398 エマの相談!?
三百九十八話 エマの相談!?
「ウェエエエエ!?!? エマお前……第二次審査でメンバー入りの内定、貰っちゃったのおおおおお!?!?!?」
春休み中の昼下がり・オレの部屋。
エマからメールで『ちょっと相談あるんだけど』と珍しく頼まれたので、エマを呼び直接話を聞いてみたのだが……なんということだ。 まさかエマがお偉いさんたちに直接内定をもらってしまったなんて。
オレが全力で驚き声を上げているとエマがオレの口元を手で塞ぎ、「ちょっと大きな声出さないでよ! 誰にも言ってないんだから!」と顔を近づけ小声で説教してくる。
「ええええ、なんで言わねーの!?」
「そんなの言えるわけないでしょ! 途中選考すっ飛ばして内定とか……どこのエリート就活生なのよ!」
エマにしてはもっともらしいツッコミがオレの胸部に入る。
「た、確かにな。 でも良かったじゃないか。 おめでとう」
「はぁ? あのね、いつエマがアイドルになりたいって言ったのよ」
エマが呆れた顔で「ダイキ、覚えてる?」とオレに尋ねてくる。
「なにが」
「なにがって……あのね、ミナミを手伝ってほしいってダイキに頼まれたから手伝っただけじゃない。 なんで手伝いで参加しただけのエマが入らないといけないのよ」
「あ」
そうだった……完全に忘れてた。
オレが確かにそうでしたね的な表情をすると、エマが「ほんと勘弁してよ」とオレの手をパシンと叩いてくる。
「いやでもさ、アイドルだぜ?」
「いやよ。 エマ、芸能の厳しさなんだかんだで知ってんのよ? 歌やダンスを覚えるのは当然として他にもレッスンや営業も……そんなのやっちゃったらエルシィを1人にする時間が余計に増えちゃうじゃない。 そんなの絶対にありえないわ」
あー、それもそうだった。 エマはエルシィちゃん優先主義だったんだよな。
ここ日本に引っ越してきたのもフランスでエルシィちゃんがイジメられてたから……エルシィちゃんのためだけにここまで来たんだということをすっかり忘れてたぜ。
オレが「じゃあその内定蹴るのか?」と尋ねるとエマは即座に頷く。
「いや即答かよ!!」
「当たり前でしょ。 この話もらった時は全力で勧められたし、引き止められたから保留ってことで仮内定って形にしてもらってたけど……時間が経ってもエマの気持ちは変わらないわ」
そう言うとエマは「ダイキに話して良かったわ。 自分の気持ちが改めて分かったもの」と呟きながらスマートフォンを手に取り受信ボックスを開く。
その後、運営事務局からのメールに『やっぱりアイドルは無理です』と返信・送信したのであった。
「あーあ、夢見る舞台が」
「いいのよ。 エマにとってはこの場所が夢のような舞台なんだから」
「え、オレの部屋が?」
「んなわけないでしょ!! このエマたちを取り巻く地域!! 分かるでしょバカ!!」
エマの鋭いツッコミが今度はオレの頭に上斜め45度から綺麗に直撃。 パシィィンと気持ちのいい音がオレの部屋の中で響き渡ったのだった。
◆◇◆◇
それからしばらく。
オレが頭を押さえながら「いてぇいてぇ」と呟いていると、エマが何かを思い出したのか「あ、そうだ」と声を出す。
「ーー……なんだ?」
「今のダイキが痛がってるところ見て思い出したんだけどね。 ほら、カナってオーディション第1次審査に向かう電車の中でお腹痛がってたじゃない?」
「あ、うん。 緊張でだろ?」
「ううん、カナ本人が言ってたんだけど、あれ実は女の子の日の前兆だったんだって」
ーー……。
「へ、へぇー……」
あれだな、小畑が泣いてるときや最近の結城の相談の時もそうだったけど……こう言う話題を振られた時も何て返したらいいのか分からないよな。
オレがエマの言葉に対して黙り込んでいると、エマが「あれれー? ダイキぃー?」とニヤニヤしながら顔を覗き込んでくる。
「な、なんだよ」
「あんだけ『女の子の日じゃないのか!?』とか言ってたくせに実際にそうだったら照れてんのー?」
「は、はああああ!?!? 照れてねえし!!!」
「はいダウトぉー。 だってダイキ、顔赤いもんー」
エマが持っていたスマートフォンでオレの真っ赤になった顔を激写。
「ほら見てこれー!」と笑いながらその写真をオレに見せてきた。
「ば、ばばばばバカやろう!! 消せこのやろう!!!」
「どうしようかなー。 とりあえずこの写真、優香さんに見せてこよっかなー」
「お、お姉ちゃんに!? それだけはやめてくれ!!」
「大丈夫よ。 アンタお子ちゃまだもん。 こんな写真見せても優香さんも「かわいい反応だねー」って笑うだけだって」
「お、おおおおお子ちゃまだとおおおお!?!?!?」
オレが全力で照れながら言い返しているとエマが「えぇお子ちゃまよ。 ほら、ダイキちゃん、エマおねーたんの足の上でおねんねしまちゅかー?」と自身の太ももをペチペチと叩きながら更にオレを煽ってくる。
「お、お前言ったな!?!? マジで寝てやろうか!!」
「いいわよー? でもそこで照れたらダイキはお子ちゃま認定で写真を優香さんに見せる。 もし照れなかったら大人の男として認めてあげるわ」
「なっ……!!!!」
照れたら負け……だと!?
そんなほぼ負け確定なイベント誰が……
「ほらダイキー」
ベッドに腰掛けているエマがスカートを整え「照れない自信があるんでちゅよねー?」と色白の透き通った太ももをオレに見せつけてくる。
これはもはや磁石で言うところのS極とN極!! オレの意志とは関係なく顔がズズズとエマの太ももへと吸い込まれていく。
「ぐお……オレは……オレはああああああああ!!!!!」
「あれ、勝負するの? 良いわよ、どうせエマが勝つんだから」
「仕方ない……オレだって我慢すれば照れないってところを……見せつけてやるぜえええええええええ!!!!」
それからのことは言うまでもない。
オレがエマの太ももから顔を離すと、エマは自身の太ももを無言で見つめている。
そしてオレはそんなエマに向かってこう囁いたのだった。
「エマ……お前、女の子の日なのか?」
「ふざけんじゃないわよ!! このシーツに付いてんのアンタの鼻血よ!!!!」
その後エマが小声で「せっかくお礼のつもりで……」とかブツブツと呟いていたのだが、興奮状態のオレの耳には聞こえておらず。
まぁその後ちゃーんとオレの照れた写真は優香に見せつけられたよね。
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