390 特別編・予想的中!【挿絵有】
三百九十話 特別編・予想的中!
オーディション後の翌朝。
あれから何度アクセスしただろう……メイプルドリーマー妹グループオーディション・公式ホームページの第一次審査通過者名簿に記されている自分たちの参加者番号とその中での合格者の名前。
【62番】小畑美波
【62番】三好佳奈
【62番】エマ・ベルナール
美波がそんな画面に表示された自分の名前を見てニヤニヤしながらベッドの上でうつ伏せになっていると、今回の仲間であり親友の佳奈からメールが届いた。
【受信・かな】今日ってさ、美波予定ある?
「予定? 別にないけど……どうしたんだろ」
【送信・かな】ないけどどうしたー?
【受信・かな】ちょっと話したいんだけど……午後、美波ん家行っていい?
◆◇◆◇
お昼過ぎ。
美波がリビングでのんびりくつろいでいると家のインターホンが鳴る。
「あら、誰かしら」
「多分佳奈だ。 みぃが出るよ」
美波はいつも以上にきつく固定した足を引きずりながら玄関へ。
ゆっくりと扉を開けると、佳奈が思いつめたような表情でこちらに視線を向けていた。
「うわわ、どうしたの佳奈、そんな顔して」
「美波、あの……あのさ」
「とりあえず私の部屋おいでよ。 お互い立ったままじゃ疲れるし」
「うわあああ、ごめんねそうだよね! お邪魔しますーー!!!」
◆◇◆◇
「ーー……で、改めてだけど、どうしたの佳奈。 そんな暗い顔して」
部屋に着いた美波がベッドの上に腰掛けながら尋ねると、どうしてだろう……突然佳奈が頭を深く下げた。
「美波……ほんっとうにごめん!!」
「え、何が!?」
考えてみても謝られることなんて何も思い当たる節がない。
唯一あるとすれば……
「もしかして佳奈……メンバー抜けするとか言わないよね!?」
美波が真剣な表情で尋ねると、佳奈は頭上にはてなマークを浮かび上がらせる。
「メンバー抜け? まぁ確かにここから先は個人での審査だし、私が出てもって感じもするけど……なんで?」
「だってそれ以外に私に謝ることなんて、佳奈になくない?」
「ううん、あるじゃん、美波にとってめっちゃ重要なこと!」
「私にとって重要なこと?」
「いや……その足じゃん!!!」
耐え切れなくなったのか佳奈は美波が考えるよりも先に美波の足首を指差す。
「え、私の足? なんで佳奈が謝んの?」
「だって昨日の夜、グループチャットでエマと3人で話してたとき……美波言ってたじゃん、4組の2人にやられたって」
「あーうん、言ったね」
「それって私がダンスの振り付けド忘れしてなかったら美波を守れたわけじゃん!? もうあれ聞いてから私……めっちゃ後悔して夜もあんまり眠れなくて!」
佳奈が涙目になりながら再度「本当にごめんなさい!!!!」と頭を下げる。
「いや……いやいやいやいや!! 佳奈は別にそれに関しては悪くなくない!?」
「いや悪いじゃん!! 私がバカなばっかりに標的を美波に……!」
「だから佳奈は悪くないって!! もう頭あげてよ!」
美波が慌てて佳奈の顔を無理やりあげさせると、何というデジャブなのだろう……ちょうど昨夜自分が福田の前でした顔と同じ表情を佳奈がしているではないか。
「ちょっと……何で佳奈が泣いてんの」
「だっで……だっでぇ……!」
「なんだかんだで私ら一次審査通ったんだしさ、結果オーライじゃん」
「それはそう……だげどぉー!!」
あー、何だろうこの気持ち。
普通なら目の前で泣かれたら困るはずなのに、今、とっても嬉しい。
美波は佳奈から滲み出る温かさを体全身で受け止めながら、ヨシヨシと佳奈の頭を撫でていたのだが……
「ーー……ていうか、何で今私、美波に撫でられてんの?」
