399 恋い焦がれた〇〇!!
三百九十九話 恋い焦がれた〇〇!!
春休みも明後日でもう終わり。
もはや来週月曜日が祝日で3連休初日の土曜日の感覚になってしまったオレは「あぁ……やはり春休みは雑魚だ……」と、以前【春休みは雑魚ではない】と言っていた考えを簡単に投げ捨てた。
そんなお昼前。
まぁそうは言っても宿題等がまったくないためソファーの上で寝転がりながら堕落した1日を過ごしていると、知らない間に床に落ちていたオレのスマートフォンが振動……拾い上げて確認してみると、結城からのメール受信通知だ。
【受信・結城さん】福田くん、新学期始まってからになるんだけど、今週の土曜か日曜って予定あるかな。
ーー……ん? なんだ?
【送信・結城さん】ううん、別にないけどどうしたの?
【受信・結城さん】どこか遊びに行きたいなって。
【送信・結城さん】いいよ。 エマらへん誘う?
【受信・結城さん】ううん、福田くんと2人がいいな。
「!!!!!!」
その返信を目にした途端、全身の力が抜けスマートフォンがオレの手から滑り落ちる。
キッチンの方からは優香が「ん? どうしたのダイキー」と声をかけてくれてはいるが……
「な……なななななな、なんだってええええええええええええ!?!?!?!?」
◆◇◆◇
あれから結城とのほぼデートのような予定は今週の土曜日に決まり、オレは緊張のためなのかまだ時間がかなりあるというのに急に挙動がおかしくなり始める。
「て言うか結城のやつ……お母さんのお見舞いはいいのか? どうして急に遊びなんか誘ってきて……しかもオレとその……ふ、2人で遊びたいなんて……!」
オレが1人でブツブツと呟いていると、流石にオレの様子に違和感を感じたのか優香がオレのもとへ。
「何かあったの?」と目の前でしゃがみこみ、心配そうに顔を覗かせてきた。
「え、あ……いや、なんでもないよ。 ごめん」
「そう? でもダイキ、なんか様子がおかしいよ?」
「あーー、それはそのあの……もうすぐ春休み終わっちゃうなー、イヤだなーって思って……!」
そう答えるとどうしてだろう……何を思ったのか優香は突然オレに手を回して優しく抱きしめ始めたではないか。
「お、お姉ちゃん!?」
オレはいろんな柔らかさと甘い香り……そして微かに感じるこの香りは肉じゃがだろうか。 料理中の匂いの混ざった優香の香りを嗅ぎながらオレは胸を高鳴らせながら優香に尋ねる。
「大丈夫だよ」
「え!?」
「ダイキ、もうすぐ学校始まって……クラス替えが怖いんだよね。 でも大丈夫、ダイキにはエマちゃんや佳奈ちゃん、桜子ちゃんに希ちゃん……いっぱいお友達がいるんだもん。 誰か1人とは絶対に一緒のクラスになれると思うから、そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
「ーー……え」
オレは優香の言葉を受け一瞬沈黙。 その後声を若干震わせながらゆっくりと口を開いた。
「お、お姉ちゃん」
「ん? なにダイキ」
優香がオレを安心させるためなのか更にギュッと抱きしめてくる。
「あの……あのさ」
「うん」
「ーー……クラス替えあるの?」
「え?」
優香がゆっくりとオレから手を離し、目を大きく見開きながらオレを見つめてくる。
「えっと……ダイキ、知らなかったの?」
「いや、クラス替えって基本3年生と5年生の時くらいじゃないの?」
オレが前世で通ってた小学校ではそうだったんだけど……。
そう尋ねると優香は「ううん」と首を横に振り、「あ、そうか……」と小さく呟く。
「えっと……お姉ちゃん?」
「そうだったね、ダイキ……去年の目を覚ます前までの記憶、無いんだったね。 ごめんねお姉ちゃん忘れてて」
「あ、いや、それは別に気にしてないんだけど……クラス替え……あるの?」
「うん。 基本ダイキの行ってる学校は毎年クラス替えがあったはずだよ。 それに今季からほら、近くの小学校を吸収したじゃない? だからクラスの数も増えるから確実にあるんじゃないかな」
「うわあああああああ!!! そうだったああああああああ完全に忘れてたあああああああああ!!!!!」
オレの脳裏に近くの小学校との勝負に勝って喜んでいた校長の顔が浮かび上がる。
てことはあれか? マドンナ水島や元悪ガキの杉浦を掌握してやっと平和なクラスになったというのに……それ以上の厄介者が別の小学校から流れ込んでくるってことだよな!?
ぐあああああああああ!!! めんどくせえええええええええええ!!!!!
こうして突然現れた衝撃的な事実によりオレの土曜日に対しての緊張が若干軽減。
とりあえずどんな敵がやってこようとも返り討ちじゃあああああ!
そんなことを心の中で叫びながら、今はこの素晴らしき優香の抱擁を体全体で楽しんでいたのであった。
あぁ……名前が『優香』なだけに優しい香り。 至高のひと時だよなこれ。
「ーー……ん?」
何かを感じたオレは注意深く鼻から空気を吸い込む。
「どうしたのダイキ」
「いや……なんかちょっと焦げ臭いような」
「焦げ臭い……?」
そう優香が首を傾げながら呟くと、しばらくの沈黙の後、何かを思い出したのか急に「ああああああああ!!!」と叫び出す。
「お、お姉ちゃん!?」
「やっちゃった!! お姉ちゃん、料理中で火、付けっ放しだったあああああ!!!!!」
「ウェエエエエエエエエエ!?!?!?!?」
その日の昼食。
優香の作ってくれた肉じゃがの味は濃い&焦げ……ゲフンゲフン!!
こ、恋い焦がれたような味がしたぜ。
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