405 ウォシュレッター女!【挿絵有】
四百五話 ウォシュレッター女!
今年初めに行われた隣町小との競技会以来での偶然の鉢合わせ。
オレに華麗に敗れた某音があの勢いよく便座下から吹き出る水並みの大きさの女子が顔を真っ赤にしたままオレにこう告げる。
「まさか新学期早々私を脅しに……!?」
うん、それはいい案だ。
オレはそう考えたのだが、気になるところはそれよりも他にあったのだ。
「ていうかお前……そんな見た目だったっけ」
オレはマジマジと目の前に立つ隣町出身……ウォシュレッター女を見つめる。
「ど、どういう意味だよ」
「言葉遣いは相変わらず悪いな。 いや、てかお前……数ヶ月前に見たときはそんな見た目じゃなかっただろ」
そう、あの時は描写するのも躊躇われるほどに見苦しい……目つきが悪いのにアイシャドウかなんかで迫力が上がっており、まだ小5なのに口紅をつけてるのか唇が真っ赤で、髪の毛なんかバチバチにパーマをかけた金髪だったのだ。
なのに今はどうだ……?
オレは当時の記憶を思い出しながら改めて今目の前のウォシュレット女を比較。
髪の毛は真っ黒に染め直しており、気持ち程度にエクステ……というんだっけか? 所々金色が混じっている。
それにメイクもさっぱりやめたのか唇やまぶたの上も普通になっていて……
「な、なんだよ。 私の顔になんか付いてんのかよ」
「んー、付いてるっていうか……消えてるっていうか」
そりゃあパッと見で誰か当てられるわけないよなぁ。
これで分かったオレが逆にすごいくらいだ。
「え、なんでメイクとか前の見た目やめたの?」
「そ……そりゃあ決まってるだろ。 アンタにバレなかったらあのこと言われないって思ってたから……!」
「なるほどなー。 それは残念だったな」
オレが自分の観察眼に感心しているとウォシュレット女が何か怯えたように一歩下がる。
ーー……あぁ、そうだった。 話題が逸れたぜ。
「えーと、話を戻すぞ。 オレは別に何もしようとか思ってはなかった……というかお前のことなんかすっかり忘れてたんだが、まぁそうだな、この際だから脅させてもらおう」
オレが腕を組みながら頷くとウォシュレッター女が「ハァアア!?」と叫ぶ。
ーー……これもあれだな。 こいつの「ハァアア!?」と三好の「はぁああ!?」では全くの別物……三好の「はぁああ!?」の方がかなり可愛げがあるぜ。
「ちょっと……なんでわざわざ脅す……てか私のこと忘れてたとか酷くね!? こっちはもうどうやったら上手く切り抜けられるのか……とか考えて新学期を迎えたのによぉ!!!」
「仕方ねぇだろ、オレの脳は可愛い子しか記憶できねえんだよ」
「ガーーン!!! 言っとくけどさ、私結構モテてんだからな!? それを可愛くないとか……お前今までにどれだけの美女を見てたっつーんだよ!!」
自分を可愛くない認定されたのがかなりショックだったのか、ウォシュレッター女がコメカミに怒りマークを何個もつけながらオレに詰め寄ってくる。
普通ならこれも怖い状況なんだろうけどな……、そう、足りないんだよ。 恐怖が。
ダーク優香や凶暴化西園寺、それに解き放たれたギャルJK星……あの3人に比べたら今目の前でブチ切れてるウォシュレット女なんてもうあれだ、熊とバッタくらいの差があるぜ。
だからここはあえて言い返させてもらおう。
オレは先ほどのウォシュレッター女からの言葉『私を可愛くないと言い切るお前はどれだけの美女を見てきたのか』に対してこう言い返したのだった。
「まぁ普通にめっちゃいるぞ? お前の出身校の最高可愛いレベルがどれくらいかは分からんが、お前クラスの可愛さでモテてたんだろ? だったらオレの関わってきてる奴らは普通に神クラスなんじゃないか?」
「は……ハァアアアア!?」
オレの言葉にウォシュレッター女が激しく反応。
「絶対そんなの嘘だろ!」と指をさしながら声を更に荒げだす。
「いやー、嘘じゃないんだなーこれが」
「絶対に嘘!!」
あー、もううるせぇなぁ。
まぁ小学生高学年にもなると少しは悪びれたいとか、そういう欲求が出てくるのも分からなくはないんだけどな。
男でもそこらへんからヤンキーっぽいのが誕生してくるわけだし。
オレは目の前で怒りで震えているウォシュレッター女に「とりあえずあれだ……」と続ける。
「な、なんだよ」
「そんなしょうもない話は置いといて……さて、脅しの話をしようか」
「!!!」
こうしてオレは脅し……とまでは言わないが、ウォシュレッター女に某音のことを誰にも言わない代わりにとあることを要求し、それはそこまで難しい内容ではなかったためウォシュレッター女もオレの要求に「わ、わかった」と辿々しく承諾したのだった。
どんなことを要求したのか……は後ほど分かることになるかもな。
◆◇◆◇
こうしてオレたちはその場で解散……あ、ちなみにあのウォシュレッター女、最後まで自分が可愛くないって言われたことについて納得がいかなかったっぽいから仕方なく西園寺やエマ、水島や結城、三好、多田、小畑の写真を見せてあげたんだ。
そしたらどうだ?
オレが西園寺たちの画像を見せるなりウォシュレッター女は口をパクパクさせて……「ど、どうせ加工アプリかなんか使ってんだろ!!!」って捨て台詞を吐いて帰って行きやがったぜ。
いやぁ……あの後ろ姿は結構気持ちのいい景色だった。
加工アプリなんて使ってないから実質的にあっちは顔面偏差値的に負けを認めたことになるよな。
オレはそんなウォシュレッター女の悲しい後ろ姿を思い出しながら帰っていると、とあることに気づいてしまう。
「ーー……あ、あいつの名前聞くの忘れてた」
しかし結局はオレの中ではどうでもいい存在。
オレはそんなこともすぐに忘れ、ちょうど優香から今日の晩御飯リクエストをメールで尋ねられたのでヨダレをジュルリと流しながら今夜食べたい料理を想像し始めたのだった。
うーーん、今日の気分は……目玉焼き乗せハンバーグですねぇ!!!!
【送信・優香】ハンバーグがいいな。 目玉焼きのせたバージョンの。
【受信・優香】わかった。 ハンバーグね了解。 あ、それと今日は高槻先生、新学期でやること多いらしくて帰るの遅いんだって。 だから今夜の晩御飯は桜子も一緒だよ。
やったああああああああああああああああ!!!!!!!!
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