413 運命の土曜日!!【挿絵有】
四百十三話 運命の土曜日!!
土曜日の朝。 そろそろ家を出る時間かと胸を高鳴らせながらスマートフォンに表示された時間とにらめっこをしていると、突然家のインターホンがピンポンと鳴った。
「ーー……ん、誰だ?」
ちなみに優香は新しいクラスでの懇親会とやらでオレよりも早く外出しているため家にはオレ1人だけ。
……一体誰が何の用で?
オレは気持ちが高まっていたところに水を差されたことで、少々不機嫌になりながらも「はいはーい」と玄関の扉を開けたのだが……
「ふ、福田……くん、迎えに来たよ!」
「ええ……ええええええええええ!?!?!?」
扉の先にいたのはまさかの結城。
オレは予想とはまったく違った訪問者に驚きの声をあげる。
「ゆ、ゆゆゆ結城さん!? なんで!? 待ち合わせ時間は30分後で……駅前集合じゃなかった!?」
「うん。 それで私、家を出ようとしたんだけど……もしかしたらもうすぐ福田くんも出るかなって思って。 だったら一緒に行こうかなって……えへへ」
か、かわええええええええええええええええ!!!!
いや……かわE通り越して、かわFですわあああああああああああ!!!!!!!
◆◇◆◇
向かった場所は最寄駅から数駅行った少し大きめの街。
結城曰くどこに行きたい……とか明確な目的はないようで、とにかくいっぱい遊びたいとのこと。
なので一応オレもいくつか候補をチェックしていたわけよ。
それでオレが結城を連れて向かった先が……
「うわぁ……私、プラネタリウムって初めて」
そう、プラネタリウム。
館内に入ると結城が目をまるで星のようにキラキラと輝かせながら周囲を見渡す。
「あ、見て福田……くん、宇宙人のぬいぐるみ売ってるよ! それにあそこには宇宙食だって……すごいね!」
「うん、結城さん、とりあえずオレ、チケット買ってくるね」
まさか上映ルームに入る前にここまで楽しんでくれるとは……昨日ギリギリまで調べておいて正解だったぜ。
オレはチケット売り場の列に並びながらお土産コーナーで楽しんでいる結城を眺め、小さく呟いた。
「それにしてもあれだな……結城のやつ、宇宙人ぬいぐるみもクラゲっぽいやつ選ぶのな」
◆◇◆◇
上映ルームの中に入ると、そこはそこそこ大きな広さ。
指定されていた席に座り隣の結城に顔を向けると、結城が未だ目をキラキラさせながら天井に広がっているドーム状のスクリーンを眺めている。
「私、上を向きながら観るのって初めて。 まるでお空の映画館みたいだね」
あぁ……世界遺産並みに可愛い。
そして昨日水島が言っていた結城に隠れファンがいるって話……ちくしょおおおおお!! どこのどいつだよ!!! そりゃあこんなに可愛いんだ……ファンの1人や2人、いてもおかしくないもんなああああああ!!!!!
オレがそんな嫉妬心をバチバチに燃やしていると、オレの視線に気づいた結城が「どうしたの?」と尋ねてくる。
「私の顔……何か付いてる?」
「あーいや!! ごめん、あまりにも楽しそうだったからついつい見ちゃってた」
そう焦って答えると結城はクスッと微笑み視線を再び天井のスクリーンへと戻した。
「うん、楽しい」
「え?」
「楽しいよ。 私、あまりママに遊びに連れて行ってもらえてなかったから……今、すっごく楽しい」
「!!!!」
あれ……なんだろう目から何故か涙が……。
オレの脳内では結城と初めて出会った……あのハンカチを拾って声をかけた日の情景が浮かび上がり、それから今に至るまで……いじめられ、母親とその彼氏に見捨てられ、かつ暴力も受け……、ようやく母親と上手くいったかと思えば今度は母親が入院して……と、かなり壮絶な結城との思い出が一気に駆け抜けていく。
「あれ? 福田……くん、泣いてるの? 大丈夫?」
「あ、うん。 ごめんね、ちょっと今日は花粉が多いみたいで」
「そう。 もしティッシュとかハンカチ必要だったら言ってね。 私持ってるから」
「うん……ありがど」
それからしばらくして室内が徐々に暗転。
アナウンスの方の解説とともに、室内での宇宙ショーが始まったのであった。
◆◇◆◇
プラネタリウムといえば皆はどんなイメージを思い浮かべるだろう。
ちなみにオレは前世で行った記憶があるっちゃああるんだが、それでも子供が喜ぶための施設程度に思っていたんだ。
しかし……
「な、中々良かった」
上映終了後、オレはポツリと感想を呟く。
内容としては序盤で星の簡単な説明や星座の名前……そして古代の人々がどう星座と向き合っていたのか、後半では星々をうまくストーリーを組み込んで壮大な宇宙の旅に出かけた感じだったのだが、それがかなりのクオリティー……全然子供騙しとかではなかったのだ。
やはり時代……科学の進歩もあるのだろう、迫力がオレの中にあった記憶と全然違ったぜ。
アナウンスの方の最後の挨拶終了後、室内が少しずつ明かるくなっていきオレは軽く背伸びをしながらゆっくりと立ち上がる。
「いやぁ、楽しかったね、結城さん」
今回の感想を結城と楽しみ合うため、オレは結城の座っている方へと視線を向けた……のだが。
「え」
オレはその先にいる結城の姿を見て言葉を詰まらせる。
一体どうしたというのだろうか……結城は静かに涙を流しながら、真っ白に戻った天井のスクリーンをジッと眺めていたのだった。
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結城ちゃああああん!!!




