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393 元祖!?


 三百九十三話  元祖!?



 それは陽奈とお出かけをした日の夜のこと。

 買い物ついでのケーキバイキングやらで胃が完全に青ざめてしまい、オレは晩御飯を断って部屋のベッドの上で仰向けになりながら横たわっていたのだが……



『ダイきちくん』



 あー、この声はもしかして。

 オレは手でお腹をさすりつつ、顔だけを動かしてベッドの前に視線を向けた。



「ーー……やっぱり」



 そこには空中に浮かんでいる陽奈の姉・愛莉の姿。

 サメのぬいぐるみを抱きしめながらゆっくりとオレに顔を近づけてくる。



「えっと……どうしたんですか急に」


『あのね、私ビックリしたことがあるの』


「なんでしょう」


『ダイきちくんって魂は別人なんだってね』




「ウェエエエエエエエエエエエエエエエ!?!?!?!?!」




 ◆◇◆◇




「ちょ、ちょっと何言ってるか分からないんデスガ……」



 しばらくの沈黙の後。 オレがカタコトで誤魔化そうとしていると、愛莉が『まぁダイきちくんがそう言うならそれでも良いんだけどさ』と直接触れることは叶わないがオレの頭を優しく撫でてくる。



「え、ええええ!? 愛莉さん!?」


『言っちゃうとさ、本来のダイきちくんに色々聞いたんだ。 ダイきちくんもいきなり知らない世界に放り込まれて大変だったんだねぇ』


「本来の……ダイきち……くん?」


『うん』



 んん? 本来の……だと?

 てことはもしかして……



「えええええええええ!?!?!? 本物のダイキ霊体になってんのおおおお!?!??!?」



 オレは胃の不調も忘れて飛び起きると、愛莉が『え、ダイきちくん覚えてないの?』と不思議そうに首を傾げ尋ねてくる。



「覚えてない……とは?」


『ダイきちくんって最近天界行ったんだよね?』


「あー、まぁうん」



 病院の階段でスーパージャンプしてな。



『その時にさ、本来のダイきちくんに会ったはずなんだけど』


「ーー……そうだったっけか?」



 オレは腕を組みながら「ンーー」と考える。


 確かオレの記憶では……とりあえず天界に行って、神様にいちごパンツで優香を現世に戻す交渉をして、それで……気づけばあの優香の民だったクヒヒオバケに足引っ張られて戻ってきただけだったはずなのだが……。



「でも待てよ、なーーんか重要なことがあったようななかったような」


『本来のダイきちくん曰く、そこでダイきちくんと色々お話ししたって言ってたよ』



 ーー……マジか。



「これは完全に記憶が飛んでる……いや、忘れさせられてるな」



 それからオレは簡単に愛莉から元祖ダイキの話を聞くことに。


 どうやら愛莉が元祖ダイキと出会ったのは昨夜のことらしく、優香と陽奈が仲良くお風呂に入っていたので愛莉はその光景を楽しみながら見守っていたそうなのだが……


 ふと何者かの視線に気づいて周囲を見渡してみると、顔を真っ赤にした……オレそっくりの男の子の霊・元祖ダイキが脱衣所の扉からこっそりと覗いていたらしい。



『それで私、普通にダイきちくんだと思って飛びかかったら何故か触れることが出来ちゃってて……それから話を聞いたら本来のダイきちくんだって教えてくれたんだよ』



 ゾゾ……ゾゾゾゾゾ!!!!



 その話を聞いたオレは一気に身震い。

 ベッドから勢いよく飛び降りると、これまた勢いよく勉強机の引き出しを開いてギャルJK星のパンツシリーズを顔面に当てた。



『ちょ、ちょっと何やってるのダイきちくん!! えっち!! 変態!!!』



 突然の行動に驚いた愛莉が顔を真っ赤にしながらオレを指差す。



「ふん!! 言いたきゃ言えば良いさ!! でもな、オレは……やめん!!! これが最後になるんだから!!!」



 オレはそう答えるとギャルJK星の成分を少しでも多く摂取するために大きく息を吸い込む。



『えええ!? どういうこと!?』


「だってあれだろ!! 元祖ダイキが来たってことはさ……オレの今の身体を取り戻しにきたってことなんだろ!?!? だったら少しでもオレはこの幸せな気分をギリギリまで……あ、そうだ、優香の顔も見たいし結城の声も……それに三好や多田、小畑、西園寺に水島、エマ、エルシィちゃん……うがああああああああ!!! ちょっとで良いから時間をくれええええ元祖ダイキいいいいい!!!!」



 オレは片手でパンツを鼻に押し当てながらもう片方の手でスマートフォンを起動。

 まず誰の声を聞くかで迷いその場でくるくると回り出す。



『ね、ねぇダイきちくん?』


「なんだよちょっと黙っててくれ、今かなり追い詰められてるんだ」


『いやさ、そういうことじゃなくて……』


「あーー、とりあえず先ずは優香と最後に話をしてからにするか?」


『だからそうじゃないっていうか……そんなことしないで良いっていうか……』



 愛莉が戸惑いながら『ちょっと落ち着いてよダイきちくん』と手を伸ばしてくる。



「おいマジで頼むから集中させてくれ、オレは今猛烈に脳を動かしている。 邪魔したら元祖ダイキに身体譲り渡した後にめちゃくちゃにセクハラすんぞ」



『聞いて! 本来のダイきちくんは別にその身体に戻りたがってないよ!』



「あーもううるせぇな! 言葉じゃ言えないくらいのことをされたいようだ……な……」



 ーー……エ?



