391 存在自体が夏!!
三百九十一話 存在自体が夏!!
いやー、オレがガチな小学生の頃に思ってたことなんだけど……夏休みは最強で、冬休みや春休みって期間短くて雑魚いよなーとか不満が結構あったのよ。
でも1度でも社会人を経験したらさ、そんな雑魚だと思ってた春休みも中々に最高だよなぁ。 冷房も暖房もいらないいい感じの気温だし。
気づけばもう4月。
最近小畑・エマ・三好は今人気急上昇中のアイドル・メイプルドリーマーの妹グループオーディション第1次審査を見事通過。
そしてこれはエマ情報なんだけど、近いうちに2次審査があるんだと。 内容は自己PR……メイプルドリーマーを裏で支えているお偉いさんたちを相手に面接するようなもので、ここではその人たちと話すだけ……1次審査のように踊る必要はないとのことだった。
ーー……小畑、よかったな。
ちなみにそれを通過したら3次審査が運営の用意した歌・ダンス審査で4次審査がメンバーとの合同合宿、それを通過して晴れてメンバー入りとなる。
てことはもうオレ、やること無くなっちゃったよねぇ。
あれから小畑からも呼び出しなどがないため、オレは悠々自適にこの春休み生活を謳歌していたわけだが……
「あ、そうだダイキ」
もうすぐお昼。 オレがソファーの上で寝転びながらスマートフォンでネットサーフィンをしていると、洗濯物を干し終えた優香が声をかけてくる。
「ん? なにー?」
「そういや今朝急に電話があったんだけどさ、今日の夜くらいに陽奈ちゃんウチに泊まりに来るらしいよ」
「ふーーん」
ーー……。
「ーー……え、陽奈が?」
「うん」
「今夜から?」
「うん」
「ええええええええええええええ!?!?!?」
◆◇◆◇
「てわけでお邪魔しまーすーー!!!」
夜。 風も静かな落ち着いた時間のはずなのになんだこの真夏の太陽のような眩しさ……いや、やかましさは。
「いらっしゃい陽奈ちゃん」
「うん! 久しぶり優香ちゃん! 久しぶりダイきちー!!!」
陽奈がオレの手を握りブンブンと振り回す。
「だあああああ!!! もう激しいな!!!」
「だって陽奈、嬉しいんやもん!! 学校また始まったら遊びに行けなくなっちゃうけん、絶対に陽奈、この春休みの内に行こうって決めてたんよ!」
そう陽奈が興奮気味に話していると、陽奈の後ろから優香が「本当元気になったね陽奈ちゃん」と嬉しそうに顔を覗き込む。
「うん! 陽奈、ドナーさんのおかげで元気になったけん、ドナーさんのぶんも楽しく生きるって決めたんだぁ!」
「偉いね陽奈ちゃん。 そういやもう手術の跡は痛くないの?」
「うん! なんか早く傷跡を消すためっていうのもあるんやけど、傷を守る専用のテープみたいなのを上から貼ってるけん、全然痛くないよ!!」
陽奈のやつ、本当に嬉しいんだな。
陽奈はそう優香に答えると、「ほら見て、こんなのー!」と嬉しそうに上着を勢いよく捲りあげ、生まれたままの上半身を見せつけたのであった。
「あ、本当だ。 今ってこんなテープあるんだね」
「うん! これ、剥がす時も痛くないんだよ!」
「へぇー、勉強になったよ。 ありがと陽奈ちゃん」
「うん! ほら、ダイきちも見てーー!!!」
「!!!!!!!」
締め付けられる……もしくは摩擦を避けるためという理由からなのだろう、陽奈はキャミソールやらタンクトップやら……そういった類の物を一切身につけておらず……
「見てここー!!」
「おぉ……」
夜に目の前でダイレクトアタックはアカーーーーン!!!!!
陽奈のやつ……存在的には夏そのものなのだが、ここの部屋にだけガチな夏も連れてきたのだろうか。
急に体の一部が苦しいほどに熱くなってきてしまったぜ。
オレが1人で夏を先取りしていると、陽奈が何かを思い出したのか「あ、そうだ優香ちゃん」と上着をもとに戻して優香を見上げる。
ーー……グッバイ一瞬だけの夏。
「うん? どうしたの陽奈ちゃん」
「優香ちゃんは明日何か予定あるの?」
「あ、うん。 私は美咲と出掛ける予定があるけど……どうして?」
そう優香が答えると陽奈は「えええええええええ!?!?!?」と唇を尖らせる。
「ええ、どうしたの陽奈ちゃん」
「陽奈、優香ちゃんや桜子やダイきちと、外に遊びに行きたかったのにいいいい!!!!」
「ごめんね陽奈ちゃん。 私は明後日なら大丈夫なんだけど」
「ーー……わかった、じゃあ明後日ね。 そしたら明日はダイキと桜子と……」
「あー、それと桜子は春休みの間ほとんど病院……お母さんと一緒にいると思うからそれも難しいかもしれないね」
「えええええええええええ!?!?」
まさかの不参加ダブルコンボ。
大ダメージを受けた陽奈はその場でガクリと崩れ落ちた。
「そういや桜子、ママが入院してるとか言ってたかも」
「うん。 とりあえず桜子には連絡してみたらいいと思うよ、私のスマホ貸してあげるし」
「うーん。 桜子とママの邪魔したくないけん……明日はダイきちと2人でいいやー」
陽奈は仕方なしと言った表情でため息交じりにオレに視線を向ける。
「え、オレ?」
「うん! ダイキどうせ暇でしょ?」
「暇ちゃうわあああああああ!!!!!!!」
激しくツッコミを入れてみるも意味はなし。
その後優香に「せっかく元気になって来てくれたんだから」と諭され、結果オレは翌日陽奈と外出する羽目になってしまったのだった。
「ーー……ちなみにどこ行きたいの?」
「んとねー、まずはパンツとか足りないかもだからそれ買いに行ってー、あ、向こうには売ってなさそうなお洋服とかも欲しいなぁー!!!」
となれば近くのデパートらへんで済みそうだな。
「それとね、その後にスイーツ食べたい!!! ケーキバイキング!!」
この陽奈の言葉にオレの胃が反応。
以前陽奈と体験した甘々スイーツデイのトラウマを思い出したのか、急に小さく縮こまってしまったのだった。
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