408 心配事!
四百八話 心配事!
朝・全校集会。
体育館に全生徒の注目を集める中、ステージ中央に立った校長がこう宣言した。
「えー、隣町から来た生徒諸君! ここでは私が校長です。 大きな問題を起こせば前の校長が許していたことでも私は許しません。 肝に命じておくように!」
校長の言葉と同時に壁際で並んでいた教師たちが一斉に頷き出す。
おお、急に校長たちが動いたぞ。
確かに昨日……新学期初日にあそこまでの騒動が起こればそうなるのは仕方のないことなのかもしれないけどな。
◆◇◆◇
全校集会の帰り際。 隣町出身の生徒たちがブーブー喚いているのが耳障りだったオレはトイレに寄り個室で時間を潰そうとしたところ、すぐに誰かが隣の個室に駆け込んできたことに気づいた。
はじめこそオレは隣の人、相当お腹が痛かったのだろうなぁなどと考えていたのだが……
「ええ、はい。 それはもう姫のお望み通り、厳しく言わせて頂きましたよ!」
ーー……ん?
この声は校長だよな。 誰かと通話しているようだが……
姫?
「はい、ーー……いえいえとんでもない! 姫のおかげで私は楽しい校長生活を送れとるんですから! はい、それではまた……はい、失礼しますー!」
あーいや、まさかな。 校長が……そんな、ね。
◆◇◆◇
教室に戻ると残り10分ほどで授業が始まる時間。
オレは先ほど校長が通話していた相手のことを考えながら席に着くと、どうしたのだろう……何やらエマが思いつめたような表情でボーッと何も書かれていない黒板を眺めているではないか。
「どうしたエマ」
「んー? あ、ダイキ。 なに?」
エマが「いたのね」と軽くオレのことを影が薄いとディスりながら顔をこちらに向けてくる。
「なに……じゃないだろ。 なんかボーッとしてるけど調子悪いのか?」
「ううん、昨日の夜からちょっと……色々と考えてただけよ」
「そうなのか」
「そう。 いつも通りパンツ履かなかったらスッキリするかと思ったんだけど……そんなことなかったわ」
エマは「はぁ……」と深く息を吐きながら机に突っ伏す。
それに対してオレは「そ、そうか……」と言いながらそんなエマの姿を見ていたのだが……
「ーー……え、履いてないの?」
「そうよ」
「オーディションじゃないのに?」
「そうよ。 エマの場合それより前から履いてない日、多かったじゃない」
エマは「何よ今更」と机とおでこをこんにちはした状態でオレにツッコミを入れてくる。
確かにそうだ。
ていうかあれだな、今までも履いてない情報はたまに聞いてはいたが、実際に隣の席の女子が……このスカートの中覗けば履いていないのか……と思うと妙に興奮してくるぜ。
ーー……ゴクリ。
オレがエマの股のあたりに視線を集中させていると、それに気づいたのかエマが「なに?」と突っ伏していた顔を再びこちらに顔を向けてくる。
「あーいや、やっぱり信じてはいるんだけど……本当に履いてないのかなーって」
「当たり前でしょ。 え、見たいの?」
「そりゃあ見たいに決まって……」
「いいわよ別に」
「ですよねぇー」
オレは知ってましたよ的な表情をしながら視線を黒板へと向ける。
「ーー……」
「ーー……」
ーー……ん?
あれ、今エマ……なんて言った?
オレは数秒前の会話を遡りながらエマの肩をツンツンとつついた。
「えっと……エマ、今お前なんて言って……」
「え? 別にいいわよって言ったのよ」
「エエエエエエエエエエエエ!?!?!?!?」
オレはエマのまさかの返答に激しく動揺。
「マ……マジマジマジマジ!?!?」と小声で尋ねながらエマに顔を近づけていく。
「ええ、いいわよ」
「やったああああああ!!! じゃあ早速……」
「でも……エマの悩みを解決出来たらね」
「え」
エマが自身の股の部分をスカートの上から押さえながら微かに笑う。
「さてこの問題……ダイキに解決できるかしら」
おいおいなんだ? 解決するだけでスカートの中覗けるとかどれだけオレ得な条件なんだよ。
一体オレがどれほどの苦難を乗り越えてきていると思っていると!?
オレはもはやこれは勝ちゲームだと確信しながらエマに「出来る! 早く教えろ」と尋ねる。
するとエマは小さく口を開きーー……
「エマ……もしかしたら、モデルするかもしれない。 どうしよ」
「ハアアアアアアアアアアア!?!?!?!??!??」
その日の午前中はかなり静かな授業時間に。
校長が宣言したばかりだからなのか空いている教師が授業中も時折廊下等をチェックして周り、隣町出身生徒たちも流石にビビってしまったのか授業中無言。
そんな中オレの脳内では今朝のエマの言葉だけが永遠とループし、どうしたものかと頭を悩ませていたのであった。
あ、そういえば午前中の休み時間……結城にあの動画をどうするのか聞いてみたんだけど、あれから嫌がらせ受けてないから今は動かないんだってさ。
まぁオレからしたら何か起こる前に手を打って……あいつら排除しといた方が良かったんじゃないかとは思うんだけどな。
そしてその日の放課後。 オレの心配は現実となる。
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