「戻りたがって……ナイ?」



 それから聞いたのは元祖ダイキがここに来た理由。

 どうやら元祖ダイキは輪廻転生への道を歩いている途中らしく、ふと優香のことが気になって現世に様子を見に来ただけらしい。

 そして降り立って見に来てみると、ちょうどお風呂のタイミングと被った……とのことだった。



 ーー……それ、本当かなぁ。

 なんとなくだけどオレには分かるぞ、元祖ダイキ……お前タイミング計っただろ。



 オレがそう心の中でツッコミを入れると愛莉が『そんなわけないじゃない』と何故か元祖ダイキをフォローし始める。

 そうだ……愛莉だけじゃなく、霊は心の声も読めるんだったな。



「えっと……なんで愛莉さんそう思うんです?」


『だってそんなことするような子に見えないんだもん。 昨日の夜いっぱいお話したんだけどね、大人しくて臆病で優しくて……そんな子がお姉ちゃんの裸を見にくるなんてあるわけないでしょ』


「いーや、愛莉さん、男の欲望を舐めちゃあダメっすよ」


『絶対にない! 本来のダイきちくんは私が陽奈ちゃんのこと大好きなのと一緒で、お姉ちゃん大好きなんだから』



 愛莉が『私と一緒の考えを持つ霊に悪い存在はいないんだから』とドヤ顔を決めてくる。



「あー、そうすか」



 まぁ身体返せ系じゃないなら焦ることはなさそうだな。



 それからも愛莉は元祖ダイキがいかに安全で真面目な人物かを延々と語っていたのだが……



「あのさ愛莉さん。 とりあえずこれだけは教えて欲しいことがあるんですけど良いです?」



 オレは愛莉の言葉を遮り、まっすぐ愛莉を見据えた。



『なに?』



 オレは愛莉の周囲を軽く見渡す。

 オレには視えてないだけで、元祖ダイキもこの様子を見ているのだろうか。


 あいつも結構苦労したんだ。


 それで限界を通り越してあんな行動に……オレに出来ることがあるなら是非ともやってあげたい。

 その一心でオレはこう愛莉に尋ねたのだった。



「元祖ダイキ……やっぱり辛そうですか? もしオレに出来ることがあったら……」



『ううん全然。 むしろニコニコ楽しそうだよ』



「え」



 愛莉のこの笑顔……嘘を吐いているわけではなさそうだ。



「マジ……ですか?」


『うん。 昨日だって本来のダイきちくん、話してるうちにだんだん盛り上がって笑顔になっていってさ。 今の状態が一番幸せなんだって。 私もあまり他の霊とお話しする機会ってないからこれから定期的にお話しする約束しちゃったよ』



 愛莉は『だからダイきちくんは別に何もしなくて大丈夫そうだよ』とオレに優しい視線を送る。



「ーー……そうなんですか」


『うん』



 それからもしばらくオレは愛莉と話をしていたのだが、急に愛莉が『あ、そろそろ陽奈ちゃんのお風呂の時間だ。 じゃあ私行くね』とオレに手を振り浴室の方へと身体を向ける。



「あー、また元祖ダイキが覗いてるかもしれないから?」


『ちーがーう! ただお風呂で楽しそうにしてる陽奈ちゃんの姿を見たいだけ!』



 こうして愛莉は『今行くよ陽奈ちゃーん!』と顔をデレさせながら浴室へ。

 しかしそれから少し後……浴室から愛莉の叫び声が聞こえてきたのであった。




『ちょっとダイきちくーーん!! なんでまたそこにいるのーー!?!?』




 ーー……ほらな。



 元祖ダイキ、お前も分かってるじゃないか。

 現世ではハードモードだったんだ。 せめて今くらいは欲望のまま行動して楽しんでくれな。



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[良い点] 愛莉ちゃんじゃないか! 必死にパンツを嗅いでるダイキw 取り戻しに来るとおもったのか。 そうか、神様に記憶を消されてるからダイキはわからないんですなぁ。 元祖ダイキも素直……ダイキが元…
[一言] 元祖ダイキよ、愛梨ちゃんと話したくて幽霊になったのに、嫌われるような事だけはするなよ? 覗くな。せめてギャルのパンティで我慢なさい。 ダイキのタンスやベットの下に隠してあるはずだから。
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