」
「??」
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