佳奈が美波の股のあたりに顔を埋めながら尋ねてくる。
「いや、そりゃあ泣いてたからじゃん」
「でもさ、そのあやし方って年下にするもんじゃないの?」
「だって佳奈、年下っていうか妹っぽいじゃん」
「はあああああああああ!?!??」
こうして佳奈のテンションは美波の巧みなムーブにより何とか復活。
美波が心の中で「ほんと佳奈ってチョロかわ」と呟いていると、何だろう……佳奈がお腹のあたりをさすりながら小さく首を傾げている。
「ん、どうしたの佳奈。 お腹痛いの? トイレ行ってきなよ」
「いや、なんて言うのかな……昨日の朝の感じに似てるんだけど……」
「でもオーディション終わったから緊張することなくない?」
「ーー……だよね。 なんでだろ」
「とりあえずトイレ行ってみたら?」
「うん……そうだね。 ごめん、じゃあちょっと借りるね」
もしかしてオーディションの話をしたから昨日の緊張が戻ってきてしまったのだろうか。
佳奈がトイレへと向かう後ろ姿を見送りながら美波がそんな考察をしていると、少し経った後に突然トイレから「うわああああああああ!!!!!」と佳奈の叫び声が聞こえてきた。
「ええええ、佳奈!?!?」
突然の絶叫に美波も驚愕。
もしかしたらトイレにあの黒いカサカサな虫が出たのかもしれない……美波はいつでも撃退できるよう部屋に置いてあった殺虫スプレーを手に、佳奈の入っているトイレへと向かった。
◆◇◆◇
「あ、みぃちゃん!」
先ほどの佳奈の叫び声は1階にいた母親にも聞こえていたようで、美波とほぼ同じタイミングで母親もトイレの前に。
中に向かって「佳奈ちゃーん」と声をかけ始める。
「佳奈ちゃーん、どうしたのー?」
「佳奈ー?」
呼びかけてしばらく。
ゆっくりと扉が開かれたかと思うと、思ったより冷静な佳奈がこちらを見てくる。
「佳奈?」
「佳奈ちゃん?」
美波と母が不思議そうに首を傾げていると、佳奈が「あのさ……」と小さく口を開いた。
「ん?」
「どうしたの?」
そう佳奈に尋ねると、佳奈は「これって……何だと思う?」と、突然自身のワンピースを捲り出した。
「「!!!!」」
2人の視線の先には佳奈のパンツ。
そしてちょうど白い無地を履いていたからなのだろう……明らかに見て分かるのだが、股のあたりが若干紅く染まっていて……
「これってさ、もしかして私も……? 違う?」
「佳奈ちゃーーん!!! おめでとう!!!!」
「佳奈ーー!! やったじゃーーん!!!!」
そう、それこそ佳奈が今まで待ち望んでいた初めての女の子の日。
そしてそれを聞いた佳奈の目が大きく見開かれる。
「え、ええええええ!?!?!? これ……本当!? 本当に本当!?!?」
「そうだよ佳奈!! やったじゃん!!!」
「じゃあ昨日のお腹が痛かったやつってこの前兆だったってこと!?」
「そう……なのかな! 分かんないけど!!」
「うわああああああ!!! 福田、当たってたじゃーーん!!!!!」
先ほどまでの暗い空気は何処へやら。
佳奈はそれ系統のアイテムをいくつか美波から譲り受け、スキップしながら帰っていったのであった。
「ていうか、佳奈全然苦しそうじゃなかったじゃん。 いいなー」
美波がポツリと呟くと、その隣で母親が「それよりもさ、みぃちゃん」と美波の手を軽く握る。
「ん、何?」
「さっき佳奈ちゃんが言ってた……福田くんが当たってたってどう言うこと?」
「あーー……それはねぇーー……」
その日、美波の母の中の福田に対する好感度が数段上昇したのであった。
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