41 これも未来のため
四十一話 これも未来のため
図工室前の女子トイレ内個室。 三好がオレのスマートフォンの画面を覗きながら声を漏らした。
「これ……うちのクラスの子じゃないね」
そう、そこに映っていたのは……
「あぁ、4組のあれだ……西園寺の取り巻きだった子たちだな」
映っていた人数は2人。 2人とも4組の子で楽しそうに会話しながらオレの机の引き出しに紙を入れている。
オレの動物園入園者だったからなんとなく顔は覚えているぜ。
「それで三好、名前わかるか?」
「えーと……、ちょっと思い出せないかな。 なんせあんまり印象ないし。 今まで同じクラスになったこともないからさ」
「なるほどな。 じゃあ後で西園寺に聞いとくよ」
「うん、それがいいかも」
あまり名前を覚えられてないところからすると、こいつらは所詮はモブキャラ。 大した相手ではなさそうだな。
オレがそんなことを考えていると、三好が「で、どうするのこの子たち」と尋ねてくる。
「どうする……とは?」
「またなんか罠とか仕掛けるの?」
「いや、今回は何もしない」
オレはきっぱりと断言。
するとそれが予想外の返答だったのか、三好の口から「えっ」という声が漏れた。
「ん、どうした三好。 意外か?」
「うん……なんというか、何もしないんだなーって」
三好が小さく頷きながらオレを見上げる。
「いやだってさ、実害ないんだぜ? 勝手にやらしとけばいいだろ」
「まぁ……そうなんだけどさ」
「なんだよ」
「ううん、福田ってなんでも倍返しするんじゃないんだって思ってね。 ちょっと見直したかも」
え、なんでちょっと嬉しそうな顔してんだこいつは。
そしてオレが何の考えもなしに放っておくわけがねーだろ。
オレは心の中で三好に突っ込む。
あいつら、以前オレに音声取られて脅されながらも尚オレを追い詰めようとしてるんだ……まぁあの時は西園寺に加勢しないように取った安全策だったわけだが。
しかしこのまま放置して少しずつ悪戯……いじめレベルを上げさせていけば、上手くいけばまたオレの動物園を見に来てくれるかもしれない。
こいつら他の子達よりも反応良かったからなぁ!!
オレがそんな理想の将来のビジョンを思い描いていると、隣で三好が「ーー……あれ、なんか福田悪い顔になってない?」と目を細めながら顔を近づけてくる。
「は? な、なななんで」
「いやぁ……なんとなく?」
「んなわけねーだろ。 とりあえず犯人はわかったことだし教室戻るぞ」
「はいはい」
これはあれだな。 表情から気持ちを読まれたことに焦りを覚えることよりも、ご主人様の表情を分かってきたことを喜ぶべきなのだろうな。
その後オレは三好を先に行かせ、周囲に誰もいないことを知らされてから女子トイレから脱出したのだった。
◆◇◆◇
「いやー。 いつも思うけどオレが女子トイレから出てくるところ、先生とかに見つかったら結構アウトだよな」
「いやいや! 私の方が危ないから!!」
教室へと戻ってる途中、他愛もない雑談の中でオレが日頃感じていたリスクについて感想を述べていると、三好がオレの脇腹にツッコミを入れてくる。
「三好の方が危ない? なんで?」
「だってそうでしょ。 福田、アンタは虐められてる設定なんだから悪者にされるの私じゃん。」
「あー、そうだな。 確かにそうだ」
もしそうなったら三好たちには重い処分が下ることとなる……大人陣にバレてオレの大事な奴隷をなくすことは本意ではないからな。
まぁ裏切り行為をした場合はまた別の話にはなるが……となれば女子トイレ内でオレを虐めてる時の声も気にさせないといけないか。
「だったらさ三好、この際だから言っとくけど」
「なに?」
「小畑さんにオレを虐めてる時、声をもう少し小さくするよう三好から伝えといてくれ。 今一番バレるリスクがあるのは小畑さんの声だからな」
「あー、そうだね。 美波、スイッチ入ると一気にテンション高くなっちゃうからね。 わかったよ」
そんな感じでオレと三好は今後のより良いイジメライフを送れるよう話し合いながら教室へと到着。
ちなみにその途中で例の2人……オレの席の引き出しに手紙を入れていた犯人とすれ違ったのだが、オレはそこで心の中からではあるが、熱いメッセージを送ったのであった。
早くオレの動物園まで来い。 今度は前までとは比べものにならない……最高のショーをお見せしてやるぜ。
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